以前こんなことがあった。
勤めていた会社のイベントで、昼食に手作りのおにぎりが振舞われたのだ。
当日はおおぜいのひとが参加しており、バックヤードのおにぎりがあるテーブルにみんな殺到していた。たしかに、その気持ちはわかる。おにぎりはおいしい。
しかし、このありさまでは後からくるひとの邪魔になるだろう。テーブルのまわりに大のおとなが10人も15人もたむろしているのだ。
そこで気を利かせたわたしは、おにぎりをふたつ手に取り、離れたところで食べていたのだ。
だが、おにぎりを両手に持っているわたしの姿が、会社のひとたちには相当おもしろおかしく見えたようだ。それはもう、えらい勢いで爆笑されてしまったのだ。そんなつもりはなかったのに。ああ恥ずかしい。
だが、たしかに冷静になってかんがえてみたら、わたしのようなぽっちゃり体型の人間が両手におにぎりを持っているさまは、それだけでおもしろい。おなじ食べものを両手で持っているところも、あたまがわるそうに見えて良い。
では、おにぎり以外の食べものではどうだろうか。ほかにも、両手に持つとばかっぽく見える食べものがあるんじゃないだろうか。
今回はそれを実験してみたいと思う。
1. おにぎり
まず試してみたのは、きっかけとなったおにぎりだ。
いったいどれくらいばかっぽく見えるのか。これがすべての基準である。
まずはシンプルに両手におにぎりを持った状態で写真を撮った。「こいつはまたずいぶんと食いしんぼうさんだな」といったおもむきがある。目線がおにぎりのほうに行ってしまったのは本能のなせるわざだ。
この時点でどことなくばかっぽく見えるのだが、もう少し動きをつけてみることにしよう。
うれしさを顔で表現してみたところ、ばかっぽさが上がった。いますぐおにぎりを丸飲みしそうないきおいがある。
おにぎりを両手に持ってはしゃぐ写真を撮った。おそらく会社のひとたちにはこのように見えていたのであろう。
たしかに、とてもあたまがわるそうだ。人間というより、動物が本能で動いているようにも見える。
しあわせが高まった結果、ジャンプをしてよろこびを表現した。
友人からは「浮遊している」「よくわかんないけどしあわせそうでよかった」「頭はわるそうだ」といった感想が集まった。
頭のわるそう度:★★★☆☆
動物にしか見えない度:★★★★★
2. カップラーメン
「両手に持ったときに頭がわるそうに見える写真を撮ろう」と考えた際に、最初におもいついたのがこれだ。
いったいどれだけ頭がわるそうに見えるのだろうか。
これはばかっぽい。とても頭がわるそうだ。
友人からは「ハシを持てないのに、こいつはどうやって食べるつもりだ」「ラーメンも飲みものということなのか」「 ””置く”” という概念を知ってほしい」という意見が出た。
いや、ばかっぽさというよりも、もはや狂気の域である。
ひとは自分の理解を超えたものを見たときに恐怖を感じるという。まさかカップラーメンを両手に持つことで、こんなにかんたんに向こう側に行けてしまうとは思わなかった。
こんなやつを街で見かけたら、わたしならダッシュで逃げるとおもう。お湯の入ったカップラーメンを両手で持つ人間とは、なにかを分かり合える気がしない。
「そのまま一気飲みしそう」「右手のカップ麺を飲んで、チェイサーに左手の麺を飲む」「ひょっとしてサイコパスなのだろうか」。
友人からの意見もちょっと様相が変わってきた。ばかっぽさも強いが、それ以上に狂気がにじみ出る結果となってしまった。
頭のわるそう度:★★★★☆
それ以上にやばそう度:★★★★★
3. 缶チューハイ
続いて用意したのは缶チューハイ。
食べものではないが、ばかっぽさとだめっぽさがどういうバランスになるのか興味があった。
あっ、これはだめなやつだ。おなじ笑顔でも、カップラーメンの時とはまた違って見える。
明らかに「こいつは全部飲み干すんだろうな」という感が見える。
「ばかっぽさが消えた」「リアルなだめさを感じる」「部屋の中で空き缶が山になってそう」という意見が口々に出た。
カップ麺を両手に持つひとはいないと思うが、チューハイだと「こういうひと、もしかしたらいるかもしれないな」という妙なリアル感が出るのだ。
ひとに手渡したようなショットを取ったら、とたんにふつうのひとになった。
やはり「ひとりで」「両手で持つ」ことが、違和感の重要なポイントであることが改めてわかった。第三者の存在はばかっぽさを消す。はいここテストに出ますよ。
頭のわるそう度:★☆☆☆☆
とにかくだめそう度:★★★★★
4. 唐揚げ棒
セブンイレブンでわたしの大好きなホットスナックランキング永遠の1位、唐揚げ棒を買ってみた。
ちょっと豪勢に3本持ってみたが、はたしてどうなるだろうか。
「優勝」「ほんとうに頭がわるい」「むしろ頭のいいゴリラ」といった意見が出た。
これは頭がわるい。IQが3くらいしかなさそうである。
1本税込み123円の唐揚げ棒を3本持つことで、ばかな写真が撮れるという事実が明らかになった。
今までのおにぎりやカップ麺とは違って、唐揚げ棒はまったく同じものだ。
迷いようがないのに迷っているというところが、どうしようもなくばかである。
たとえカッコつけたポーズをしてみても、唐揚げ棒3本ですべてを台無しにできる。
若人よ、ばかな写真を取るために冷蔵庫に入っている場合じゃない。今すぐに唐揚げ棒を3本買うべきだ。そして無駄にせずにちゃんと食え。
人生を無駄にせずとも、わずか369円でばかな写真は撮れるのだ。
この世のなかでいちばんいらないGIF画像ができた。あんまし見てると夢に出ますよ。
想像以上にばかっぽい写真が撮れた。これはもう優勝決定か。
頭のわるそう度:★★★★★
2本で充分かもしれない度:★★★★★
5. カツサンド
最後に控えるのはカツサンド。おにぎりの洋食版とでもいうべきサンドイッチの王様だ。はたして唐揚げ棒に勝てるのだろうか。
「サンドイッチはサラリーマンが食べてそう」という理由でスーツに着替えた。
両手で食べものを持っているサラリーマンは、仕事ができなさそうだ。
「鞄を毎日なくしていそう」「上司への返事に『はいでしゅ』とか言ってそう」「リストラされたのに気づかず会社に来そう」などどいった声が上がった。
「というか、これもうリストラされてるよね?」「家族に言い出せずに公園に来ている」「リストラの原因がカツサンド」など、さんざんな言われようだった。
ちょっと哀愁の感じる結果になってしまったが、それはスーツのせいだということにしておこう。
頭のわるそう度:★★★☆☆
リストラされたお父さんに見える度:★★★★★
いちばんばかっぽく見える食べものは……?
さて、両手で同じ食べものを持って写真を撮ると、頭がわるそうに見えるということがお分かりいただけただろう。
そして今回比較してみた5品のなかで、いちばん頭がわるそうに見えたのは、やはりこの「唐揚げ棒」だろう。
みなさまにおかれましても、今後ばかっぽい写真を撮りたい需要がありましたら、その際はぜひ唐揚げ棒3本を両手に持っていただけたらとおもいます。
きれいな写真を撮るのもいいけど、ばかな写真を撮ってみるのもたのしいものですよ。
(おわり)
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