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初対面の人と趣味の話になったとき、僕は「ヒッチハイク」と答える。
奇をてらい、食いついてほしい気持ちはゼロではないが、本当にヒッチハイクは楽しい。
初めてヒッチハイクを行った大学時代から通算すると、100台近くの車に乗せてもらい、100人以上の個性的で素敵な人々に出会ってきた。
ヒッチハイクの魅力をお伝えするとしたら「思いもよらない素敵な出会いと、5分後に自分がどこにいるか分からないワクワク感」だと思う。
もっと多くの人にヒッチハイクの魅力やコツを伝え、チャレンジする人が増えてほしい…
ただ、普通に伝えるのもツマラない、なにかワクワクする伝え方はないだろうか?
これだ。ヒッチハイクの魅力を伝える『ヒッチ俳句』を詠もう。
俳句って「五・七・五」じゃなくてもいいんです
さぁ俳句を詠もうと思ったものの、僕は俳句の知識がない全くの素人だ(ちなみに短歌は短歌のWebマガジン『TANKANESS』へ何度か寄稿しております、また書きたい)。
そもそも俳句とは、五・七・五の十七音で作られる、世界一短い詩の形式とされる。そこに季節を表す「季語」を入れるというのが基本的なルールだ。
近年では『プレバト!!』で「俳句」才能ランキングなどテレビで取り上げられる機会も多く、前よりも俳句との距離感が近くなったひとも多いのではないだろうか。
恐らく大半の人の俳句のイメージはこの十七音の中に季語が入ったものだろう。
ただ、俳句には「自由律俳句」という別の形式も存在する。
五・七・五で季語を使うなどのルールはなく、自由なリズムで心情や情景を詠むものとされる。
諸説あるが、自身の感情をぶつける俳句としては、自由律俳句のほうが向いているらしい。
前置きが長くなったが、さっそく詠んでいこう。
今回は僕自身がヒッチハイクを行った写真を背景に1句詠ませていただき、詠んだ理由を解説していきたい。
ヒッチ俳句を詠もう
ヒッチハイクの魅力編

◆この句を詠んだ理由
これは大学時代、初ヒッチハイクで東京から福岡までたどり着き、再び東京へ戻る帰路で下関・壇ノ浦PAでの思い出。この場所があの『壇ノ浦の戦い』の壇ノ浦かぁ~とぼんやり思っていた。
ここで伝えたいヒッチハイクの魅力は、行き先や到着時刻の決まった旅行と異なり、いつ・どこにいるのか、その場所に何時間滞在するのか、なにも分からないところだ。
だからこそ、自分では旅先の選択肢として選ばない場所に行けたり、思いもよらない景色に出会えたりもする。
全てが偶然まかせの旅だからこそ、予期せぬ形で自分の価値観を広げることができるのはヒッチハイクの大きな魅力だ。
ちなみにこの壇ノ浦PAに到着したのが22時。次の車に乗せてもらったのが、朝6時。
8時間乗せてくれる車を探すこの時間は、僕らなりの『壇ノ浦の戦い』だったのだと思う。

◆この句を詠んだ理由
皆さんは初対面かつ、その日が誕生日の人の車に乗ったことはあるだろうか? 僕はある。
こちらは福岡で乗せてくれたお姉さんとのエピソード。車に乗ってすぐ「私、今日誕生日なんだ~」と一言。
僕が商店街のくじ引きで一度も一等賞を当ててないのはこの日のために運をためていたんですねと、神様に感謝できるくらい暖かい気持ちになる。
ヒッチハイクはこんな風に忘れることができない出会いの連続だ。
キャンピングカーを乗り回す社長さんに乗せてもらったり…
たったひとりで学校側の古いルールと戦う熱血中学教師の方に乗せてもらったり…
車内では少し変わった魅力的な人々との、濃密なトークを楽しむことが出来る。
一生接点を持つことのなかった人と、たまたまそのタイミングでヒッチハイクをしていたから出会う。素敵な時間だなと感じる。

◆この句を詠んだ理由
フットサルや映画鑑賞と比べると、ヒッチハイクはまだまだ市民権を得ていない、変わった趣味といえる。
そんな変わった趣味のヒッチハイカーを乗せてくれる人たちも、個性的で魅力に溢れた、変な人たちだと思う。
このヒッチ俳句の写真は、カズレーザーへの憧れそのままに、全身真っ赤な恰好でヒッチハイクをした筆者と友人Tの写真である。こんな怪しい2人組に「乗りますか?」と声を掛けるなんて、かなり勇気と好奇心が必要だろう。
乗せてくれたドライバーさんは良い意味で変わっている、魅力あふれる人だった。ヒッチハイク後に何度か東京でも飲みに行ったし。
もしドライバーさんがシャイだった場合、最初の会話のきっかけとして「なんで僕らを乗せてくれたんですか?」と質問するのがおすすめだ。この質問をきっかけに、ドライバーさんの考え方や過去の経験、体験談を聞くことができ、自然と会話が広がっていく。
ヒッチハイクのコツ編
ここまでの話を聞いて、すでにスケッチブックを片手に目的地を書こうとしている皆さん!
慌てないでほしい。ただ闇雲にスケッチブックを掲げても車は停まってくれないのだ。ドライバーさんには乗せたい気持ちがあっても、さまざまな事情で乗せられない場合もある。
実際、僕は横殴りの雨の中、高速道路の入り口で9時間ひたすら立ち続けた経験がある。びしょ濡れになり誰にも気づかれない中、涙とおしっこが少しだけ漏れてしまった。
是非、ここからはヒッチハイクのコツを聞いてほしい。

◆この句を詠んだ理由
心優しきドライバーさんがヒッチハイカーを見つけて乗せてあげたいと思っても、車を停められるスペースがなければ素通りするしかない。
コンビニの駐車場や、一時駐停車が可能なスペースなど、車を停められる場所が5~10メートル先にあることが、ヒッチハイクに適した場所を選ぶときの判断基準となる。
また、信号の近くなど、ドライバーさんがヒッチハイカーを発見してから「乗せようかな」と考える時間的余裕がある場所も効果的である。
ちなみに東京方面から西へ向かいたいヒッチハイカーには「東名高速道路東京インター」付近でのスタートをおすすめする。マクドナルドとスターバックスコーヒーが近くにあるエリアで、一部のヒッチハイカーからは聖地と呼ばれている。

▲グーグルマップより引用。「東名高速道路東京インター」付近なら、赤い線のあたりが筆者おすすめポイント
ヒッチハイクの成功のカギは、いかに高速道路に乗り、サービスエリアでドライバーさんに拾ってもらえるかだ。そういった意味でも、一般道から高速道路へ接続できる場所は、ヒッチハイクの基本のキであり聖地なのだ。
是非、初ヒッチハイクのスタート地点として検討してほしい。

◆この句を詠んだ理由
まだスマートフォンなんてものはなく、携帯電話が折り畳み式だったころ。折りたたんである携帯電話に、誰からメールが来ているか判別できるよう、着信ランプの色を変えることができた。
高校生の頃、好きな人からメールが来ると紫色が点灯するようにしていた僕は、風呂上りにランプが紫に光っているのを見ると、小躍りするくらいうれしく笑顔になったことを覚えている。
そのくらいの、自分の中の100%笑顔でスケッチブックを掲げてほしいのだ。
乗せてくれた人になぜ乗せてくれたのかを聞くと「笑顔だったし怪しくはなさそうだった」「笑顔で面白そうだと思った」と言われることが多かった。
ドライバーさん側は自分の車に全く知らない人間を乗せるのだから、少なからず不安はある。その不安を払拭出来るのは、マクドナルドよろしくとびっきりのスマイルだと思う。
ちなみに写真は屋久島での空港へ向かうためのヒッチハイク。掲げてから3分で乗せてもらえた(過去最速乗車タイム)という快挙を成し遂げた場所でもある。
現役ヒッチハイカーにもヒッチ俳句を詠んでもらう
ここまでは僕が思うヒッチハイクの魅力・コツを自由律俳句としてきたが、まだまだ世の中にはヒッチハイカーがいる。
そこで4名のヒッチハイカーにお声がけさせていただき、ヒッチハイクの魅力を自由律俳句として詠んでもらいました。
改めて、「ヒッチ俳句を詠んでください!」なんて意味のわからないお願いに対して快く引き受けてくれた4名の方、ありがとうございました!
では、早速見させてもらいましょう。

◆1人目
うみんちゅ。/SLOWHOUSEコミュマネ生さん◆ヒッチハイクでの工程
下関⇒東京(下関~広島~岡山~姫路~神戸~大阪~伊賀~名古屋~東京)◆この句を詠んだ理由
旅の道中で、拾ってくれる優しい人もいれば、拾ってくれたけど見返りを求めたり、宗教勧誘、性的暴行、etc...悪い大人もいる。ヒッチハイクでどんな人が拾ってくれるのか、まるでガチャガチャのように当たり外れがある。良い人と巡り会えるかは自分の運次第。
ヒッチハイクの醍醐味は、どこに行くか、いつ目的地にたどり着けるか分からない運任せな部分だと思う。幸いなことに僕は悪い大人や危ない目に会ったことがないが、そういったリスクを意識しておく必要がある。だからこそ、そんなリスクを乗り越えて良い人と出会えたときの喜びは格別で、ヒッチハイクならではの醍醐味なのだと感じる。

◆2人目
たくまさん◆ヒッチハイクでの工程
大阪〜福岡◆この句を詠んだ理由
ヒッチハイク中に「荷物少ないから乗せやすかったこと」と「楽しそうにしていたこと」と言われたため。
1時間くらいかけて拾ってくれる車を探すと思っていたが、早い時は5分で拾ってもらえて感動した。
「荷物が少ないから乗せやすい」という指摘は新鮮な発見だった。確かに乗車定員には限りがあるし、荷物が少ないかどうかは重要なポイントかも。
なお、僕も5分という短時間で乗せてもらえた経験があるが、『鎌倉パスタ』で美味しいパンが食べ放題だったときのように、嬉しさよりも「え、いいんですか?」という驚きのほうが大きかったな~。

◆3人目
白金励大/ワクワクを共有するアタオカ院生さん◆ヒッチハイクでの工程
①香川~栃木、②岩手釜石~栃木、③東京~栃木、④栃木~群馬~茨城◆この句を詠んだ理由
スケッチブックがどのぐらい見やすいか、ドライバー目線になったときに、どこにいきたいかが認識できるかどうかがポイントです。
そして、そのスケッチブックを自信満々に掲げることができるか、笑顔でドライバーに見せることができるかが、乗れるか乗れないかの分かれ目。
レースクイーンのように、堂々と見せていくべきなので、このように詠みました。
レースクイーンのように堂々と見せる…なんて素敵な表現なんだ。この句は僕が詠んだ「着信ランプの色が紫だったときのような笑顔」と同様に、笑顔の大切さを伝えているように思う。なお白金さんの写真は、2024年~2025年の年越しヒッチハイクの思い出で、茨城県大洗まで旅をして見た初日の出だそうだ。こういう冒険、最高ですよね。

◆4人目
Kota Fujimotoさん◆ヒッチハイクでの工程
①大阪~福岡、②奈良~横浜、③東京~秋田、④東京~仙台、⑤東京~鹿児島、⑥神奈川~高知◆この句を詠んだ理由
・掲げればその数だけ一期一会
→スケッチブック、親指を掲げないと始まらない。それがヒッチハイクの醍醐味である一期一会の出会いに繋がる。
・親指と好奇心に身をゆだねて
→親指を羅針盤に見立てて、好奇心を信じて旅を進める。そんなヒッチハイク旅。
親指と好奇心に身をゆだねて…これまた良い表現だなぁ。Kota Fujimotoさんが言うように、好奇心を持ってスケッチブックや親指を掲げるだけで、予期せぬ一期一会があり、とんでもなく世界が広がっていく。あぁ、ヒッチハイク旅がしたくなってきたなぁ。
さぁ、スケッチブックと親指を掲げよう
趣味としてのヒッチハイク、少しは皆さんに伝わっただろうか?
もちろん、知らない人の車に乗ることには危険が伴うからこそ、十分な注意が必要だ。しかし、これまでお伝えしてきたように、ヒッチハイクには予期せぬ出会いや場所との出会い、そして自分の価値観を広げられる素晴らしい体験が待っている。だからこそ、一人でも多くの人にヒッチハイクのワクワク感を体験してほしいのだ。
それでは、どこかのSA(サービスエリア)でお会いしましょう!ではでは。
(執筆:電気とデニム)
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