熱烈なファンが多い「ラーメン二郎」。
私はラーメン二郎は未体験だが、なんとなく野菜山盛りの大ボリューム、というイメージがある。
一方、東京・銀座には「らーめん一郎」というラーメン屋があり、こちらは食べたことがある。ごく普通の量だった。
では、らーめん一郎の量を基準にすると、ラーメン二郎は「ラーメン何郎」になるのか?
1.5郎か? 2.5郎か? ぴったり2.0郎なのか?
さあ、ラーメンを量ってみよう!
どうやって量るか
さて、いきなり難問である。ラーメンをどうやって量るのか?
すぐに思いつくのは、ドンブリをはかりに乗せて計測する方法である。
だが、ラーメン屋にはかりを持ち込む、ってどうなんだろう。
カウンターにはかりを置いて待ち構え、届いたラーメンを即座に計量……そんな人見たことないぞ。写真を撮るならわかるけど。
実行に移す勇気がないので、別の方法を考えた。自分の体重を利用するのだ。
まず、ラーメンを食べる前に体重を量っておく。そしてラーメンを食べ、再び体重を量る。
食後の体重はラーメンの分だけ増えているはずだから、食前の体重を引き算すればラーメンの重さになるのだ。これぞラーメン方程式である。
ここで重要なのは、体重をどこで量るか。
自宅で計量していると、ラーメン屋との往復でカロリーを消費してしまう。誤差を少なくするため、なるべくラーメン屋の近くで計量したい。
そんな都合のいい場所が、あるのだ。
らーめん一郎から歩いて5分、そこにはビックカメラ有楽町店がそびえている。
家電量販店なら体重計コーナーがあるだろう。試し乗りもできるんじゃないか?
さらに、ビックカメラは店内の撮影が許可されている(参考:ビックカメラ公式のツイート)ので、記事にもしやすい。
好条件が揃い過ぎてて怖くなってきた。まるで天の導き、いや麺の導きではないか。この方法でいこう!
らーめん一郎を量ろう
まずは、基準となるらーめん一郎から計量しよう。
ビックカメラ有楽町店で体重測定し、一郎を食べ、ビックカメラで再び測定。
ラーメン方程式ツアーに出発だ。
食前の体重測定
ビックカメラ有楽町店、3階の体重計コーナーからスタートである。
壁を埋め尽くす体重計。「お試しできます」との案内表示があったので、遠慮なく試させてもらおう。
こちらが、計測のキーアイテムとなるタニタの体重計である。
体重は50g単位で表示され、体脂肪率や体内年齢の測定、スマホアプリとの連携も可能なハイスペ男子だ。
この体重計、写真のようにハンドル部分が伸びるようになっている。これを握りつつ乗ることで、両手両足に電流を流していろんな数値を出すらしい。
だが、店内ということもあり靴下を履いたまま乗ったので、体脂肪率などは計測不能である。
すまないな、ハイスペ君。私は体重だけわかればいいんだ。
表示された数値は72.15kg。これが食前の体重である。
一郎への歩き方
ではビックカメラから、らーめん一郎へと向かおう。
ここで注意すべきは歩き方である。
短い距離とはいえ、ラーメンを正確に量るためには歩行によるカロリー消費をなるべく抑えたい。
スポーツ用品店『アルペン』運営のWebメディア記事によると、「ダイエット効果が高い歩き方」のポイントは以下の通りらしい。
- 背筋を伸ばす
- 視線は前方に向け、やや遠くを見る
- 肘を軽く曲げ、腕を大きく振る
- 少し大股で歩く
今回は体重を減らしたくないわけだから、この逆をやればいいのだ。
すなわち、猫背になって下を向き、腕をだらりと下げて小さい歩幅でとぼとぼ歩く。これでいこう。
覇気の無さよ。まるで生霊じゃないか。
どんなショックなことがあったんだ。失職したのか失恋したのか。道で見かけたら肩をたたいてフラペチーノをおごりたくなるやつだ。
だが、これこそラーメン計量のために編み出した正統な歩行フォームである。私は望んでこの歩き方をしているのだ。戦略的なゾンビと呼んで頂きたい。
言い訳を考えながらのろのろと歩いてるうちに……
らーめん一郎に到着だ!
一郎を実食!
特製醤油らーめんも気になるが、今回はしじみらーめんを注文した。しじみが好きなので。
しじみらーめん、なんてほっとする味なんだ。
ほどよい脂分のスープはちょっぴり磯の香りを思わせる塩味で、ストレートな細麺が箸をつかんで駆け上がってくる。チャーシューも柔らかくておいしい。
まるで蕎麦のような感覚ですすれる軽やかさが魅力である。これはお酒の〆にもちょうど良さそうだ。
もちろん、目的は私の体重を利用した計測なので、スープまできっちり完食した。
食後の体重測定
店員さんにごちそうさまを告げ、ビックカメラに戻ろう。
ここで気づいたのだが、ビックカメラからラーメンを食べに行き、また戻る。このルートはビックカメラ従業員の昼休みじゃないか。
あのお店で昼ご飯を食べている従業員もいるかもしれない。
まあ、今回の私は歩き方のせいで、
視界は常にこれなんだが。はたから見れば、おいしいラーメンを食べた直後とは思えない意気消沈ぶりである。
徒歩5分の道のりを8分かけて歩き、ビックカメラにカムバック。
そして、食後の体重はこちら!
おお、72.90kgだ! 食前は72.15kgだったから、確かに増えている!
あとは引き算すれば…いや、ちょっと待て。
私はラーメンとともに水も飲んでいた。念のため、水の重さは引くべきだろう。
こうして、らーめん一郎の計算結果は以下となった。
この620gが、新しいラーメンの単位「一郎」である。受験生の皆さんはぜひ覚えていただきたい。
ラーメン二郎を量ろう
いよいよ二郎の計量である。
ラーメン二郎は店舗が数十軒あるが、今回は以下の条件を満たす必要がある。
- ビックカメラが近くにある
- 私がイメージする「二郎系」っぽいラーメンである
調査をかさねた結果、「ラーメン二郎 新宿小滝橋通り店」がこれらを満たすことが判明した。こちらを今回のターゲットとする。
食前の体重測定
新宿小滝橋通り店の近くにあるのは、ビックカメラ新宿西口店である。
体重計コーナーに向かうと……
ここでもタニタのハイスペ体重計を発見。活躍のフィールドが広いな。
この日の食前の体重は72.80kgであった。微妙に太ったか?
はじめての二郎
すっかり慣れたゾンビスタイルで10分ほど歩き、ラーメン二郎 新宿小滝橋通り店に到着!
初めて足を踏み入れた瞬間の緊張は、飛行機に乗り込むときのそれに似ていた。
注文の流れを説明しよう。まずは券売機で食券を購入。
食券を店員さんに渡すと、トッピングの好みを聞かれる。
ここで「何とかマシマシ」とか「何とかカラメ」のような呪文を唱えるのかと思っていたが、この店舗は親切だ。カウンターに頼み方が書いてある。
私の注文は「大ラーメン 野菜多め ニンニク少なめ」。
二郎っぽいボリュームを体験したかったので「大ラーメン 野菜多め」、ニンニクは無いと寂しい気がしたので少なめにお願いしてみた。
とはいえ、はじめてなので量の加減がよくわからない。未知なる敵を迎え撃つ戦士の心境だ。
店内を眺めるとほとんどが男性客だが、ひとりで来ている女性もいる。
しばし待って届いたラーメン。
私は確信した。
二郎と対面!
あ、これ2倍あるわ。
まだ計量してないけど、一郎とは明らかに体格が違う。筋肉量が違う。
無骨に盛られたモヤシとキャベツ、その隙間からのぞく麺と豚。これが二郎か! うわさに名高い二郎か! すげー!
迫力に圧倒されている場合ではない。こいつの重さを知るために、私は麺もスープも完食せねばならんのだ。
ここからは、はじめての二郎の食レポを食事の進捗率とともにお届けしよう。
二郎を実食!(進捗率0%)
最初に、山盛りの野菜を掘削する作業が必要である。
モヤシをかき分け、豚肉の塊を2つ確認。1個がトランプ一束ぐらいの厚さだ。
というか、「ぶた入りラーメン」じゃないのに豚が入ってるの? 「ぶた入り」ってどういう意味なんだろう。
麺を一本つまみ上げてみる。太。
まるでうどん、いや、うどんでもこの太さはなかなか無いぞ。
ようやくラーメンの全体像がわかってきた。いただきます!
二郎を実食!(進捗率30%)
うん、おいしい。味は想像よりもさらっとしていた。
もやしのシャキシャキ感と、モチモチの麺がコラボする食感が面白い。
スープは辛めである。だがピリッと攻めてくる辛さではなく、口の中にじんわり広がって満たしていくシブめの辛さだ。
豚に関しては、「こんなに丸々の肉を食べていいのか」とギルティを感じるほどのボリューム、そして旨さだった。
それにしても、一口一口の重みが一郎とはまるで異なる。
そして発汗がすごい。ポケットからハンカチが出動した。汗を拭き拭き食べ進めよう。
二郎を実食!(進捗率50%)
半分で、すでに「しっかり目の昼ごはん」を食べた感覚。しかし驚くべきことに、やっと見た目が普通のラーメンになった。
なに? こちとらすっかり「ごちそうさま」の気分よ? 今からもう一回「いただきます」なの?
雲行きが怪しくなってきた。残り全部食べ切れるのか? いや、食べ切るしかないんだが。
汗は全くおさまらず、ハンカチに加えてタオルも出動した。右手は箸とタオルを忙しく操り、麺を持ち上げ顔をぬぐう。
……と、このあたりで気づいてしまった。
もしかしてこれ、食事でカロリーを消費しているのでは?
自分の体重を利用してラーメンを量るには、不必要なカロリー消費を抑えなければならない。
だが、口とドンブリを何往復もする箸。餅のような太麺を咀嚼。額を伝って光る汗。
これは運動だ。食事という名のスポーツだ。
こんな有様で重さの計算が成り立つのか不安がよぎったが、今は食べるのが先決である。もう一回いただきまぁす!
二郎を実食!(進捗率70%)
お腹いっぱい。
もはや「取りすぎて後悔してるバイキング」状態なのに、3割も残ってるってどういうことだ。しかも、豚がまだひとつ沈んでるではないか。
胃袋が悲鳴を上げて「もう限界ッス」とLINEを打ってきた。苦しいのはわかるが既読無視だ。でも苦しい!
さらに追い打ちをかけるかのごとく、不測の事態が発生する。店内BGMでLUNA SEAの「TRUE BLUE」が流れ始めたのだ。
RYUICHIが切なく歌う「壊れそうなほど 狂いそうなほど」の歌詞が、今まさに壊れそうで狂いそうな私の胃袋にシンクロして破滅のハーモニーを奏でるのである。ああ、私が内側から壊されてゆく……
二郎とRYUICHIに追い詰められ、ピンチは厳しくなるばかり。
私に残された道はひとつ、ラーメンを食べ切ることだ! うおおおおお!
二郎を実食!(進捗率90%)
もー無理。
いや、ホントもう、お腹のキャパ完全に超えてるって。入らないって。
豚はどうにか食べ切った。あとはレンゲで麺とモヤシを一心不乱にすくう行である。
それでもなかなか減らない。ドンブリの底から麺が沸き上がっているかのようだ。二郎の泉だ。
しかし、ニンニクは入れといてよかった。強烈な風味が食欲のエンジンになってくれるのだ。
腹いっぱいで苦しい、ニンニク、食べて苦しい、ニンニク、食べて食べて食べて、
二郎を完食!
ごちそうさまあぁぁぁぁぁぁ!
……結局、スープは全部飲めなかった。計量に誤差が出るのはわかっていたが、身体はとっくに白旗を上げていた。
二郎を出てビックカメラに向かう。腹がずしりと重い。
ずっと無気力ゾンビスタイルで歩くように心がけていたが、ここまで満腹だと自然とその歩き方になってしまう。
身体をゆするとどこかから何かが飛び出てしまいそうで、慎重に歩かざるを得ない。
なんとかビックカメラに到着し、最後のミッションである食後の計量!
73.75kg! だいたい1kg増えてる!
ここから、らーめん一郎と同様にして水の重さを求め、二郎の計算結果はこうなった。
結果発表
らーめん一郎、620g!
ラーメン二郎、847g!
ということは?
今、ラーメンの真理が解明された。
ただし、二郎の重さは誤差が大きいと思われる。
スポーツのような食事だったこと、スープを飲み切れなかったこと、RYUICHIの奇襲に遭ったことを加味して頂きたい。
それにしても、二郎では明らかに一郎の2倍以上のボリュームを感じた。これは重さというより体積によるものだろう。
二郎をはじめて食べる人には、最初は大盛りや追加トッピングを頼まず、普通に食べることをお勧めする。
「野菜多め」の「め」に釣られてはならない。正確には「野菜多」だ。
おわりに
今回訪れたラーメン二郎は新宿小滝橋通り店だが、二郎は店舗によって味や量が違うと聞く。ぜひ体験してみたい。
今日も私は、新しいラーメンを求めて歩く。
……ん? あれは何だ?
まさか……
ら、らうめん さぶ郎!?
!?
……えーっと、
普通盛りを食べました。(これでも普通盛り)
おいしかったです。
(執筆:フクイチ)