去年の夏はどこにも行けないこともあり、ボーっと甲子園の交流試合を見ていた。
2回の攻撃前に各校の校歌が流れるのだが、全然違う地域の学校でも、校歌で歌われている内容やフレーズがなんとなく似ていた。
地域の山や川を讃えたり、友の大切さを歌ったり……
突然だが、以下の校歌を見てもらいたい。
……どうだろう? みんなが卒業した学校の校歌と、何となく似たようなフレーズが使われてるのではないだろうか?
上記の校歌は全国300中学校の校歌を分析し、ランキング上位の頻出ワードのみで構成した「日本一平均的な校歌」なのだ。
これは「だいたいどこの学校の校歌も山とか川とか似たフレーズで構成されているのでは?」という思いつきから、他人の卒業した学校の校歌と向き合った4ヶ月の記録である。
校歌の頻出ワードを調べて日本一平均的な校歌を作る
この調査は全国の校歌を調べないことには始まらない。
というわけで、歌詞検索サービス『歌ネット』で「校歌」を検索してみると、527校の中学校校歌がヒットした。歌ネットは便利なもので、校歌を人気順で検索することが可能なのだ。
今回は人気ランキング上位300校の校歌を調査し、頻出ワードをあぶり出していこうと思う。
よーし、やるぞ!!!
地域別の内訳は以下の通り。北は北海道から南は鹿児島まで、計36都道府県の校歌を集計。
ここからはお待ちかね、頻出ワードをあぶり出していこう。
方法は単純だ。以下の作業をひたすら繰り返すだけ。
【頻出ワード抽出ルール】
- 地域の名称が入った川や山は、地域名を除外
例)「鶴見川」「筑波山」
→ 単純に「川」「山」としてカウント- 同じ意味を持つ語は、出現回数が多いものをカウント
例)「学び」126回、「学ぶ」48回
→ 「学び」をカウント- 助詞(~が、~の)は頻出ワードとしてカウントしない
頻出ワード TOP30!!
ここからは全国300校の校歌を調べた集大成「頻出ワード TOP30」を発表していきたい。
第30位……世界
校歌での活用例:世界の空に、世界に通じて、世界につづく
(出現回数77回 名詞)
当時の世界は学校が全て。給食で余ったおかずの取り合いじゃんけんで確実に勝つ方法を発見できれば世界を変えられただろうに。
第29位……文化
校歌での活用例:文化の故郷、そびえ立ち文化の、文化の扉は
(出現回数78回 名詞)
色んな文化を知るよね、特にエロ。インターネットもそうだけど、様々なことを知る時のモチベーションは間違いなくエロ。
「時速60キロで走る自動車から手を出すとおっぱいの感触と同じと聞き、夢中になって行うと3時間経過していた。この自動車の分速を求めよ。」こんな問題なら僕は数学が好きになっていただろう。
第28位……雲
校歌での活用例:空に飛ぶ雲は、雲のかげ走る、希望の雲
(出現回数81回 名詞)
よく友達みんなでエロいものに見える雲選手権してたなぁ。Wくんはおっぱいに似てる雲を見つけるのが超絶上手だった。
その能力のおかげかWくんは現在公務員だ。安定した職種への需要が高まる昨今、必要なのはエロい雲を見つける能力といっても過言ではない。
第27位……みどり
校歌での活用例:みどりめぐらす、みちわたるみどりの広野、みどり見晴らす
(出現回数83回 名詞)
(※「緑」は57回)
みどりって人の心を落ち着けますよね。エロに傾いた心も揺り戻してくれます。大事なことは全て校歌に詰まっているんだ。
第26位……若き
校歌での活用例:若き叡智、若き心に、たゆまずすすむ若き日の
(出現回数84回 形容詞)
若き〇〇って続く歌詞が多かった。血潮とか。血潮って中学校の時はなんのことかよくわからなかったなあ。
ちなみに血潮は「体内を潮のように流れる血。激しい情熱や感情。」という意味らしい。
僕が中学の時、WORST全盛期。ヤンキーに憧れていた僕は自転車通学時に着用が義務付けられていたヘルメットのあごひもを外していた。れっきとした校則違反…極悪だ。
第25位……富士
校歌での活用例:富士の嶺、ゆるがぬ富士の、富士はおおらかに
(出現回数85回 名詞)
富士は地域名とするか悩んだのだが、富士山は日本の象徴だと思いランクインさせた。富士そばも美味しいし。
第24位……未来
校歌での活用例:未来をめざし、未来にかける、まぶしい未来を
(出現回数91回 名詞)
中学の時の彼女がMr.Childrenの未来という曲の歌詞「生きてる理由なんてない だけど死にたくもない」のフレーズを聞いてひたすらに共感していた。死に対して漠然とした恐怖を抱いていた僕はそのスタンスをカッコ良く感じていたな(二ヵ月でフラれたけど)。
第23位……丘
校歌での活用例:若草もゆる丘、叡智の集まる丘に、花咲く丘に
(出現回数93回 名詞)
僕の地域に丘がなかったからか、あんまりイメージ出来ない。何となく山よりも低そう。
第22位……朝
校歌での活用例:希望の朝を、文化の朝の、朝の光さんさんと
(出現回数97回 名詞)
朝ってポジティブなワードにくっつきやすい気がする。確かに朝焼けみると頑張ろう!って素直に思う。
ちなみにラジオ体操の歌でも「新しい朝が来た 希望の朝だ」と朝の時間の大切さを歌っている。みんな二度寝はやめようぜ!
第21位……明日
校歌での活用例:明日を担う、明日へ歩みだそう、讃えよう日本の明日を
(出現回数99回 名詞)
(※「あす」は15回)
明日や未来……どうなるか分からないものを前向きに捉えている。僕も確定申告のようなどうやって行えばよいか分からないものを前向きに捉えたい。
第20位……道
校歌での活用例:この道を、創造の道、学びの道は
(出現回数100回 名詞)
(※「みち」は23回)
ついに頻出回数が100回に。ここまで校歌を調べたこの道がどこかへつながっていてほしい。
第19位……力
校歌での活用例:力みなぎる、若き力よ、泉の如く湧く力
(出現回数112回 名詞)
学校がピンチになった時、急に不思議な特殊能力に目覚めて、その力を使って悪を倒していく……みたいな妄想めちゃめちゃしてました。
悲しいのは妄想の中ですら僕は主人公ではなく5番手くらいのポジションだった。特殊能力も火とか風みたいなカッコよく映えるものではなく土とか毒の能力。謙虚さゆえなんです。
第18位……ゆく
校歌での活用例:栄光の道つねにゆく、日毎にそだちゆく、進みゆくべし友情
(出現回数114回 動詞)
(※「行く」は29回)
「行く」ではなく「ゆく」がランクインするのに校歌っぽさを感じる。
ちなみに日本で初めて作られた校歌は1904(明治37)年の旧制愛知一中(現・愛知県立旭丘高等学校)とされる(諸説あり)。
100年以上も前だ。「ゆく」がランクインするのも納得だ。そして遠くない未来…つまり、ゆくゆくは「行く」がランクインするのだろう。
第16位……夢
校歌での活用例:若人の夢、夢爽やかに、つねに夢あり
(出現回数121回 名詞)
中学時代、僕の夢は漫才師だった。中2の時に見た南海キャンディーズに心奪われたのだ。ただ、笑われると思って友達にはなかなか言えなかったな……。
第16位……川
校歌での活用例:川清く流れ、川のせせらぎ高く、希望の川に
(出現回数121回 名詞)
(※「河」は13回)
本命の一角であった川がここで登場。川はトップ10に入らないのか……意外だ。合唱曲は川が頻出する曲が多いイメージ。
第15位……学び
校歌での活用例:かぎりない世界を学び、いそしまん学び、仲間ここに学び
(出現回数126回 動詞)
(※「学ぶ」は46回)
いくつになっても学びはあるけど中学生の時は吸収力が凄い。B-RAPハイスクールで人気だったCo.慶應さんの年号ラップは今でも覚えてるし。
勉強以外でも中学校の時は学びが多い。中2の時の担任は大の阪神ファンで阪神が負けた次の日は誰が見ても分かるくらい露骨に機嫌が悪かった。大人って別に完璧じゃないんだなと学んだ。
第14位……ここ
校歌での活用例:耐えて立つここ、ここに芽生える、学校(ここ)に集まる
(出現回数135回 代名詞)
「ここ」というフレーズ凄くグッとくる。スラムダンクの名言「オヤジの栄光時代はいつだよ……全日本のときか? オレは今なんだよ!!」を彷彿させるくらい今ここの瞬間を全力で生きている感じ。
第12位……花
校歌での活用例:仲良く寄り添う花、花の春もたらす、花咲く丘に
(出現回数144回 名詞)
植物としての花と、才能が花開く(大輪の花を咲かす)の2つの意味で歌詞に使われてそう。そういえば、中学校のときオレンジレンジの花がめちゃ好きだったなぁ~。
第12位……心
校歌での活用例:健やかな身と心、思いやる心ひとつに、心の故郷
(出現回数144回 名詞)
(※「こころ」は41回)
心の形成ってほとんど中学時代に完成するのではないか。その推測の正しさは僕が中学時代から精神的にまるで成長していないことが証明している。
第11位……野
校歌での活用例:みどり野を、マメナシのように野に咲く星の、野はさかえ
(出現回数146回 名詞)
(※「平野」は10回)
野ってあまり注目しないけど、僕らが立っているのは全て野だ。つまり大きく見れば野は地球……校歌とは壮大な物語なのだ(ちなみに「地球」は第271位で出現回数6回だった)。
さぁここからはTOP10の発表!! 豪華にイラスト付きです!!
第10位……希望
校歌での活用例:希望の斜面草もえて、青春のもゆる希望は、希望あり自らすすみ
(出現回数160回 名詞)
まさに明るい未来の象徴のようなワード。希望に満ち溢れた入学式、真新しい学ランに鳥の糞を落とされたときはさすがに絶望したなぁ。
第9位……ああ
校歌での活用例:若いきらめきああ友よ、心に花と太陽をああ、ああ新しき世に覚めて
(出現回数168回 感嘆詞)
感嘆詞として唯一のランクイン。中学校の時はああ……って思う瞬間が多い。先生をお母さんって呼んでしまう、女の子に手を振られていると思い振り返したら自分じゃなかった。書いていて当時を思い出し苦しくなる。ああ……。
第8位……空
校歌での活用例:紺碧の空夢また広く、野は広く空のかぎりに、なびく青雲心の空に
(出現回数169回 名詞)
夏の部活動、厳しいトレーニングの後にみんなで寝転がりながら空を見るのが好きだった。結局エロい形の雲を探すのだけれど。
第7位……光
校歌での活用例:光があふれているよ、まひるまの光に、平和の光
(出現回数170回 名詞)
希望の~〜〜、明日への~〜〜とかポジティブワードととても相性が良い光。頭が薄い先生に対して「光輝いている」と敬い半分、弄り半分で言っていたな。言葉はブーメランのごとく返ってくる。僕の頭が光輝く日も近いのではないか。
第6位……風
校歌での活用例:夢をみつける風が吹く、爽やかな風すくすく、風になびく野のはてに
(出現回数171回 名詞)
「子供は風の子」ということわざがあるが、子供は活発で、寒風が吹いていても戸外を駆け回って遊ぶものだという意味らしい。いや、思いっきり室内でゲームしてたよ。スマブラしかしてなかったよ。「子供はスマブラの子」に改めるべき。
第5位……山
校歌での活用例:山の精神と山の力を、あの山さへ超えて、はるかなる山の彼方
(出現回数172回 名詞)
ここで大本命の山が!!! TOP30の中にも自然系(山・野・花・川・丘)が多数ランクイン。その土地の山や川は、やはり地域の誇りなのだろう。
僕の中学校は山の近くにあり、秋はよく熊が出ていた。熊が出ると校内アナウンスで「全校生徒は校内に避難してください」と流れ、しばらくすると「猟友会で熊を撃ちました~、もう大丈夫です。」と流れるのが毎回だった。これは山が近い中学校あるあるじゃないかな?
第4位……母校
校歌での活用例:栄えある母校、母校力尽くせば、大気寄せくる母校の庭に
(出現回数175回 名詞)
「○○の母校~♪」というように校歌のサビに頻出していた印象。この記事を書くにあたり自分の母校をGoogle検索したのだが、口コミ評価が2.3であった。2.3ってなかなか強烈だ。近所にある白湯かってくらい味のないスープのラーメン屋でさえ食べログ2.9あるのに……。
TOP3の発表の前に、ランキングには入らなかったものの気になる頻出ワードを紹介したい。
第122位……眉
校歌での活用例:共に眉上げて、眉青く声のかぎりに、決意を眉にいざ行け
(出現回数20回 名詞)
眉!? 「眉あげて」「眉青く」「決意を眉に」などの使われ方をしていた。慣用句的なやつか。なるほど。
第155位……宇宙
校歌での活用例:宇宙の世紀開くもの、世界を宇宙を呼吸している、ここは宇宙のどのあたり
(出現回数14回 名詞)
学校の校歌としては壮大過ぎやしないだろうか。日本はおろか世界すら超越した破壊力のある歌詞。1校くらいは宇宙(こすも)と読んでそう。
第185位……自治
校歌での活用例:自治と勤労正義のおしえ、名も高き自治の学び舎、清き自治の庭
(出現回数11回 名詞)
なんていうか、服装チェックが厳しそう。生徒会長は絶対眼鏡。自治ってそんなイメージ。
ではTOP3! いってみよう!!
第3位……中学
校歌での活用例:日々をいそしむ中学、学び励む中学、わが中学の同じ窓
(出現回数188回 名詞)
(※「中学校」は184回)
「中学」「中学校」あわせると出現回数372回!! もし集計方法が合算だったら、さらに上位を目指せただろう。恐らく300校全ての校歌で1回は使用されている。
話は変わるが、中学時代のイタズラって非常に幼い。僕らは学年の先生たちの顔写真を加工してワンピースの賞金首みたいにしてトイレに貼ったりしていた……(担任の先生から「なんで俺はこんなに懸賞金が安いんだ!」とよく分からない角度で怒られたのも含めて良い思い出だ)
第2位……友
校歌での活用例:苦楽を分けた友の手の温かさ、友と励みて自由なる、夢あたたかく友あり師あり
(出現回数197回 名詞)
上京している僕が中学校の友人に会うのは年1回、大晦日のみ。酒や料理をたらふく食べ、年越しの瞬間にジャンプする。「今年も(年越しの瞬間)地球に居なかったな~」というやり取りを12年余り続けている。会う頻度が少なくなっても、会えば一瞬で中学校の時と同じ感じで話すことができるのは不思議だ。何が言いたいかって友は大事。
そして堂々の第1位は……
第1位……われら
校歌での活用例:われらが母校、われらは強し、われらの前途は
(出現回数419回 名詞)
(※「わが」は125回、「我等」は75回、「我ら」は55回)
ランキング1位はわれら!!なんと2位の「友」を倍以上引き離す出現回数。まさに圧倒的優勝。同一の意味を持つ「わが」や「我等」の出現回数も多く、中学校校歌達の自己主張の強さが伺える。「われら」という歌詞を入れることで、学校全体の団結感を高める効果があるのだろうか……そういえば校歌ってそういうものかもしれない。
日本一平均的な校歌の作り方
さぁ! 頻出ワードは出そろった! さっそく校歌をつくろう!!
と思ったものの、僕には作詞のスキルも、作詞家へのパワフルなコネクションも持っちゃいない。
路頭に迷ってくれた僕を救ってくれたのは母校の校歌であった。
母校の校歌を品詞ごとに分類し、ランキング上位の頻出ワードを同じ品詞の箇所に当て込めば日本一平均的な校歌が出来るはずだ。
ありがとう、母校。今度菓子折り持ってくよ。
さっそく母校の校歌を分析し、その構造を探っていく。
次に歌詞を品詞ごとに区切っていく。
最後に品詞を一つひとつ分類していく。
僕の母校の校歌は以下の品詞・個数で構成されていた。
- 名詞 26個
- 動詞 17個
- 形容詞 8個
- 感嘆詞 3個
- 代名詞 3個
- 連語 3個
ここに、それぞれの品詞でランキング上位のワードを当て込んでいく。
ただし、元となる校歌内に複数回出てくるワードは、その回数に関わらず当て込むワードを同一のものとする。
(今回の場合、母校の校歌に名詞の「山」は4回出てくるが、当て込むワードは1つの共通のものとする)
このルールを適応すると、サビにあたる部分では毎回似たフレーズを歌うことになり、いい感じになる。J-POPも校歌も、基本的な構造は変わらないみたい。
使用できるワードが決まれば、あとはそれっぽい歌詞になるよう当て込んでいく。
歌詞を考えること5時間、調査開始から累計31時間で日本一平均的な校歌が産声(メロディ)を上げた。
ここまでの話を踏まえた上でもう一度、校歌を見てほしい。
校歌っておもしろい!
300校の校歌を調べて思ったのが、とにかく前向きで熱さほとばしる歌詞が多いということ。
辛いとき、悲しいときは校歌を聞いてみるのもありかもしれない。
中学生の時の自分が何者にでもなれそうなワクワク感を思い出して元気が出るはずだ。
あ、それともう一つ……
僕の母校の校歌、頻出ワードトップ30のワードが半分入っている(15/30)。
われらの中学校歌がここまで平均的だなんて。ああ、友に報告せねば。
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