飲み会では、面と向かって腹を割ってコミュニケーションをとるのが良しとされている。いわゆる飲みニケーションだ。
逆に飲み会の場でスマホばかりいじっていると「あいつはマナーがなってない!」「失礼なやつだ!」なんて陰口を叩かれることも。
それなら逆に、飲み会でオーラルコミュニケーション(口頭での意思伝達)を一切禁止したら、いったい何が起こるだろうか?
今回は、会話禁止の『無言飲み会』というものを開催してみた。結論からいうと、予想に反してかなり盛り上がった。
この記事ではその一部始終をお届けする。
目次
無言飲み会 概要
ルール
- 乾杯するところからスタート(入店時から無言だとさすがに店員さんに迷惑なので)
- スタート後2時間は一切のオーラルコミュニケーション禁止
- スマホを用いたコミュニケーションはOK
- ジェスチャーもOK
参加者紹介

飛び火:
特殊な性癖の持ち主。普段の飲み会では会話にうまく入れなくて会場の隅で震えながらハンドスピナーを回している。無言前提と聞いてウキウキで参戦。Twitter

惰眠を貪る:
普段から会話の輪に混ざれず無言。話さずに人と飲める飲み会があると聞き、満を持して参加。Twitter

じきるう:
無言飲み会の主宰であり筆者。普段の飲み会では隅っこの方で静かにスマホをいじっているタイプ。今回は無言飲み会ということでテンションが上がりダブルピースしている。Twitter
3人ともスマホが大好きな、クセの強い現代っ子だ。
今日は飲み会で思う存分スマホがいじれるぞ! やったー!(全員真顔なのが気になるところだが)
今回の会場

今回の無言飲み会の会場は、みんな大好き『鳥貴族』。
鳥貴族はタブレット端末での注文方式を採用しているため、店員さんに話しかける必要がない。無言飲み会にはうってつけの場所なのだ。
なお、同じビルの2階には『やきとりセンター』が入居していた。都内ではよく見る組み合わせである。
乾杯で変な空気が漂う

開始前に記念写真。なぜか全員真顔
参加者が揃ったところで、さっそく乾杯。
※ 以下、( )内はすべてLINEでの会話です
(かんぱーい!)
(かんぱーい!)
(🍻)
(無言の乾杯、シュールすぎるやろ。爽快感が皆無)

3人とも乾杯の様子を写真に撮る。普通の飲み会ではあまりみられない光景かもしれない
(乾杯の瞬間、みんなスマホいじってて笑う)
(なんだこの飲み会)
(あとで「集まったの失敗だったな」って思うオフ会の感じがする)
(無言だとどう盛り上がっていいか分からないな。早くも辛い)

みんなスマホをいじっているせいか、何かと写真を撮りがちになる
(静かすぎる)
(週末に家にいる時とほぼ同じ感覚)
(俺一人暮らしだけど、家にいる時の方がまだ賑やかだぞ)

コミュニケーションをとるためにスマホをいじる
(飲み会の端っこの方によくいる人たちみたいな図になってしまう)
(それなんだよな。何も間違ってないけど)
(コミュニケーション弱者に優しすぎる飲み会。LINEなら全員会話に混ざれるし)
(てか店員さんがいま不思議そうな目でこっち見てたよ)
(草)

無言でもちゃんと「いただきます」する惰眠くん。育ちが良い
(いただきますが無言でもできるの素晴らしい)
(育ちがいい)
(いいねえ〜)
(口頭での会話が0だから、自然と食べるのが10になっちゃうな)
(ボクの場合、スマホいじるのに熱中しちゃって逆に食べるペースが遅くなっちゃう)

LINEでは無限に写真が送られてくるシーンが散見される
(目の前に人がいるのに、本人を直接見ないで撮られた写真ばっか見てるの、すごく変な気分だな)
(ほんとだ、相手の顔ぜんぜん見ない。みんなスマホばっか見てるから……)

会場の鳥貴族はタブレット注文なので、店員さんに話しかける必要がない。無言飲み会に優しい設計
(無言だと何話していいか分からなくなってくるな……。いや、無言だからそもそも話してないのだけれど)
(矛盾?)
(まだ30分しか経ってないのか……2時間耐えられるかかなり不安)
(身体中に発疹できるんじゃないかって気がしてきた。喋りたくてムズムズする)
(リアルな飲み会なのに全てが仮想。バーチャルオフライン飲み会)
(バーチャルオフライン)
(わけがわからない)
(矛盾も甚だしい)
徐々に無言に適応し始める3人
〜〜♩店内でパリピな音楽が流れ出す♩〜〜
(さっきから店内のBGMが中学校の体育祭みたいで辛い)
(確かに。こういう曲で徒競走とかした記憶ある)
(体育祭……辛い記憶が蘇る)
(てか、今年まだ夏っぽいこと何もしてないな。無言飲みなんかしてる場合じゃない……)
(浴衣着てヨーヨーぶら下げるやつやってない)
(プールでおしっこするやつやってない)
(それは夏じゃなくてもやるな)

一見盛り上がっている風の卓だが、ここまで全員無言である
(ここまでみんな無言でいられるの、けっこうすごいと思うよ)
(意外といける。そしてもう二人のこと見えてない。LINEのアイコンしか見てない)
(それ。アイコンが現実)

リアルは虚構。アイコンが現実
無言飲み会ならではのメリット
(あっ、そういえば酒が全然進まない。なんでだ……? 普段ならこの時間に2,3杯くらいはいってるのに)
(喋らないから喉が乾かない)
(それだ!!!!!!!!)
(もしかしたら無言飲みって、コスパいいのかも)

チャンジャ
(ところでこれ何ですか? 脳?)
(チャンジャ。タラの胃腸を塩辛く漬けたやつだったはず)
(×脳 ◯腸 か〜。美味しい)
(確かに美味しいね)
(やったー! チャンジャはボクの好物)
(腸好き編集長・じきるう)
(サイコパスっぽい感じにするな)
(腸好きってなんかエッチだな)
(エッチか…………????)
(えっ、エッチじゃないのか……?)
(あ、確かにアナ◯◯◯ックを腸と捉えるなら、エッチなのか……? なるほど)
(なるほどじゃないよ)
(てか文字ベースのコミュニケーションだと、伏せ字が使えるのが便利だな)
(文字だと直接的なエロ単語も言いやすいですね)
(まあ普段から言ってるんだけどね)
無言飲み会ならではのデメリット

積み重なった焼き鳥皿
(回転寿司みたいになってきたな)
(いっぱい食べたね)
(無言だから、店員さんに「下げてください」って言えない)

飛び火さんがわざわざ画像を作ってくれた
(これでいこう)
(店員さん、どんな反応するだろう……)
(ここまで無言だし、店員さんも察してくれる)

画像を見せるまでもなく、店員さんが察して焼き鳥皿を下げてくれた
(店員さん、無言で下げてくれた)
(店員さん、気が利いちゃった。さすがに慣れてきたな)
(俺の出る幕はなかったというわけだ)

鳥貴族の「キャベツ盛(280円)」はおかわりし放題。ただしタブレット注文ではなく、店員さんに直接お願いする必要がある
(あっ、しまった! 言葉を発せないからキャベツのおかわりが頼めない……!)
(今度こそ、画像でいこう)
(または手話で行こう)
(店員さん、標準で手話できるのか?)
(さすがにチャレンジングすぎる)

自前のiPadに「キャベツおかわりお願いします!」と書いて店員さんに見せた

結果、店員さんに伝わりキャベツ盛のおかわりをゲットした。ありがとう店員さん
(頼めちゃった)
(面白すぎる)
(察してくれた店員さん、ありがとう……)
発作が出始めるメンバー
(あのさ、いま思っていること言っていい?)
(あい)
(どぞ)
(喋りたすぎて手が震えてきた。助けてくれ)
(Oh…… 人は言葉を発する生き物だからな)
(その震える手で焼き鳥連打注文)
(禁断症状が出始めている。人を殴りたくなってきた)
(急にサイコパスぶっこむのやめろ)
(殴話 ”なぐりわ” で店員さんにキャベツ要求して)
(ダメです.)

殴られる惰眠くん。ちょっとうれしそう
(けっきょく殴られる惰眠くん)
(フルコンボだドン!)
(ありがとうございました。またお願いします)
(惰眠くんがうれしそうで何よりです)

殴ったことに対して無言で感謝する飛び火さん。それに対してLINE上で許す惰眠くん。現実は真顔である
無言飲み会、まさかの延長戦へ
(あ、ちょっとお手洗い行ってきます)
(いってらっしゃい!)
(LINEでの会話なら、「お手洗い行って戻ってきたら話題変わってた……」ってこともなくていいですね)
(お手洗い勢にも優しい世界)

記念写真を撮ったら惰眠くんがホラーな感じになってしまった。無言だから余計に怖い
〜〜無言飲み会開始から2時間経過〜〜
(あ、てか今ちょうど2時間経ったわ)
(おっ)
(でも正直、まだいけますね)
(最初、2時間って聞いた時にけっこう不安だったんだけど、わりとあっという間だったな。この辺は普通の飲み会と同じ感覚)
(ですね。なんの苦もなかった。ちょっと禁断症状が出たくらいで)
(飛び火さん、すごい苦しそうだった気が……)
(どうするか、20分くらい延長する?)
(そうしましょう)
(了解! 20分後言語解禁ッ!)
無言飲み会終了。声の出し方を忘れる
〜〜飲み会開始から2時間20分経過〜〜
(あ、2時間20分経ちました。終わりましょう)
(お、解禁かな)
(……あれ、どうしよ、声の出し方忘れた)
(急に喋って良いって言われても、どうすれば……)
(人間ってもう、喋らなくても生きていける生物になれたのかもしれない)
(文明の利器のおかげて、ネクストステージへ進化したってわけか)
(進化なのか、退化なのか)

無言で突っ伏す飛び火さん
(この2時間超の沈黙、厚すぎてそうそう破れない)
(声解禁から早くも5分が経つ。誰も喋り始めない)
(かくなる上は……)

「王様だ〜れだ!?」と叫ぶ惰眠くん。突如静寂が破られた
※ ここから声解禁
王様だ〜〜〜れだ!?
?!?!??!?!?!
この国は民主主義だから、王様なんていないよ!
クッソワロタwwwwwww急に叫ぶなwwwwwwww
びっくりしたwwww本当にびっくりしたwwwww
無言飲み会を終えて
無言でもぜんぜん問題なかったね! 楽しかったー!
いま店員が「(こいつら遂に喋り始めたぞ……!)」みたいな顔してこっち向いてた
草

無言飲みが終了してもなお、スマホへ戻っていく3人
(そしてみんな、スマホへ帰っていく……)
(スマホでの会話に慣れすぎてしまった)
(実家のような安心感)
(みなさん、今回『無言飲み会』をやってみてどうでしたか?)
(全員が無言の異常さに最初は戸惑ったものの、本当に最初だけでしたね。今回は参加者が全員顔見知りだったので、初対面の人限定で開催したらまた違う面白さが味わえるかもしれない)
(後半禁断症状が出たけど、LINEとTwitterで意思表示できたからそんなに問題なかったね。喋るの我慢するのはムズムズしたけど、それがむしろとても良かった。またやりたい。癖になる)
(ぶっちゃけ最初の30分くらいはかなり不安だったし時間が長く感じたけど、一度慣れてしまったらもう抜け出せなくなってしまった……。タバコやドラッグの類と一緒。またやりたい)
……というわけで、無言飲み会は幕を閉じた。
結果として、参加者3名はインターネットの世界から帰ってこれなくなったわけだが、オーラルコミュニケーションを禁止しても飲み会は盛り上がることが証明された。
もし機会があれば、次回はもっと大人数かつ初対面の人もいれて開催してみたい。
そしてリアルの世界を駆逐し、みんなでインターネットに移住するのだ───。

隣にお客さんがこなくて本当に良かった
(執筆:じきるう)
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