カップ焼きそばというものがあるだろう。
あれがすきだ。いや、「すき」と言っていいのかはわからないが、たまに猛烈に食べたくなる。焼きそばでも、カップラーメンでもだめなのだ。あのちょっとチープな、カップ焼きそばが食べたくて仕方がないときが、ある。
ただ、お湯を入れているときに毎回おもうのだ。「これ、うそじゃないか」って。
だって「焼きそば」とか名乗っているくせに、実際はほぼ煮て作っているじゃないか。これではカップ煮そばだ、けしからん。
でも待ってくれ。じゃあ、ふつうの焼きそばを煮てみたらどうなるんだろう。これってトリビアになりませんか?
ふつうの焼きそばを煮て作ってみた
さて、そうと決まればさっそく調理に取り掛かろう。
近所のスーパーに行って、材料を調達してきた。
カップ焼きそばの具として一般的なのは、キャベツと肉だろう。本家(?)にならって、シンプルな構成にしたい。
ただ、わたしがすきな野菜ランキング第一位の玉ねぎはどうしても入れたい。ということでこうなった。
ちなみにふつうに焼きそばを作るときは、かならずにんじんも入れます。たまにもやしも。
基本的には「豪快!男の料理!!」なので、切りかたの雑さには目をつぶっていただけるとうれしい。
さて、野菜を煮込んでいる間に麺の紹介である。
使う麺は、むかしから我が家で親しまれている「マルちゃん焼きそば」。わたしはこの麺に絶大なる信頼を置いている。きっと煮てもうまいはずだ。たのむぞ。
ただ、ひとつ気になっていることがある。焼きそばの麺には、茹で時間がいっさい記載されていない。かんぜんにメーカー保証外のことをしようとしているのだ。この麺はいったいどれくらいの時間茹でればいいのだろうか。
かなりの細麺である。うーん、1分くらいにしておこうか。
肉が固くなってしまってはおいしくないだろう。肉に続いて即座に麺を投入することにした。
と、あわててひとつ重大なミスを犯してしまった。
豚肉でお湯が一気に冷めてしまい、ぜんぜん沸騰しないのだ。肉の量を減らすべきだったか、それとも麺は別鍋に分けておくべきだったか。しかしもう間に合わない。ガッデム!!
さらに写真を撮るのに四苦八苦している間に、あっという間に過ぎる1分間。結果的に、沸騰しないお湯で1分20秒くらい茹でることになってしまった。
煮そば、いそがしすぎるのでは。
使ったザルのせいか、一瞬「ラーメン二郎かな?」とおもったが、二郎のヤサイには麺も肉も入っていなかったし、なんなら玉ねぎも入っていない。共通項がキャベツしかなかった。おおいなる勘違い。
そして、湯切りを後のお湯を見ると、油が浮きまくっていた。ただでさえおおい豚肉の脂に加え、焼きそばの麺にはほぐしやすくするための植物油がまぶしてあるのだ。
茹で上がったときに油が落ち、独特のテカリがなくなった麺は、ちょっと細いスパゲティのような見た目になっていた。
丼に移したら焼きそばっぽくなるのではないか、とおもったが、想像以上に焼きそば感がない。具の焦げ目のなさが原因だろうか。キャベツもクタッとしている。
粉末ソースを混ぜるときに粉が部屋に飛び散ったら掃除がめんどうだな、とおもって丼に入れたのだが、はからずも油そばっぽい雰囲気が出た。
茹でて油が落ちた麺がかたまってしまい、粉末ソースを混ぜるのになかなか苦労した。粉がうまく溶けて混ざってくれないのだ。
通常、焼きそばをつくるときは、
- 肉野菜炒めをつくる
- 麺を投入
- 水を入れて麺をほぐす
- 水がなくなったら粉ソースを投入
という手順を踏む。この手順で調理すると、麺がじゅうぶんにほぐれてくれるし、麺の油や豚肉の脂がちゃんと文字通りの「潤滑油」になるだろう。
しかし今回は湯切りにより麺の油がおちてしまったため、混ぜるのがとてもたいへんだった。これはあたらしい発見だ。
おもえば、カップ焼きそばのソースは液体だ。あのソースは油分もたっぷり入っている。
なるほどそうか、カップ焼きそばは数々の研究を重ねた上に作られているのだな、というのが、あらためてよくわかった。
混ぜるのにだいぶ苦労したが、見た目はかなり「焼きそば!」という感じになった。ソースの力は偉大である。
なお、混ぜる際に丼のふちまでソースでめちゃめちゃに汚れてしまったので、あわてて拭いて取り繕った。みなさまも煮そばを作る際にはぜひ注意をしていただきたいポイントである。
ソースをかける前の写真と比べると、雲泥の差がある。うまそうだ。
食べてみると、うん……味が、薄い……?
マルちゃん焼きそばは粉末ソースの味が濃いので、ぜんぶ入れてしまうとしょっぱいのだ。そのため私は焼きそばを作る際、およそ3玉に粉2袋を入れるようにしている。
今回は1玉なので、ふつうであれば2/3袋でいいはずなのだが……ふしぎと味が薄いのだ。これはまったく想定外の事態であった。
追いソースをして、1袋を丸々入れても、まだ少し薄い。結果、自分がちょうどいいとおもえる味にするためにはなんと、ソースを4/3袋を使うこととなった。ふだんの倍量である。
なお追いソースを終えたあと、丼を拭くのをわすれたため、写真の上では麺を持ち上げたとたん、一気に丼がよごれたように見えてしまった。味ではなくて、ツメが甘い。
おそらくこれは推測だが、しっかり湯切りをしたとは言っても、焼いた麺とは含まれている水分量がぜんぜんちがうのだろう。
まさかこんなに味の濃さがちがうとはおもわなかった。何事も、やってみなければわからないことがあるものだ。たぶん、今後二度と使わないであろう知識がひとつふえた。
そして、かんじんの味について、である。
カップ焼きそばはふつうの焼きそばに比べて、味の濃さがおなじでも、まろやかでやさしい味がするだろう。一方の鉄板で焼いた焼きそばは、けっこうこってりしたパンチのある味がする。
だが、どちらともちがうのだ。煮そばはやさしく頬をなでるような味なのだ。なんということだ。ボクシング漫画だとおもって読んでいたらラブロマンスだった、くらいの衝撃である。焼きそばとも、チープでジャンクなカップ焼きそばともちがう、第三の味わいがここにはあったのだ。
で、じゃあアリかナシか、と言われると、ぜんぜんアリだとおもう。
濃いものがにがてなかたやお年寄りには、むしろおすすめできる味だ。キャベツのシャキシャキした歯ごたえや、わかりやすい派手さはないのだが、あっさりしていて、けっこううまい。
麺がすこし柔かったが、わたしが写真を撮ったりしてバタバタしていたせいもあるだろう、1分程度茹でればいいとおもう。茹で時間がきわめて短く、味見をしている余裕がなかったため、ざっくりした目安で申し訳ない。どうかこの煮そばの味のように、やさしくあたたかい目で見ていただけたら幸いだ。
うわ、まったく伝わらない表現になってしまった。でも、もしよかったら試してみてください。これはこれで「アリ」だ。
ふつうの焼きそば。こっちは問答無用でうまい!
(執筆:少年B)
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