麻薬専門家と行く!ケシの花見ツアー

厳重に管理されたケシの花を見る

 

▲敷地を歩いて行くと、向こうになにやら見えるぞ

「次はお目当てのやつを見に行きましょう。麻薬成分を含んだケシです」

「なにやら厳重な柵みたいなのがありますね……」

 

▲「あへん法」って法律ではひらがななんだな。ちょっと間がぬけた感じでかわいい

▲二重の柵に囲われた先にあるのが……

▲ケシの花である!(柵越しに撮影)

これが栽培や所持が法律で禁じられている、麻薬成分を含むケシの花だ。この東京都薬用植物園は国からの許可を受け、都内で唯一、合法的にケシを栽培している施設なのだ。

もちろん、とくべつな許可を得て栽培しているので、上部に鉄条網を張り巡らされた二重の柵で覆われ、さらにサーチライトや監視カメラ等で厳重に管理されている。

花の開花時期である5月上旬から中旬にかぎり、外側の柵は開放され、来場者は内側の柵ごしにケシの花を見ることができる。解放期間は2019年は5月2日~18日だったが、年によって前後する可能性があるので、事前に東京生薬協会のホームページで確認しておくのが望ましい。

 

▲ケシ、けっこうな人気である

ケシの花を見に来る来場者はおおく、わたしたち以外にもけっこうな人だかりができていた。

 

▲これもケシの花。園芸用に品種改良されたものだそう

それにしても、花の種類が豊富である。

なお日本ではケシの栽培は法律で規制されているが、海外では法規制のない国もある。

イギリスなどでは園芸品種として、さまざまな品種改良が行われているそうだ。

 

▲えらそうに言ったが、展示してあったパネルの受け売りである

▲これもケシの花。左側にケシ坊主が写っている

「かぼちゃ型にふくらんだ緑色の球体を『ケシ坊主』って言います。このケシ坊主を傷付けると出てくる乳液から、アヘンが採れます。それを精製すると、モルヒネができるわけですね」

「なるほど。ケシ坊主は ””黒いしま模様”” があるやつと、ないやつがありますね」

「乳液自体は白いんですが、しばらくすると黒く変色し固まっていくんです。この模様で乳液を採取しているかどうかがわかるんですよ」

 

ケシ

▲黒い縞模様があるのが乳液採取済のケシ

「垂れた乳液が固まって縞模様ができる……と」

「最近はモルヒネよりも副作用の少ない麻薬が開発されているんですが、やっぱりよく使われる麻薬はこのケシの花から作られていますね」

 

緩和ケア医に学ぶ!麻薬の知識

 

この柵のなかには、ほかにもケシのなかまがいる。

 

▲「アツミゲシ」。あへん法で規制されるもうひとつのケシ

帰化植物の「アツミゲシ」。かつて愛知県の渥美半島で大量に繁殖したことから、この名前がついている。

繫殖力がひじょうに強く、空き地などでしばしば自生していることもあるらしい。こちらもあへん法により所持・栽培が禁止されているため、発見されるたびに保健所の職員や麻薬取締員が抜き取って、埋没処分をしているそうだ。

 

▲あへん法ではなく、麻薬及び向精神薬取締法によって規制されるハカマオニゲシ

ハカマオニゲシはすべての部分に「テバイン」という麻薬成分を含んでいて、麻薬及び向精神薬取締法という法律によって栽培や所持が規制されている。

 

「私がいちばん好きな『オキシコドン』という麻薬は、このテバインからできています」

いちばん好きな麻薬。

「もちろん、投薬という意味でですよ! 個人差はありますが、一般的にモルヒネよりも副作用が少ないので。緩和ケアでは病気の痛さや苦しさを和らげるのが大事ですからね」

「麻薬っていうとなんかこわいイメージなんですが、大丈夫なんですか?」

「容量・用法を守って正しく使えば大丈夫です。痛みとのバランスが取れていれば中毒にはなりません。主治医の先生の指示通りに使ってくださいね。ちなみにBさんも麻薬を使ったことがあると思いますよ

「ええっ!? うそだ!!!」

市販の風邪薬にも使われる『コデイン』っていう成分も、ケシから取れる麻薬の一種ですからね。麻薬は痛みを和らげるほか、息苦しさを緩和させる作用があるので、意外と身近なものなんです」

「えええ、そうだったんですね……!! いや、でもさっき副作用って言ってたじゃないですか。こわい」

「用量用法を守って使っているなら、問題はありません。しいていうなら、主な副作用は眠くなったり、便秘になったりですね。最初は吐き気を感じることもありますが、慣れれば治まってくることが多いですよ」

便秘。

「ちなみに物語のなかの話ですが、名探偵シャーロック・ホームズはモルヒネやアヘンを使っていましたし、便秘だった可能性が高いですね」

 

ホームズ便秘説は衝撃だったが、現役のお医者さんに麻薬の話を聞かせてもらえるのはおもしろい。

覚せい剤の数十倍もの依存性を持つ強力な麻薬・ヘロインを精製できることでも知られるケシであるが、ちゃんと用量用法を守って使えば役に立つのだ。

 

▲おなじ柵のなかには「アサ」のすがたも

なお、ケシとおなじ柵のなかには、大麻取締法により規制を受けている「アサ」も栽培されている。

 

「これも医療用で使われたりするんですか?」

「『麻薬』というのはケシから作られる薬をはじめとする ””痛み止め”” のことで、大麻や覚せい剤とはちがいます。医療大麻がちょっと話題になってますが、大麻や覚せい剤は、いまのところ日本の医療で使用することはありませんね」

 

まだまだいるケシのなかま

 

▲柵の外には、麻薬成分の含まれていないケシの花もたくさん

先述したとおり、麻薬成分を含まないケシのなかまもたくさんある。

こちらは柵の外で大々的に栽培されている「シャーレーポピー」という種類のもの。

 

「じつは、麻薬成分を含む法規制されているケシは3種類だけなんです

「規制されていないもののほうが多いんですね」

 

▲ケシの開花時期に合わせてパネル展示がしてある

「ちなみに、ケシの勉強って学校でするんですか? アサヤマさんめっちゃ詳しいんですが……」

「学校でも多少は習いますが、個人的に趣味として学びました。自分が仕事で使っている薬について、もうちょっと知りたいなーって思いませんか?」

「探求心がすごい」

 

▲「アイスランドポピー」

▲こちらは「ヒナゲシ」

法規制されていないケシの花も満開だったので、いろいろ見比べてみることができた。どのケシも綺麗だなぁ。

 

>>まだまだ続く、東京都薬用植物園ツアー<<

Profile

少年B
少年Bセーフ教教祖
「高カロリーなものを食す罪悪感をあらゆる屁理屈で肯定する宗教」セーフ教の教祖。よく食べ、よく寝、たまに記事を書きます。
個人ブログ『Low cost, Low price & High return

関連記事