食欲や読書、スポーツなど~の秋といわれる由来は多くあるが、僕の中では「キングオブコントの秋」だ。
10月8日(土)に8時間生放送で行われるお笑いの日のトリを飾り、コント日本一を決めるこの大会が楽しみでしょうがない人も多いだろう。
2021年度のチャンピオンは、空気階段。
1本目のコントは1stステージ歴代最高得点。後世に語り継がれるべきものだった。
そんな中で僕が一番痺れたのは、コント前の芸人紹介(煽りV)だ。
もぐらさんの「今まで負けてばっかりの人生でしたけど、今日1回勝ってチャラにします」という言葉、バックで流れるthe pillowsの名曲『Funny Bunny』、そして「ダメ人間の人生逆転劇場」という空気階段へのキャッチコピー。全てがカッコよかった。
コントを始める芸人の魅力・特徴を端的に伝えるキャッチコピー。キングオブコントは今年で第15回だが、芸人のキャッチコピーは第11・12回を除き、全ての回にある。
これらを調べることで何らかの傾向を発見し、よりキングオブコントを楽しむことができるのでは……?
僕の中でのキングオブコントがひっそりと始まった。
目次
歴代芸人108組のキャッチコピーを分類してみる
まずは開催年順に、キングオブコント ファイナリストのコンビ名・キャッチフレーズを整理してみた。歴代芸人のキャッチコピーを見てもらいたい。
「〇〇年のこのコンビのネタが面白かったんだよな~」と過去の大会を思い出した人、今度語りましょう!
この表を見ているだけでも楽しいが、今回の本題は歴代キャッチコピーから何らかの傾向を探ること。そこで表に「分類」という欄を作り、108個の芸人キャッチコピーを独断と偏見で12のパターンに分類した。
どうでしょう?
これらのパターンを頭の片隅に置きつつ自身の好きなキャッチコピーをもう一度見てほしい。確かに!と思ってもらえたら、とてもうれしい。
複数のパターンに該当するキャッチコピーも多い。例えば2014年のバンビーノは3つのパターンに該当する。
ちなみにどのパターンのキャッチコピーが多いかを調べると、以下のような結果に。
これまでのキャッチコピーは芸人やコントの特徴でつけられることが多そうだ。さぁ、まだまだ色んな角度からキャッチコピーを見ていこう。
歴代芸人キャッチコピーを品詞ごとに分解し、頻出ワードを探ってみる
次はキャッチコピーを品詞ごとに分解し、その傾向を探っていく。
昔、全国300校の中学校校歌で使われている頻出ワードを31時間かけて力技で調べた人がいたみたいだが、あいにく僕はそんなに暇じゃない。
ネットの大海を調べると、KH Coderというツールを使えば頻出単語の回数や単語同士の関連性まで分析することができるようだ。
使い方は簡単。キャッチコピーをメモ帳にコピーして、KH Coderに取り込むだけだ。
すると以下のように、頻出単語を自動で品詞ごとに分けて集計結果を出してくれる。
当たり前っちゃあ当たり前だが、頻出単語第1位は「コント」。ではコントの前後にはどんな単語がくっついているのかを調べてみよう。
コントの前には「若き」「無限の」など、コントの後ろには「職人」「魂」「製造マシーン」など、コント師の特徴を表す単語が多かった。これは芸人パーソナルやコントスタイルの分類が多いことにも繋がる。
最後にもう一つ。キャッチコピー内の単語と単語がともに出現しやすい関係を表す、共起ネットワークという図を見てみたい。
この図を見て、みなさんもそれぞれ思うことがあるだろうが、僕は以下のような感想を抱いた。
この図を見て気付いたが、芸人キャッチコピーでは「浪速」と「浪花」という、2種類の「なにわ」が存在している。
調べると「どちらも大阪のことを指す」「字が違うだけで意味は一緒」「難波もあるぞ」などさまざまな解釈があったが、面白かったのは「浪速」=大阪の街全体を指す、「浪花」=大阪市中央区辺りを指すというもの。
「浪速のエース」だと県の代表、「浪花のエース」だと地区代表のようなスケールになってしまうから不思議だ。
さて、さまざまな分析手法を使ってキャッチコピーを見てきたが、現段階で分かっていることは以下の2つ。
ここからさらに傾向やおもしろを探っていきたい。
歴代芸人キャッチコピーを調べて分かったこんなこと・あんなこと
傾向❷ 4回以上ファイナリストになったコンビのキャッチコピー、単調になりがち
2022年で15回目となるキングオブコントの歴史で、決勝に4回以上進んでいるコンビは7組いる。
ザ・ギース、TKO、しずる、ジャルジャル、さらば青春の光、ジャングルポケット、GAGだ。
このうち4回以上キャッチコピーがあるのはTKO、しずる、ジャングルポケット、さらば青春の光の4組(第11回・12回はキャッチコピーがなかったため)なのだが、回数を重ねるごとに「出場回数」や「悲願の優勝」に焦点を当てたキャッチコピーになりがちなのだ。
まずは4組のキャッチコピーを見てほしい。
- TKO
2008 全国区 5回目の正直
2010 芸歴19年! 驚異のチャレンジャー
2011 芸歴20年! 不屈のアラフォーファイター
2013 獲るまで辞めねぇ! 不屈のアラフォーファイター- しずる
2009 静かなる技巧派コント職人
2010 玉座奪還 狙うはNo.1
2012 三度目の正直! キングを狙うリベンジャー
2016 4度目の正直! 見てろ! 親父はキングになる!- ジャングルポケット
2015 クドさ全開! 演劇トライアングル
2016 王座を狙う! 演技派コント三銃士!
2017 目指せ! 悲願のウイニングラン
2020 体育会系 宇宙系 劇団系- さらば青春の光
2012 浪速の通天閣ルーキー
2013 ドン底から王者へ! 無所属ファイナリスト
2014 3年連続ファイナリスト! 我が道を行く雑草コンビ
2015 史上初4年連続出場
2017 最多5度目の決勝! 悲願のキングへ
どうだろうか?
ジャングルポケットだけはやや毛色が違うが、それ以外のコンビは前年キャッチコピーの踏襲や出場回数や悲願の優勝、にスポットが当たっている。
だんだんとそのコンビに対して書くことがなくなってきたのだろうか…いや、それだけキングオブコントのファイナリストになるのは凄いことだと伝えたいのだろう。
傾向❸ キャッチコピーのない「空白の2年間」前と後でキャッチコピーの傾向大きく変わりすぎ
ここまでにも少し触れたが、第11回(2018)および12回(2019)のキングオブコントでは芸人キャッチコピーが存在しなかった。
つまりキャッチコピーという視点で見ると「空白の2年間」なのだ。
この空白の2年間の前と後で、キャッチコピーの傾向は大きく変わっている。
まずは下表を見てほしい。
このことから「空白の2年間」後はキャッチコピーの担当者か方針が変わり、その芸人のコントスタイルをしっかり把握してキャッチコピーを決めている可能性が高いといえる。
TBSの関係者の皆さん、どういう経緯でここまで方針がガラッと変化したのか、僕にだけこっそり教えてほしい。
そして、この傾向が今年度も変わらず続くのか…注目だ。
おもしろ❷ キャッチコピーの当て字、クセが凄い
ここからはおもしろ。第6回(2013)から第10回(2018)までのキャッチコピーには、「本気と書いてマジと読む」ような、当て字が使われたものがいくつかあった。
例えば「大穴と書いてダークホースと読む」「無所属と書いてフリーと読む」…といった具合だ。
その中で、この当て字はクセが強いな〜と感じた2つのキャッチコピーを紹介したい。
藤崎マーケットの「一発屋と書いてラララライと読む」のは漢検1級の人でもできないはずだ。
ただ、数多くいる一発屋の中で自身のネタが一発屋の読みをゲッツするなんてチッキショーと思う芸人や、ふてくされてそんなの関係ねぇと負け惜しみを言う芸人もいるはずだ。この名誉をなんでだろうと思わず、また右から左へ受け流さず、誇ってもらいたい。
巨匠の「借金王と書いてクズと読む」のも、なかなかにパンチが効いている。キングオブコントでは借金など、芸人のダメさをキャッチコピーにしがちである。
おもしろ❸ 芸人愛溢れる!電気とデニムが選ぶ秀逸キャッチコピー
最後に勝手ながら、僕が秀逸だと感じたキャッチコピー5つを皆さんにお伝えしたい。
みなさんも全芸人キャッチコピー一覧から、自身のお気に入りキャッチコピーを選んでみてほしい。それを考える時間から、もうすでにあなたのキングオブコントは始まっているのだから…。
2022年の芸人キャッチコピーを予想してキングオブコントを楽しもう!
この記事が世の中に出ているころには、キングオブコント放送日が近づいているだろう。
今回、みなさんに伝えたこの傾向…これを活用して、ぜひみんなで今年のファイナリストのキャッチコピーを予想してもらいたい。
全員分は難しかったが、僕も数組の予想を行ってみた。
こんな風に、キングオブコントが始まる前から楽しむ方法はいっぱいある。遠足のおやつを300円以内で選んでた前日のあのワクワクした気持ちを思い出して!
そして当日のキングオブコント、みんなで楽しみましょう!!! では、次回はM-1グランプリのキャッチコピー傾向分析でお会いしましょう。
(執筆:電気とデニム)
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