水辺を散歩するのが好きです。
海沿いや川沿いをあてもなく歩く。イヤホンで音楽を楽しむ。何か創作のアイデアを考える。そして、いい景色があればじっくり眺めたり、写真を撮ったりする。
その中でふと気付きました。自分がなぜか ””救命浮き輪”” をよく撮っていることに。
救命浮き輪とは、海や川の柵、あるいは船舶に取り付けられている浮き輪のことです。正式名称は「救命浮環(きゅうめいふかん)」。
要するに水中に落ちた人を助けるための救助用浮き輪であり、本来はそれ以上でも以下でもありません。
しかし、自分は無意識に気付いていたのです。
救命浮き輪は、エモい。
とりあえず、これらの写真をご覧ください。
うーん、エモい。
救命浮き輪の大きな特徴として、「固定されている」「大抵のばあい、目の前に広い水辺がある」ということが挙げられます。それが独特の哀愁を漂わせている気がするんです。
例えば、湾をへだてて遠くに街を望む構図。
横浜・象の鼻パークより。
遠方にはみなとみらいの豪華な街、前方には影が差す浮き輪。その対比がどこか寂しげな印象を与えます。
もっと街との対比を感じるなら、こういう構図。
大阪・道頓堀。
有名なグリコの看板などが主張する中、川を隔てて浮き輪はひっそりと佇んでいます。
こういうほのぼのした構図もありですね。
東京・月島より。奥には佃小橋。
落ち着いた色合いの場所に、橋の朱色と浮き輪のオレンジ色が上手く彩りを添えています。
ちなみにこれは写真蒐集界の雄「片手袋」との夢のコラボ。発見したときは発狂しそうになりましたが、住宅街の平穏のため必死で声を抑えました。
そんな鑑賞を続ける中、自分はさらに気付いてしまいました。
救命浮き輪にはいくつか種類があると。
今回はこの場をお借りしてお披露目いたします。
設置方法による救命浮き輪分類
まずは設置方法による救命浮き輪の分類についてご紹介します。
1. 壁掛け型
「壁掛け型」とは、柵やフェンスに固定されたタイプの救命浮き輪。
一番オーソドックスなタイプであり、9割くらいがこれに該当します。
……いきなり企画倒れの匂いがしますが、大丈夫です心配ありません。固定のされ方には複数ありますので、細かく分類していきましょう。
【 (a) 金具引っ掛け属】
柵に取り付けられた金具にぶら下がっているタイプです。
東京・豊洲より。
恐らく陸上で一番多いのがこちら。
【 (b) 複数固定属】
その名のとおり、複数箇所で固定されているタイプです。
函館・摩周丸。
3点支持されています。船舶にはこのタイプが多いように思われます。
陸上からも一例。大阪・道頓堀より。
金具の上部分だけ見ると引っ掛け型ですが、下部分は皿状になっており浮き輪を支えています。
ちなみにこのような川を挟んで向かい合っているタイプを「対面式浮き輪」とも呼んでいます。白い浮き輪も珍しく、他には2例ほどしか確認できておりません。
このタイプの浮き輪がたくさん見られる道頓堀は、「対面式浮き輪」と「白い浮き輪」の聖地です。覚えておきましょう。
【 (c) 紐ぶら下げ属】
こちらはしっかりと固定をせず、紐だけでぶら下げられているタイプ。
横浜・汽車道付近。
このタイプ、意外と珍しいんです。現時点で2例しか見かけたことがありません。
【 (d) 橋渡し属】
柵のあいだに張られたチェーンなどに括りつけられているタイプです。
横浜・象の鼻パークより。
このエリアの一部に採用されています。
2. 輪投げ型
ポール状の物に被せられているタイプ。
掛けやすい柵がない場所などでは、このタイプが採用されています。
東京・清澄庭園。
日本庭園なので、川や海のようにしっかりとした柵はありません。そのための工夫でしょう。
また、浮き輪のサイズ感を楽しめるのがこのタイプの魅力。
以下の2枚はどちらも東京・有明にある「水の広場公園」ですが、
同じサイズのポールに対して、前者はぶかぶかなのに、後者はすっぽりです。
3. 直置き型
非常に珍しいのがこのタイプ。現時点で確認できているのは、以下の一例のみです。
東京・月島より。
まるで打ち上げられた漂着物のようなエモさ。
4. がっちりホールド型
こちらもレアなタイプ。
東京・船の科学館にある南極観測船「宗谷」より。
3点支持ではありますが、ぺたっと設置させられています。かわいい。
5. 収納型
BOX上のもの、あるいは何かに収納されているタイプです。
実は山陽ロード工業株式会社のライフリングキャビネットというものがあるため設けた型なのですが、現時点で自分は未確認です。
ただし、少し変わった例なら発見しております。
京都駅八条口付近より。京都府水難救済会という団体による、自販機に備え付けられた救命浮き輪。
これも「収納型」と言って問題はないでしょう。
ちなみにこの自販機は、売上の一部を海難救助関連の費用に当てているとのこと。立派な試みです。
ただしこの場所、周囲に全く水辺はありません。
「水辺は無くとも浮き輪を思え」とのメッセージでしょうか。浮き輪愛を感じますね。
形状による救命浮き輪分類
以上、設置方法の分類について述べてきました。さて、写真を見る中で気付くことはありませんでしたか?
そう、じつは救命浮き輪にはその ””形状”” もさまざまなものがあるのです。
ここからは形状別に分類していきましょう。
1. 平板種
恐らく一番思い浮かべやすいのがこちら。平べったいタイプです。
神奈川・江ノ島から。
潮風を浴びるからか、えらく風化した浮き輪ですね。
ちなみに、これが自分にとって一番古い浮き輪写真になります。恐らく「すごい劣化度合いだ……!」と驚いて撮影したのでしょう。まさか浮き輪について語りたくなるほど好きになるとは。
2. ホイール種
平板型に比べて分厚いのが特徴。
また、表面が布状のものであることが多い気がします。
東京・豊洲より。
東京の臨海エリアには、主に平板型とホイール型が混在しています。豊洲はこのタイプが多め。
3. 丸み種
ホイール型に近いのですが、どこかまるまるとしているのがこのタイプ。
再び、東京・清澄庭園より。今のところ確認できているのはこの一例のみです。
ちなみにサイズも非常に小さいですね。日本庭園の景観を崩さぬよう、最小限のものにとどめているのかもしれません。
4. プラスチック種
こちらはすべすべな、プラスチックのタイプ。
東京・若洲海浜公園より。
太陽光によく映えて、また他とは異なるエモさがあります。
5. 馬蹄種
円形ではなく、馬蹄(ばてい:馬のひづめ)のようにU字型になっているタイプがあるとのことです。
ただし、私自身は未確認です。
ネットの情報(上の画像)で存在は把握しているので、今後どこかで見つけられればなと思っています。
まとめ
最後に、今回ご紹介した救命浮き輪をまとめてみました。
それっぽく分類できているのではないでしょうか?
まだまだ救命浮き輪研究は始まったばかり。今後の調査次第では、新たなタイプが発見される可能性もあります。
ちなみにTwitterでは、「#浮き輪写真」というタグで時折救命浮き輪の発見報告をしております。
今までは救命浮き輪があったことを報告するだけでしたが、今後は研究を意識しての発言も考えています。
よろしければ皆さんも、救命浮き輪を見かけましたら「#浮き輪写真」のタグをつけてツイートしてくれると嬉しいです。
なお、グローバルにも展開を予定しております。
シンガポール・セントーサ島では「壁掛け型(金具引掛け属)・プラスチック種」の救命浮き輪を発見しました。
今後の浮き輪研究の発展をお楽しみに!
(おわり)
読了おめでとう!次はこちらの記事をどうぞ!