タイトルの通りである。経費で飲むために、会社を設立してみた。
きっといま、これを読んだあなたはあたまのなかが「?」でいっぱいになっていることだろう。オーケイ、わかっている。
ただ、結論から言うとこれがめちゃめちゃたのしかったのだ。ふだんの飲み会に飽きたら、ぜひともやってもらいたい大人の遊びです。
元々のきっかけは、Twitterで友人がお寿司を食べながら「好きな食べものは経費♡」とツイートしていたことだ。どうやら上司と一緒に出かけていたらしい。
そんなずるい。うらやましい。しかも彼女によると、経費で食べると普段よりも味がおいしく感じるらしい。
……でもそれはほんとうなのか?
その謎を解き明かすためには、やはり飲むための会社を設立せざるをえない。経費だ。経費で飲むのだ。実践あるのみだ。
そして、せっかく会社というていで飲むのであれば、個人的に気になっていたことがある。
「会社の飲み会、あれって楽しいか?」ということだ。おれは正直かなり苦手なのだ。
そもそも、まわりに気を遣うだろう。
上司のお酒がグラス3分の1くらいになると注文しなければならなかったり、好みの食べものを注文しておかなくてはならないあれだ。
下っ端は周囲のグラスを目で追いつつ、自慢話には適当に相槌を打たなくてはならない。相槌が適当なのがばれるともっとまずい。査定にひびく。うまくスマートにきめなくては。
そして、部下がいたら部下がいたで、目上にうまく気を遣うよう誘導してある必要がある。
またハラスメントにきびしい昨今のこと。飲み会の場で気分が緩んで、よけいなことを言ってしまってはたいへんだ。いまの時代は上司だって気を遣うはずである。ううむ、胃がいたいぞ。
今回いっしょに飲み会をするのは、ふだんからの友人たちである。
ただ、気心の知れた友人たちが相手とはいえ、会社のていで飲むのであればこういう気遣いは必要であろう。社内であれば話題も選ぶ必要があろうかとおもう。
あくまでも会社の飲み会というていなのであるから、なんでもかんでも話していいということにはならないはずだ。
たとえ会社で無礼講と言われたからといって、ほんとうに無礼をはたらいたらクビになる。気遣いなしの会社飲み会なぞありえないはずだ。
今回は「気遣い」という面もふくめて会社の飲み会を実践し、楽しいかどうかを調べてみたい。
というわけで、本記事では以下の2つを検証してみようと思う。
さて、ではさっそく会社を設立するとしようじゃないか!
経費で飲み会をするために会社を設立する
こういうのに付き合ってくれるノリのいい友人は貴重である。ありがたい。
さて、会社の設定を決めなくてはならない。
会社の飲み会であるのだから、スーツ等の着用が望ましい。しかし、参加者も各々の用事があるのだから、必ず着用と言うのはハードルが高いだろう。
基本はスーツでありながら、私服で参加をしても平気なように、「現場直行」などという言い訳ができる業態がよいのではないか。
おれがセーフ教の教祖をしている、ということもあり、業態はラーメンチェーンの本社、ということに決まった。
▲セーフ教についてはこちらをご覧ください(※編集部注 別にカルト的なヤバいものではありません。ただラーメン食べて「セーフ」というだけの宗教(?)です)
社内での役職を決める
役職も決めた。やりたい役職があるひとは希望を募ったのだ。
「現場を知らない老害パワハラ上司」「コネ入社のなめた女性社員」「上司にひたすらごまをする中間管理職」などの希望が殺到した。果たしてこの会社はだいじょうぶなのだろうか。不安しかない。
だが、「社長になりたい」というひとがいないところがこの会社の妙につつしみ深いところである。
そこで、特に希望のない方についてはあみだくじで決めた。ヒラになるか、社長になるかの運命の一瞬である。
あみだくじの結果、おれが社長になってしまった。
これはまずい。ひじょうに気まずい。
これでは「主催者のおれを接待しろ」と言わんばかりではないか。
気まずい思いのなか、参加者のみなさまに結果を伝えたところ「よーし、社長の太鼓持つぞー!」と返事がきた。なんだ君たち、いいやつかよ。
小道具を用意する
さらに、このメンバーの有志たちがこういったものを作ってくれた。
参加者の熱意がすごい。「小道具を用意する」と書いたが言い出しっぺのおれは一切なにもしていない。みなさまほんとうにありがとうございます。
会社の名前は合同会社西府(セーフ)である。
余裕からギリギリまで、セーフのトータルソリューションカンパニーだ(大嘘)。
さて、さっそく開催することにしよう。
5月末の開催ということで、じゃあ新入社員歓迎会にでもしようか。
経費飲み会 当日
日曜日の夜というおかしな時間に、スーツ姿の一団が集結した。
全員無事に集合し、さっそく合同会社西府の新人歓迎会のはじまりである。
今回はこの場で会社設立のために、ひとり4000円の募金を徴収した。これは会社の経費となる。
残念ながら、ここまではまだ現実なのだ。
経費飲み会 開始
さて、ビールが届いたところで、お偉いさんの乾杯のあいさつだ。いよいよ宴のはじまりだ!
「ハルキっぽい」シリーズ著者のもひもひさんが部長役として参加して下さり、「皆さん、楽しむところは楽しんで、また明日から気を引き締めて業務に当たりましょう」と挨拶してくれた。うわー、いる!こういう上司いる!!
そして、係長たちが新入社員を連れて社長(おれだ)にあいさつにきた。
「ほら君たち、せっかくの機会なんだから社長と話しなさい!」
上司は往々にして、こういういやな気の回しかたをするような気がする(かんぜんに新入社員側の目線である)。
「社長!私はまだ入ったばかりで右も左もわかりませんので、この機会に色々と教えていただけませんか!」
惰眠さんは飲み会の場にも関わらずメモ持参である。なんと意識のたかい新入社員であろうか!この言葉で一気にこの青年のことが好きになってしまった。
これはわが社も安泰である。いや、架空だけど。実在してないけど。
コネ入社のなめた女性社員(仮)
こちらの女性はすごかった。
「えー、あたし彼氏にプロポーズされちゃってぇ、来月あたりに結婚するんで辞めようかなぁ~ってー」
かんぜんにわが社をなめくさった態度であるが、なにせ大口取引先の娘である。誰も文句は言えない。設定の勝利である。
「しゃ、社長、申し訳ございません!わたくしも今この場で初めて聞いたものでして……!」
直属の上司である係長がハンカチで汗をぬぐいながら、しどろもどろになって横で弁解を始める。壮大なコントである。笑いをこらえるのに必死だ。飲みものを吹き出さないようにしなくてはならない。
この女性はその後も「あー、あたしお金はもういっぱいあるんでー」「パパに会社やだって言おうかなー」などと数々の名言を吐いては周囲をイラつかせていた。キャラ設定に隙がない。天才かよ。「お金はもういっぱいある」ってセリフ、おれも人生で一度は言ってみたい。架空でもいいから。
提案資料をガチで作成してくる係長(仮)
さらに、弊社に2人いる係長のひとり、ぴろし係長がこんな提案資料を持ってきた。本業の技術を生かして作ってきたそうだ。大人の本気がこわい。
「社長すみません、本来は社内会議で上げるべき事案なんですが、どうしても社長に先にご覧いただきたくて。いかがでしょうか」
「ライバル会社との比較」と銘打って、おれのすきなラーメン屋のサイトの分析が載っていたのには、さすがに芸が細かすぎて笑ってしまった。
参加者のみなさんの熱意や、おもしろがらせようというホスピタリティがあまりにも過剰すぎる。涙が出た(笑いすぎて)。
飲み会における社長(仮)の悩み
とにかくたのしい。ただ、社長ならではの苦悩があったことも書いておきたい。
後半、酔いが回ってきて、みんなテンションが上がってくると、会社的気遣いができなくなってくるフェーズに突入する。かんぜんにたのしくなってハイになるやつだ。
そうしたとき、社長はどうするべきであろうか。仮にも社長であるわけだから、自分で頼むわけにもいかない。周りが新入社員やヒラ社員であれば、「おい」と言うこともできるだろう。しかし、社長の周りの席はそれなりにえらいひとたちで占められている。
社長として、部下を持つ者たちに恥をかかせていいのだろうか。……否!
その結果、空のグラスを振る、咳ばらいをする、など「自分のグラスが空であるぞ」と周囲へのアピールをしまくるという結果になった。かと言って、ほんとうにえらいわけではないので、あまりえらそうにしすぎて友情をなくしてしまってもこまる。夢と現実のはざまである。自分が社長の器でないことがよくわかった。気遣いができなくて、上司におこられる役のほうがよっぽど気持ちが楽だ。
そう、架空の会社の飲み会は現実とは違い、えらくなればなるほど気を遣うのだ。おそらく今後二度と使うことないであろうライフハックである。みなさまどうぞご参考になさってください。
総括
さて、たのしい飲み会もお開きの時間である。
今回、弊社の飲み会にかんするアンケートを用意したので、みんなにご回答いただいた。
料金を先払いし、経費というていで金額を気にせず食べると、普段と変わらないか、おいしく感じるという結果になった。ちょっとした食べ放題気分である。価格帯が安めのお店で、ガンガン注文を頼めたのもよかったのかもしれない。
『「経費」で飲み食いするのは普段と比べておいしいか』という問いについては、その通りであるといえるだろう。経費で飲み食いするのは最高!
また、実際の会社に比べると、友人関係があるから自分を出せる、という意見が目立った。やはり、気遣いや話題どうこうよりも、仲のいいひとたちと飲むのは楽しいということだ。
『「会社の飲み会」というていで友人たちと飲み食いするのは、実際の会社の飲み会と比べて楽しいか』という問いについても、おおむねその通りだろう。
ついでに今回の役柄やキャラ設定に関してもアンケートを取ってみた。
「もっとパワハラをしたかった」というアグレッシブな回答が見られた。友人同士の合意によるパワハラ需要である。架空の会社という設定をつけることで、なりきり・コスプレのような楽しみかたができるというのは新たな発見だった。
当たり前のことだが、こういうへんてこな企画に付き合ってくれる友人はありがたいし、大切にしていきたいとおもう。ご協力くださったみなさま、本当にありがとうございました!ぜひまた飲もうぜ!!
(おわり)
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