最近、猫や犬などのペットを飼っている人たちがテーマの漫画をよく読む。
読み終わる度に、ペットと暮らしたらどんな感じだろうと想像してしまう。
しかし、ペット不可物件に住んでいるため、飼えない。
そこで、無機物をペットにすることにした。
無機物と暮らす一日
ペットにする無機物は、腕時計にした。ツルツルしていて、金属の冷たさを感じる。
そういうところが、いかにも無機物という感じがしたので、「これだ!」と決めた。
ペットなので、もちろん名前をつけた。名前は「とけい」だ。
ではさっそく、「とけい」と一緒に、一日を過ごしてみよう。
[朝]
腹に飛び乗り起こそうとしてくる
人間のごはんに興味をもつ
朝、起きると、かけたはずの布団がめくれている。
そこに、カチャ!という音。
音がしたところを見たら、腹の上に「とけい」がのっていた。
「とけい」は、腹の上で「起きろよ〜」と暴れ回っている。
カチャカチャと金属音を立てる、「とけい」。そのまま腹にのせると、「いるなー」という感触が服ごしに伝わってくる。
呼吸で腹が上下しても同じところにいるのが、まるで愛するペットが自分の腹で落ち着いてくれているような嬉しさがある。
起きるときに、「とけい」を持ち上げた。
手に乗せてみると、意外と重みがある。しばらくすると温かくなってきた。
時計特有のカチカチ音が、まるで生き物の心臓のように規則正しく響く。
ある程度重みがあって、心臓(?)の音がして、温かいときたら、もうこれはペットだ。
そのあと、朝ごはんを食べる。
「とけい」がこちらを見ている。たぶん人間のごはんが気になるのだろう。
……めちゃくちゃ視線を感じながら食べた。
[昼]
パソコンのキーボードに居座る
いっしょに散歩する
しばらくして、作業のためにパソコンを開く。
少し席を立って、戻ったら、「とけい」がちょこんとキーボードの上にいた。
なかなか動こうとしない。たぶん、ここが気に入ったのだろう。
「とけい」の体はかなり小さいので、このまま作業できるといえばできるんだけど、せっかくくつろいでいるところを邪魔しそうな気がする。
うーん。困ったけど、気持ちよさそうだからいいか。
あきらめて、テレビ体操をすることにした。
「飼っているひとの健康まで気遣ってくれるうちの子かわいい」と、親バカになってしまった。
さて、一段落ついたし、「とけい」と一緒に散歩に行こう。
種類にもよるだろうけれど、ペットといえば散歩、というイメージがある。
というか、個人的にめちゃくちゃペットと散歩に行ってみたいと思っていた。
「とけい」は、なんと腕につけられる。
なかなかこんなペットはいない。やっぱりうちの子はすごい。
何度も通った道だけど、「とけい」と一緒にいると、いつもより楽しく歩けた。
ちなみに、あいかわらず人間のごはんに興味があるようで、昼ご飯のときもやはりじっとこちらの様子を見つめてきた。
そんな目で見てもあげないよ。人間のごはんは、「とけい」には合わないから。
……と言いつつ、後で「とけい」のごはんとして、日光浴をしてもらった。(「とけい」はソーラー式)
[夜]
布団を占領される
そのまま一緒に寝る
夜になった。寝よう。
夕飯でもやはりじっとこちらを見ていたことを思い出しつつ、布団に向かう。
すると、布団を占領されていた。
「とけい」がこうして布団をかぶっていると、「ここは俺の陣地」「飼い主が寝ているところ=自分の場所」という感じが出ていて、いい。
人間ガン無視なのが、ペットっぽい。
布団の中に入り、「とけい」をそっと持ち上げて、腹にのせる。
自分はスマホを見ながら、「とけい」は腹に乗りながら、一緒にゴロゴロする。
一日中一緒にいたからか、ちょこんと腹の上にいるのがめちゃくちゃ安心感ある。
でも、もう寝るので、惜しいけど元の位置に戻そう。少しさみしいけど、明日も一緒にいられるもんな。
おやすみ、「とけい」。また明日ね。
……と思ったら、なかなか動いてくれないので、脇で一緒に寝ることにした。
そういうところもかわいいんだよな。
無機物はペットになり得る
冒頭で述べたように、ペット不可物件に住んでいるので、今までは豆苗に名前をつけるなどして過ごしていた。
しかし今回、「無機物がペットって、めちゃくちゃありだな……」と、気づいた。むしろ、なぜ今まで気がつかなかったんだろう?
もちろん「とけい」は、ぜんぶ自分でペットっぽく動かしてるのだが、それでもアリだ。
まだ一日しか一緒に過ごしていないけれど、すごく愛着がわいたし、特に何もない日常を過ごしただけなのに、「とけい」といるだけで楽しかった。
無機物だって、ペットになり得る。
「無機物ペットショップ」が流行る日も近いな。
(執筆:こたろう)