最近、懸垂25回を朝の日課にしている。
運動しなきゃと思いつつ目標がないから動けない。でもやらなきゃ……。
そんな思いを解消してくれたのが懸垂だ。腕を上げるとそれ以上に自己肯定感が上がる。すっかり懸垂にハマってしまった。
日々、懸垂ができる公園はないかと探していると、筋トレ好きの後輩が日本全国の懸垂ができる公園をまとめたサイトがあると教えてくれた。サイトを見て、情報量・熱量に圧倒された。

▲『懸垂のできる公園リスト』。日本全国の懸垂スポット情報が恐ろしい物量でまとめられている
どんな思いで、この尋常じゃないサイトを作ったのか?
気になったので、『懸垂のできる公園リスト』管理人である公園の鉄棒さん(@pull_up_bar)に色々聞いてきました。
『懸垂のできる公園リスト』管理人・公園の鉄棒さんにお話を聞いた
「本日はよろしくお願いします! 色々お話聞かせてください。」
「こちらこそよろしくお願いします」
驚いたのは公園の鉄棒さんのスマートさ。正直、金剛力士像みたいな方が運営しているのかと思ったが、公園の鉄棒さんは物腰の柔らかい紳士であった。
とても懸垂のサイトを運営しているとは思えない。休日はチェスを嗜んでいそう。
「まず、なぜこの懸垂できる公園リストを作ろうと思ったのですか?」
「もともと日常の運動としてジョギングをしてたいのですが、そこに足りない部分を感じて懸垂を始めたんです。握力・腕力の強化に効くかなと思いまして。
そこでちょっと懸垂したいなと思ったときに、懸垂器具情報があつまったとある掲示板サイトを使っていたのですが……どの公園が近所にあるのかイマイチ分からず。自分用に、Google Mapで登録しはじめたのがきっかけです」
「なるほど。最初は自分用だったのですね! そこからサイトとして立ち上げようと思ったのはなぜですか?」
「いろんなサイトでリストを作って公開している人がいるのですが、同じような不便を感じているように思ったのです。なので、1箇所にまとまっていれば役立つかなと考えました」
「懸垂のできる公園リストは場所別・遊具別の分類がめちゃくちゃ細かいです。他のサイトとの差別化で意識した点はありますか?」
「見やすいように、表記の統一に関してはこだわっています。
三丁目公園は漢数字、5号公園は半角数字のような一定のルールを設けてGoogle Mapに登録してますね。
遊具名についても同様にルールを設けていて、遊具名ごとのページから公園の画像が一覧で見れるようになっています」
「そういった努力があっての見やすさなのですね。
遊具名がかなり細かく分類されてますが、昔から知っていたのですか?」
「いえ、全然知らなかったです。最初は写真だけアップしていたのですが、名前があったほうが後から分類しやすいなと思いまして。メーカーを調べたり、遊具の横の看板に書いてある名前を見たりで知識をためていきました。
ツイッターに遊具の写真をあげたら、リプライで正式名称を教えてもらったこともあります」
「凄い……! メーカーのサイトに確認することに情熱を感じます。
ちなみに公園遊具界のメジャーなメーカーはあるのですか?」
「調べるまで社名も知りませんでしたが、日都産業、コトブキ、タカオ辺りがメジャーですね。
メーカーのサイトでは最新のモデルしか載せてないことがほとんどなので、古いものは各メーカーにメールで問い合わせていました」
「地道な努力の上で成り立っているのを感じます。
問合せしていく中で印象的だった出来事はありますか?」
「遊具名を区役所に問い合わせたら、一覧をもらえたことがありました。あとはメーカーから遊具の図面(CADデータ)が送られてきたこともあります」
「CADデータは嬉しいようなそうでないような。
そもそも遊具がある公園はどのように探しているのですか?」
「『公園 懸垂』『健康遊具 <市区町村名>』『<遊具名>』などのワードで検索したり、個人やコミュニティのブログ、メーカーの施工実績ページで公開されているものを調べたりしています」
「めちゃくちゃ泥臭い作業ですね……」
「自分でも泥臭い作業しているなと思います。笑
あと珍しい入り口としては、テレビCMを見て、後ろにある遊具が気になって検索したこともあります」
見つけた。
市川市(千葉県)の大洲防災公園だった。
決め手は上の方にある「エクステリアうだがわ」の看板で、Google Map で大洲防災公園の画像を調べると、出てくる遊具が一致。
さて登録しようと自分のマップを見ると、どうやって調べたのか覚えていないが、遊具名まできっちり登録してあった。 pic.twitter.com/WDmcKVftI8
— 公園の鉄棒 (@pull_up_bar) July 23, 2021
「これをCMから特定できるの……!?
公園の鉄棒さんの、その情熱はどこから来るのですか??」
「情熱という感じでもないのですが、掃除し始めたらいままで気にならなかったところが気になるのに似ていますね……。キリのないことをしてるなと思います」
「テスト勉強前にそんな状態になったことがあります。
ちなみに訪問済の公園は赤く塗っているそうですが、現在何%くらいなのですか?」
懸垂のできる公園めぐりをします。https://t.co/xrvlVTg1Wf#鉄棒 #雲梯 #健康遊具 #懸垂のできる公園
すでに訪れたところは赤いマークで塗っていきます。 pic.twitter.com/x7VqT5nsOk
— 公園の鉄棒 (@pull_up_bar) December 5, 2020
「まだ16%ぐらいです。ただ、訪問済数が増えるより、未訪問数が増えるほうが速く、収束する見込みもないですね。笑」
「終わりなき旅ですね……。
サイト内に『目撃情報 募集』のフォームがありますが、そこからの連絡も多いのでしょうか?」
「いえ、まだほとんど来てないです。『近所の公園が載ってなかった』『情報が間違っている』などあったら、気兼ねなく教えてほしいです。サイトに反映します」
「例えば僕が『溝口南公園』の写真を撮影し、フォームに送信したらサイトに反映される……みたいなイメージでしょうか?」
「そうです。メールフォームなので、送られてきた情報をもとにGoogleマップとサイトに反映します。写真に関しては無断転載になる可能性を避けたいので、ご自身で撮影されたもののみ掲載させてもらいます。」
「なるほど。溝の口南公園を早朝の懸垂時に撮影したのですが、こちら使えそうでしょうか?」
「ありがとうございます。誰も写ってない理想的な写真ですね」
「おぉ! うれしいです。皆さんも近くの公園情報をドシドシ送ってください!
ところで、これまで巡った懸垂スポットの中で、おすすめの場所はありますか?」
「日比谷公園(千代田区)、新宿中央公園(新宿区)、入船公園(横浜市)はおすすめですね。あとは未訪問ですが、川沿公園(苫小牧市)、メバル公園(防府市)、昭和公園(函館市)も気になってます」
「メバル公園の『ぶらりんタコチュー』、気になります」

▲ぶらりんタコチュー、凄く可愛いのだが!(出典:大久保体器株式会社)
「ぶらりんタコチューを作っている大久保体器は、岡山県の公園遊具メーカーですね。そのためぶらりんタコチューも、ほとんどが中国地方にあります」
「全国大会で出てくる強キャラ的な立ち位置ですね。笑
訪問済のおすすめ公園は、よく行かれるのですか?」
「いえ。実際は自宅や職場の移動経路から近い・混んでいないを基準に公園を選んでいます」
「まあ、なかなか懸垂をしに遠くの公園へ……とはならないですよね。
そういえば今日は、そんな行きつけの懸垂ができる公園を案内してもらえるんだとか!」
「そうですね。そろそろ行きましょうか」
懸垂スポットを巡る
港区立 本芝公園
「まず最初の公園はここです」
「けっこう広い。懸垂スポットは……あれですね!」
「日都産業の『パラレルハンガー』です」
「名称がスッと出るのむちゃくちゃ格好いいですね。
ちなみに様々なメーカーの遊具ありますが、公園の鉄棒さんが一番やりやすいのはどこのメーカーの何になりますか?」
「狙ったような回答になってしまうのですが、懸垂だけでいうと日都産業のパラレルハンガーです。 懸垂したときにたわまず、安定している気がします。身長170センチぐらいであれば背伸びで届く高さもちょうど良いです」
「本当だ! 普段僕は雲梯(うんてい)で懸垂しているのですが、いつもより安定する気がします。あと電車が間近に見えるのも良いですね」
「あとはこの部分に、プロテインシェーカーを置いているサラリーマンがちらほらいます」

「おばあちゃんの知恵袋ならぬ、マッチョさんの知恵袋だ」
芝公園
「続いては東京タワーのふもとにある、芝公園です。ここには懸垂スポットが2箇所あるんです。
こちらの健康歩道は人気スポットのようで、YouTubeやInstagramで集まってトレーニングしてる動画をよく見かけます」
「こういう高鉄棒は、つかまったままぶら下がるだけでも背中や腰のストレッチ効果があるそうですね。懸垂なんてできないって人にも良いかも!」
「そうですね。あとこの公園には『年齢別の懸垂回数の標準値』が書いてある看板があるのですが、なんだか腑に落ちないんですよ……」
「これかなりハードル高くないですか!? 60歳になっても楽々4回できるおじいちゃんでありたい……」
「あ! 見てください!
この遊具についている三角形が3つ重なったようなマーク、これが日都産業のロゴです」
「これが公園の鉄棒さんイチオシの、日都産業! 公園に来るときは、意識して探してみようかな」
「芝公園2箇所目は、大通りからは階段を上がらないと見えない場所にある、あまり混むことがない穴場スポットです」

▲東京タワーがどーーーん!!
「東京タワーがこんなに間近に! ふもとで懸垂できるの、よく考えたら贅沢だなあ」
「こちらにある遊具は、日都産業の『懸垂平行棒』です」
「バーと吊り輪の懸垂は、鍛える部位が違ってくるのでしょうか?」
「自在に動く2つの吊り輪で行う懸垂を『パーフェクトプルアップ』と呼ぶそうです。バーでの懸垂に比べて、広背筋をより鍛えられるみたいです」
「吊り輪だと不安定な分、トレーニング効果も高いのですね。
そして、なんて絶景なんだ……」
「自分自身を腕の力で持ち上げながら眺めるこの東京タワーは、六本木のタワーマンション高層階でワイン片手に眺める夜景より美しい。そうに違いない」

▲2つの公園の場所はこんな感じ
「この絶景懸垂スポット(のびのび広場)は、ぜひ多くの人に体験してほしいです」
新宿区立 八幡公園
「3箇所目は新宿区立八幡公園です。ここには様々なトレーニングができる、日都産業製の複合遊具トレーニングステーションがあります。公園遊具界の王です」
「王……!? 期待が高まります」
「これが日都産業のトレーニングステーションです。公式HPでは『あなたのトレーニングジムです』と書かれています」
「ゾクゾクしますね。この遊具が近くにあれば本当にジムは必要ないかも」
「では、どうぞ」
「はい!!!!!」
「懸垂だけで3種類選べるなんて……トレーニングステーション、控えめに言って最高です。ここの年パスがあればほしい」
さぁみんな!懸垂に心酔しよう!!
「本日いろいろ案内していただき、ありがとうございました! この記事を見て家の近くの公園に懸垂しに行く人が増えると思います!
最後になにかメッセージがあればいただけると嬉しいです」
「公園で筋トレをしている大人は恐がられる可能性があると思うので、マナーにはぜひ気をつけてください。
交代で遊具を使えるように、インターバル(休憩)のときは遊具から少し離れて専有しないようにしましょう。
また、お子さんが遊んでるときは遠慮する、などの気遣いが大事だと思っています」
「健全な肉体に健全な精神が宿ると言いますが、公園遊具での懸垂で、マナーや気遣いも学んでいければ最高ですね!
みなさんも是非すてきな懸垂Lifeを!!」
後日談
公園の鉄棒さんがさらに遊具の分類を細かくするために、新たなアイテムを手に入れていた。
これで、次のような曖昧表現を、なるべく減らしていく予定。
・スプリングバー(低め)
・高鉄棒(ただし膝を曲げないといけないぐらい)
・子供用遊具の雲梯だが やたら高い— 公園の鉄棒 (@pull_up_bar) October 10, 2021
サイトはますます進化していきそう。また、新たな鉄棒情報があれば「懸垂のできる公園リスト」にぜひご連絡を!
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