毎度ありがとうございます、じきるうです。
2018年9月8日、明治大学で行われた『ABPro 2018(アブプロ2018)』に参加してきました!
ABProは明治大学の宮下研主催の”普通じゃない”プログラム作品発表会で、今年で11回目の由緒正しき歴史をもつイベントです。
公式サイトにて「人を驚かせ、笑わせ、幸せにするようなプログラム」とアナウンスされている通り、実用的なものというよりは笑いを取りにいったプログラム作品が数多く発表さておりました。
今回はABPro2018の”ほぼ全て”の様子をダイジェストでお届けいたします!
※ スタイル別で並べたため、順不同でお届けします
※ 15,000字overでめちゃめちゃ長いです
ちなみに開会前の会場ではアジアンかつ荘厳なミュージックがやたらと大音量で流れていましたが、あれは一体何だったんでしょうか。プレゼンターの士気を高めるためのものかもしれない。いずれにしろ、プレゼンターの大半がアジア人なのは間違いないでしょう。
ハードウェア・ガジェット系プログラム作品
まずは何らかのハードウェア・ガジェットを用いたプログラミング作品を一挙ご紹介します。天才(変態)に技術を与えた結果が以下のとおりです。
1. バーチャルできゅうばーさん/家のスマートスピーカーに遠隔から話しかける
まずはじめに、宮下研OBのバーチャルできゅうばーさん。
登壇と同時に、一言も声を発さずお絵かきを始めました。自由かよ。
「スマートホームが一人でお留守番しててかわいそう」だったため、外出先からスマートスピーカーと話せるシステムを開発したとのこと。
だいたいの人が何を言っているかわからないと思いますが、大丈夫です。ボクも何を言っているかわからないですし、会場のみなさんも「お、おう」って感じの反応でした。それでも話を聞いていると、確かにそうだな、かわいそうだなとも思ってくるのがABProの空気のすごいところです。
ちなみに「Siriでいいのでは?」と考えるのはNGです。
PCに話しかけたい内容を入力し、送信。
「今頃ボクの家で、スマートスピーカーに話しかけてますね」
ちなみにスマートスピーカー に話しかける人工音声の音量を爆音にしてきたらしく、近隣から苦情が来ないか彼は心配していました。近隣住民との関係に支障がなければいいですね……。
遠隔スピーカー:OK, Google。アジは英語で何?
スマートスピーカー:すみません、よくわかりません。
しっかりオチがつきました。(このあとしりとりもやりましたが、スマートスピーカーは「おでん」と答えていました)
2. 相澤裕貴さん/紙飛行機を15分間飛ばす方法
明治大学渡邊研の相澤さん。紙飛行機が好きなのだそうですが、手が不器用で2〜3秒程度しか飛ばせないとのことです。
「しかし僕は気づいたのです。紙飛行機が飛ぶのに紙飛行機を飛ばす必要はない、と」
……?? 不可解な理論を持ち出してきましたが、つまりどういうことなのでしょうか。
自分の作った紙飛行機が全く飛ばなかったので,ドローンに乗せることで飛行時間を延ばしました!
ギネス記録の29.2秒を超える「15分間」の飛行が可能です!
しかも,この紙飛行機はバックすることもできます#ABPro pic.twitter.com/hMUG5bhCNP
— ZAWA WORKS (@Zawa_works) September 8, 2018
こういうことでした。今日イチで爆笑しました。
紙飛行機を手で飛ばすのではなく、ドローンに乗せて飛ばせば良い。紙飛行機滞空時間のギネス記録は29.2秒らしいですが、こちらは15分間も飛行可能とのこと。
紙飛行機を飛ばしたければ、紙飛行機を飛ばすのではなく、飛ぶものに乗せれば良いのです。「ドローンだけでいいのでは?」というのは禁句です。
ちなみにArduinoの加速度センサーを導入し、”投げる”動作をすることで紙飛行機(ドローン)を飛ばすシステムも開発したとのこと。あくまでも「紙飛行機を飛ばしている」と言い張る姿勢に、ある種の情熱を感じます。
3. 上野新葉さん/ABPropose - 花占いの結果をM5Stackで調整する
宮下研の上野さん。最初に「ピンポーン」といったチャイム音で開始。おそらく彼女の入場曲です。
今回は彼女の好きなバレエ作品「ジゼル」をテーマにした作品を作ってきたとのこと。
「ジゼルが花占いをするシーンがあるのですが、アルブレヒトがその結果が”好き”になるように花びらの枚数をこっそり調整するんです。今回はそんな作品を作って来ました」
それがこちらの「ABPropose」という作品。M5Stackのボタンを一つ押すだけで、花びらの枚数を調節できるとのこと。
「花びらの枚数は最大で3回調整可能です」
普通にアルブレヒトのように、隠れて枚数を調整すればいいのでは……?というのは野暮です。技術を使って花びらを飛ばすからこそ意味があるのです。テクノロジーは二人の愛を救う。すいません適当なこと言いました。
4. 堀洋祐さん/電球に心拍を保存する
カサネタリウムの名でテクノロジーを使った作品を作る堀さんは、今回とてもオシャレな作品を提出してきました。
「電球をみてたら、ガラスの瓶に見えたんです。瓶は、中にモノを保存するもの。ガラスの中に電気が保存されているのです」
「そこで、心拍を電球に保存しておくことを思いつきました。嬉しい時の心拍や、悲しい時の心拍、それを思い出として残しておいて、後でまた見るのもステキなんじゃないかなって」
こんなロマンチックなこと言われたら、大抵の女子は落ちますよね。ええ、落ちるんです。そういうことにしてください。
もちろん、電球そのものに心拍を保存するためのメモリは存在しないため、電球を光らせる装置が個々の電球を判別し、心拍情報を送るようなシステムを設計したとのこと。
「電球のフィラメントの抵抗値は電球ごとにそれぞれ異なるため、それにより電球の違いを判別することとしました」
5. ?瀨洋平さん/IoTデバイスで物理鍵を葬りさる
続いてのプレゼンターは、文化庁メディア芸術祭で優秀賞を受賞している?瀨さん。文化庁と聞いて、なんだかすごい人が出てきたなぁ、と小並感を覚える私。
今回は、ものをよくなくす人のためのIoTハックをプレゼンしにきたとのこと。
「とくに家の鍵とかなくすと大変です。家に入れなくなるだけでなく、家庭内での地位は低下し、犯罪が心配で睡眠不足に陥り、さらに鍵のシリンダー交換による実費が発生します」
「そこで、家をスマートホーム化し、物理鍵を葬り去る方法をご提案します」
小さなIoTデバイスを賃貸に取り付けられた”解錠ボタン”の下に設置し、スマートフォンから自在にボタンを押せるようにしたとのこと。
「家に近づくだけで解錠する設定もできます」
ちなみにこういうシステムを家庭に導入する際は、家族の理解と同意が不可欠とのこと。
「最初こそ目を細めていましたが、今では便利だと喜んでくれています。ホッとしました」
6. 栗原一貴さん/SONY MESHでNINTENDO LABOをハックする
陽気な音楽とともに登壇したプレゼンターの栗原さんは、SONY MESHというIoTブロックを使い、NINTENDO LABO的なことをしてみたそうです。
「これを”NINTENDO ULABO”と名付けます」
NINTENDO SWITCHの代わりにMESHを導入し、NINTENDO LABOのインターフェースに寄生成功しました。任天堂側も、まさかSONYにハックされるとは思っていなかったでしょう。実質M&Aといっても過言ではない(過言です)。
ちなみにMESH用にわざわざレーザーカッターで切り出したそうです。ハックへの熱の入れ方が素晴らしいですね。ギークってこういう人のことをいうんでしょうか。
7. 相澤裕貴さん(飛び入り)/聲を図形にしてグッズ化
先ほど紙飛行機ドローンで登壇した相澤さんは、飛び入りで「好きな声優さんの声をグッズ化して常に携帯したい」という全人類の夢を叶えるプロダクトの発表も行いました。
ちなみにABProは、自由に飛び入り参加が可能です。「観覧申し込みはしたけど、みんなの発表見てたらウズウズしてきちゃった……♡」なんて人にも優しいシステム。こういう大らかさが女子にモテる秘訣なのです(?)。
モデリングしたものを3Dプリンタ等で印刷すれば、簡単にグッズが作れるとのこと。
普通にちょっとオシャレなグッズが生成できそうな気がします。声優の声を3Dモデリングしたものなんてわからないですね。ボクも藤田茜さんの声をモデリングしてグッズ化してほしry
8. 堀洋祐さん(飛び入り)/歯ぎしりを電気信号で強制的に抑える
先ほど心拍を電球に保存した堀さんが再登場。歯ぎしりを抑えるために電気を流すデバイスを開発したとのことですが、上の画像でお察しください。
「口を開く筋肉は首にあるのですが、首にはさまざまな重要な神経が通っており、素人が電気を流すのは危険とのことです」
代替案として、手首下にある”リラックスさせるツボ”を押すことで歯ぎしりを抑制しようとしたとのこと。しかし、ツボ押しだとイマイチ歯ぎしりを抑制できなかったようです。
「今後はツボ押し以外の歯ぎしり抑制法や、筋電センサーとモーター駆動部の無線化に取り組み改善していきたいです」
9. tnayukiさん(飛び入り)/人力で仮想通貨をマイニングする
メディアアーティストのtnayukiさんは、仮想通貨(モナコイン)のマイニングを人力で行うためのデバイスを開発したとのこと。
太陽光発電で仮想通貨をマイニングするコンテナが話題ですが、こちらはぼくが作った「人力で仮想通貨をマイニングする機械」。手回し充電機を回して電気が流れると起動し、1時間ほど連続で回すとだいたい0.002円ぐらいの仮想通貨を採掘することができます。 pic.twitter.com/2eJ4cHOX9Z
— tnayuki (@tnayuki) November 2, 2017
元々はRaspberry PieとUSB発電機で動作させて、ビットコインをマイニングする予定だったらしいのですが、発電量が小さすぎて全然稼げなかったため、マイニング対象をモナコインに変更したとこのと。
「1時間で0.0018円稼げました!」
労働の対価としてはあまりにも小さすぎる額がトホホ感を増大させますが、オチとしては最高です。
ソフトウェア系プログラム作品
続いてPC上で動作するプログラミング作品をご紹介します。いずれもどこか方向性を間違えたステキな作品ばかりです。
10. tnayukiさん/バーチャルマニ車
先ほど”人力で仮想通貨マイニング”の飛び入り発表をしたtnayukiさん。続いてはチベット仏教の仏具であるマニ車を使ったプログラム作品を発表してくれました。
「中に経文が入っており、回すと徳が貯まるんですが、バーチャル空間でも回せるようになったらいつでもどこでも徳を貯めれるのではないかと考えました」
「相次ぐ大災害に見舞われる平成30年の日本。今こそ日本人は徳を貯めるべきなのです」
「マニ車はAmazonで買えるんですが、実は3Dでモデリングされたものも買えるんです」
2018年は仏具をバーチャルで買う時代です。ボクたちの知らないところで、世界は進化しています。
実際にバーチャルでマニ車を回した様子が上記の画像。
今後はモバイル対応、チベット仏教とボン教の切り替え(マニ車を回す方向と中に入れる経文が異なる)、大仏建立、徳コインのマイニングも実装予定だそうです。
「徳コインでマイニングした仮想通貨を、北海道大地震に役立てられればと思います」
やってることはどこか間違ってるのに、その中身はすごく慈悲に満ち溢れていました。
11. 雨さん/ハードディスクの声をモールス信号に変換する
宮下研の雨さんは「パソコンはしゃべるんですよ」と仰いました。
最初ボクは、パソコンのスピーチ機能のことを言っているのかな?と思ったのですが、予想の斜め上をいってました。
パソコンのハードディスク(HDD)に書き込む時の「コココ……ココ……」って音。雨さんいわく、あれがパソコンの声だそうです。お、おう。
「この音は実はモールス信号で、私に語りかけようとしているのです」
HDDの声(モールス信号)を解読するために、①音を録音→②ノイズ除去→③高速フーリエ変換(FFT)→④一定の周波数の音量をトリガーにして「トン」と「ツー」のモールス信号化→⑤翻訳のステップを踏むそうです。結構しっかり読み取ろうとしている……!
今回は規則性のない文字列として翻訳されてしまったようですが、雨さんは今後もパソコンとの会話について研究を続けるとのこと。
人間とロボットが意思疎通する話はマンガやアニメでよくありますが、モールス信号を用いたのはおそらく雨さんが史上初だと思われます。人間とロボットのコミュニケーション、これからも研究し続けて欲しいです。
12. 中西真弓さん/脳をデータ化しておすすめの映画と宝塚を教える
宮下研の中西さん。映画『トランセンデンス』(ジョニー・デップの脳内をPCに入れたらやばいことになった話)から着想を得て、「じゃあ私の脳内もPCに入れてみよう」となり今回のプログラム作品を作り上げたとのこと。
脳の電子化という、人類最大の命題のひとつに真正面から向き合った作品なのですが、「コミュ障だからおすすめの映画聞かれても困る」というとても身近な悩みをハックするものでした。親近感が湧きまくる。
「おすすめの映画と宝塚の公演を教えてくれるサービスを作りました」
ジャンルや鑑賞時間、また作品の終わり方(ハッピーエンドや悲しいエンド等)を選択すると、中西さんおすすめの作品が出てくるサービスのようです。
なお、映画よりも宝塚公演の方が情報が充実しており、製作者の思惑が存分に反映されていました。
13. 藏地健志さん/インスタグラマーになるためにディープラーニングする
続いてのプレゼンターの藏地さんは最近インスタを始めたそうなのですが、UPするためのインスタっぽいキラキラした写真がないとのこと。
「そうだ、ディープラーニングでそれっぽい写真を生成しよう」
#beautifulskyがついた写真を12,000枚くらい収集し、それらをディープラーニング。結果、ちゃんとキラキラ系女子が上げてそうなそれっぽい画像が本当に生成できているのがすごいです。
「生成した画像は全手動で毎日投稿中です。ぜひフォローしてください!」
そこは手動なんだ……。
14. 山田開斗さん/相手が自分のことタイプかどうか判定するためにディープラーニングする
宮下研の山田さんのプログラム作品。好きな子に告白したいが、仮に告白に失敗した場合、次からは「どうせまた失敗する」と自信を失ってしまうという、何となくリアリティのある話を紹介してくれました。
「相手が自分のことをタイプかタイプじゃないか予めわかっておけば、自信をもって告白できる。そこでディープラーニングしました」
因果関係は不明ですが、とりあえずディープラーニングをすれば大体のことは解決できるようです。
LINE botに画像を送ると、相手が自分のことをタイプかどうか判断してくれるシステムを開発したそうです。
精度がまだまだ高くないため、山田さんはこれからも改良を続けるとのこと。上手くいけば、未来のマッチングアプリとしてめちゃめちゃ便利なものができるのでは……? 期待しております。
15. 島田雄輝さん/Twitterにずーみんを出現させる”Zumitter”
続いての発表は、宮下研の島田さん。
「みなさんは欅坂46を知っていますか? 研究とか辛い時にみると癒されるんです」
「ただ、最近悲しいニュースが……。ずーみん(
「なので、僕がずーみんを作りました」
セリフだけ聞くとなかなかやばい人体錬成でもおこなってるのかな?と思いましたが、どうやらTwitterの任意のアカウントをずーみんに変更できる”Zumitter”を作ったようです。
他人のTwitterをずーみんに変えられるのが基本機能の模様。なお、これを使い続けていると「ずーみんっぽいツイート」を内部のシステムが学習し、訓練されたデータから類似度が高いツイートをずーみんとして表示するようになるとか。機械学習すげぇ。
16. 真夜猫さん/社会性フィルタを解除する猫用SNS ”Social-Cat"
宮下研の真夜猫さんがご登壇。「とても緊張しています」とのこと。
「世の中には”にゃーん”としか表現できない自体が多く存在します。そこで今回ご提案したいのが猫用SNS"Social-Cat"です」
「”にゃーん”とつぶやく前には、バックスペースで消した文字も裏に隠れているのです。今回は、その消した文字も読めるようにしたビューワーを作りました」
なんともまあ、狂気的な興味深い発想をするのでしょうか。Social-Catが世の中のデフォルトになったら世界のインターネットはあっという間に転覆するでしょう。将来が楽しみですねいますぐ政府機関は彼を拘束すべき。
17. 大場直史・下野弘朗さん/リアル筋肉育成ゲーム"Muscle-Breeder"
宮下研修士2年の大場さん・下野さんは、とある育成ゲームを作ってきたとのこと。
「みなさんペットを飼いたいと思いますよね。でももっと可愛いペットがほしいとは思いませんか?」
ふむふむ。確かに飼うならできるだけ可愛いペットが良いですよね。ボクは猫かハムスターが飼いたいです。
「そこで今回ご提案するのが、筋肉をペットとして飼うことです」
予想をフルスイングして投げ飛ばしたものがでてきました。
ボクは筋肉をペットとして認識したことはないのですが、そういえば友達の筋トレマニアはよく自身の筋肉をナデて可愛がっていたような……。そうか、彼にとって筋肉はペットだったのですね。
この育成ゲームは、実際に自身の筋肉を動かすことで、筋肉ちゃん(キャラクター)を育成できるとのこと。あれ、筋トレアプリとして普通に良さそう。
上腕二頭筋に筋電パッドを貼り付け、筋肉ちゃん(キャラクター)を育てる大場さん。ゲームでキャラを育てながら筋肉も育てられます。
システム的には、ObnizにつないだMyowareで筋電センシング→FiraBaseにログ保存→Processing.jsで筋肉ちゃんを描写するという流れになっているとのこと。なるほど、わからんけどなんかすごそうですね(小並感)。
18. 宮代理弘さん/拡張子を無理やり変えると……?
続いては宮下研の宮代さんがプレゼン。今回は”拡張子”をテーマにしたプログラムを組んできたとのこと。
「”拡張子”とは、プログラムに該当ファイルをどのように扱って欲しいかを示す文字列です。なので、拡張子だけを変えたところで、ファイル自体は変わりません」
「例えば『WordファイルをPDFにして提出』と言われた際、初心者は”.doc”ファイルを名前だけ”.pdf”に変えようとしたりしますが、中身はそのままなのでファイル形式が変わるわけがありません」
「そこで、拡張子を無理やり変更しても正しく起動するようにしました」
さらっとめちゃめちゃすごいこといいだしたぞこの人……!たぶん、技術的にかなり難しい内容です。仮にその技術が全てのPC・全ての拡張子で実装されたら、ITの世界を180度変えられるでしょう。
今回のデモでは、「.js→.html」「.png→.html」「.pptx→.pdf」などを実演してくれました。
19. りゅう ふじわらさん/猫の位置を観測する(量子力学)
現象数理学科のふじわらさん。
「今日はねこの国の友達を紹介しにきました」との説明をされて、急にテイストの違う人がきたぞ!と身構えました。
ちなみに昨年はいぬの国の友達を紹介したらしいです。キャラ付けがしっかりしているのには好感が持てますね。
そして「猫の国は量子力学が支配している」と唐突すぎる理論を持ち出し、量子力学の説明をしだすふじわらさん。そういえば彼は現象数理学科の学生でした。
ざっくりいうと、世の中のものは観測するまでどこにあるか分からない、というのが量子力学だそうです。シュレディンガーの猫で有名なやつですね。(参考?記事)
「猫はどこにいるかわからないから観測する必要があります。みんなで観測して、猫の位置を確定させよう!」
ということで、ねこの居場所を教えてくれるTwitterアカウントを製作したそうです。
もっとかんそくしてね
リビアにいるよ!!! pic.twitter.com/7lE5TCWEVK— しゅれでぃんがー(ねこ) (@schronyan) September 8, 2018
上記が実際のTwitterアカウント・しゅれでぃんがー(ねこ)。位置情報の信ぴょう性は定かではありませんが、とりあえずすごく癒されることだけはよく分かりました。ねこかわいい。ボクもねこ飼いたい観測したい。にゃーん。
ABPro2018で最も哲学的な発表でした。
20. 木崎駿也さん/ナスをモデリングして精霊馬を作る
宮下研の木崎さんの作品。お盆の時期にTwitterでオリジナルの精霊馬がいっぱい流れてきたのを見て、「僕も精霊馬をPC上で作りたい」と思ったそうです。因果関係めちゃめちゃですが、ABProはたぶんそういうものだから大丈夫でしょう(思考停止)。
ナスはUnityでモデリングしたそうです。
「右上のプラスボタンを押すとナスがでます」「ナスは自由にカットできます」「他にも割り箸などを追加できます」とのこと。
プラスボタンを押すたびに生成されるナスに、ボクは言い知れない快感を覚えていました。
Q. 突然ですが問題です。Unity上で組み立てられた上記の画像は何に見えますか?
A. ドライヤー
2018年は、家電も精霊馬になる時代なんだなぁ。
21. 宮代理弘さん(飛び入り)/”茄子”でプログラミング
ナスで精霊馬を作った木崎さんに触発され、飛び入りで再び登壇した宮代さん。
jjencodeを使い、「茄子」を入力することでプログラミングできるようにしたとのこと。他の発表を参考に、その場で実装してしまうのがABProの面白いところです。
22. 栗原一貴さん(飛び入り)/鯉 vs インベーダー
先ほどNINTENDO ULABOのプレゼンをした栗原さんがふたたび登場。鯉の動きをライブカメラでトラッキングし、その動きに合わせてインベーダーゲームをやってもらうというものでした。
鯉が意外と良い動きをし、確実に敵(インベーダー)を仕留めていました。ちゃんとUFOもとるあたり、この鯉には世界の意志が介在しているのでは?と思わざるを得ません。
最後の一体とアツい攻防戦。最終的に鯉側の弾とインベーダー側の球がほぼ同時に相打ちとなりましたが、判定の差で鯉が勝利する結果となりました。鯉の動きはほぼランダムなのに、すごすぎません……?!
音楽系プログラム作品
なぜか楽器や音楽を使ったプログラミング作品が多く発表されていたため、別枠でまとめさせていただきます。
イマドキのギークは楽器がお好き。
23. 田口諒さん/ギターでPCを操作する
宮下研の田口さん。なぜかギターをセッティングしだしたとおもったら、そのままギターでマウスカーソルを操作し始めました。
ギターから特定の音を鳴らすことで、マウスカーソルが右に動くようです。ここで会場からはスタンディングオベーション。ギター演奏とPC入力インターフェースの邂逅に人類が歓喜した瞬間です。
めちゃめちゃしっかり割り当てられています。マウスカーソルだけでなく、キーボード入力も可能。
「ギタリストは常にギターを持っていたいので、PC操作もギターでできるようにしました」
操作性は正直……ではありますが、確かにこれならギターだけでPCを操作できますね。ユーザビリティよりも楽しさを優先した好例です。
「PCを起動してから録音までを、すべてギターのみで行えます」
このあと実際に、普通にめちゃめちゃ上手いギター演奏をリアルタイムで録音していました。ただ、録音の開始ボタンと停止ボタンもギターで操作していたため、そのあたりの音も入ってしまったのでは……と心配になりましたが、それは言わないお約束でしょう。ごめんなさい。
24. 土井麻由佳さん/文字情報を箏(こと)の楽譜で暗号化する
宮下研の土井さん。ご自身の特技である箏(こと)を使ったプログラム作品を発表してきました。
「文字情報を箏譜(箏の楽譜)に置き換えて暗号化できるのではと思い、実際にやってみました」
暗号化のプロセス自体は特別なものではないものの、その解読は箏の経験者でないと難しそうなのがポイントです。そもそも一般人に箏譜は難易度が高すぎる……!
「箏譜のままなら頑張れば解読可能ですが、動画や音声のみだと解読は非常に難しいと思います。」
この後、実際に「#ABpro2018」の暗号化箏譜の弾いてみた動画を披露していたのですが、全く違和感なくカッコ良い演奏だったのですごかったです。箏の可能性を感じた。
25. 宮下芳明さん/予知する鍵盤
発表者の中には、宮下研の担当教授、宮下芳明さんもいらっしゃいました。本当は監督側に回りたいものの、学生たちから「今年はどんなプログラム作品を作るのですか?」と声をかけられ、今年も出場したそうです。この先生はぜったい良い人。
宮下教授は以前スプラトゥーンの弾いてみた動画をYouTubeにあげたらしいのですが、「リズム感がなさすぎると」友人に怒られたとのこと。そこで今年は”演奏時のリズムを修正するプログラム”を開発したそうです。
「演奏するときの音のリズムを修正したい。早く弾きすぎたものについては修正できるが、鍵盤を推し遅れたものについては修正が難しい。まさに”手遅れ”」と語る宮下教授。「まさに”手遅れ”」というフレーズが気に入っているようご様子でした。
「音が鳴るのは、鍵盤が底に衝突したとき。その前段階の”指が鍵盤に触れる瞬間”を感知すれば、”手遅れ”に鳴る可能性は低い」
実際に鍵盤は触れるだけで音が鳴る仕様となっており、必ずしも打鍵は必要ないようです。
ゴキゲンなハウスミュージックに合わせてキーボードを弾く宮下教授。大学教授というお堅い肩書きのイメージをどこかへ放り投げてしまいました。こんな教授のもとなら楽しく研究できるでしょう。
会場からはリズムに合わせて手拍子が湧き起こりました。音楽があれば、そこはいつでもダンスホール。踊ろうぜパーリナイ。
26. 塩出研史さん/ステアリングの達人
太鼓の音と共に登壇した宮下研の塩出さん。(ちなみに太鼓の音はのちの伏線です)
普段はUI(ユーザーインターフェース)の研究をしているとのこと。そう、ABPro登壇者の多くは普通の真面目な学生。決してふざけたプログラムばかり作っているわけではないのです。
「ステアリングの法則というのがあるんですけど、どうせやるなら誰よりも上手くなりたいんですよね。そこで今回、ステアリングを極められるゲームを開発しました」
【ステアリングの達人】”ステアリングの法則”の実験タスクを音ゲーにしてみて発表しました!ちゃんとパラメータや適合度も表示してくれます!! #ABPro pic.twitter.com/NaL2fPQAX3
— 食塩出現 (@solt9029) September 8, 2018
それがこの『ステアリングの達人』。音楽に合わせてマウスカーソルを動かし、操作する模様。
どこかの某太鼓ゲームで聞いたことのある、抜けの良い「カンッ!」って音が特徴的です。というより完全に確信犯。ステアリングで遊ぶド〜ン!
ステアリングという一般的にはあまり認知されていない名称でしたが、それをわかりやすくゲーム化した塩出さんでした。
27. 小渕豊さん/Discord上で作曲する
小渕さんはチャットサービス『Discord』でBotのカルチャーが盛んということを紹介してくれました。
「APIがよく整備・ドキュメント化されているため、Botを作るのが比較的簡単なのです。特にコミュニティー発のBotがアツい」
Discord上で音楽を流してくれるBotがあるそうなのですが、そこで小渕さんは「Discord上で作曲をすることもできるのでは?」と考えたそうです。
実際にBotを製作し、DiscordのボイスチャットでLive Cordingしビートパターンを生成する小渕さん。
実はボクもたまに作曲をするのですが、こんな作曲手法もあるのですね……!「TidalBot」という名前で公開しているとのことなので、よかったら探してみてください!
「ぜひ友達と一緒に、Discord上でライブコーディングしてみてください!」
28. 栗原一貴さん(飛び入り)/ピアノ演奏でブロック崩しする
先ほどNINTENDO ULABO、鯉vsインベーダーで登壇した栗原さんが再び登場。1つのイベントで3回同じ人が登壇することってあるんですね。そのへんも自由なのがABProなんでしょう。
「ゲームしながら音楽演奏もクールに決めたい」と仰り、見せてくださったのが以下の動画。
#GameControllerizer その5ー3、ピアノでブロック崩しの最終局面。#魔法の伴奏 で知られるペンタトニックスケールを使うと、適当に黒鍵をひくだけで音楽的になんとかなることを応用しプレイに集中!最初もたついてますが終盤かなりいい感じ!! https://t.co/Wp9MkGZq1H pic.twitter.com/hF8JHZW5HY
— 栗原 一貴 / Kazutaka Kurihara (@qurihara) June 25, 2018
ピアノの鍵盤に合わせてバーが動くブロック崩しゲーム。
音程が高いとバーが右に、低いとバーが左に移動するシステムとのこと。ちゃんと音楽的に弾こうとしてるので、ちょっと苦労しているらしいです。
なお上記ツイートの通り、ペンタトニックスケールに合わせて黒鍵だけを弾いているのですが、そこそこしっかりとカッコよく聞こえます。ゲームしてるだけなのに……!!
ABProに出場してくる人の傾向と今後の対策
さて、ここまで総勢28名(重複あり)のプログラム作品を見てきましたが、ABProにエントリーしてくる人にはちょっとした傾向があることがわかりました。
まず、ABProの参加者はweblio辞書で物事を説明しがちです。
プレゼン中にweblio辞書を参照した人は3,4名ほどいたのですが、Wikipedia派は1人しかいませんでした。Wikipediaの寄付呼びかけに嫌気がさしたのでしょうか。
来年のABPro参加を考えている方は、ぜひ用語説明にはweblio辞書を使いましょう。これであなたもABProの仲間入りです。
また、なぜかはわかりませんが、ABProの登壇者はプレゼンのはじめに何らかの音を鳴らしたがるようです。今回、5名ほどなんらかの音を鳴らしていました。プロレスの入場曲と原理はだいたい一緒でしょう。登壇者の士気を高めるのです。
ちなみにほとんどの場合において、入場音が鳴ったあとは会場がシュールな空気に包まれました。その空気作りもなんだか狙ってやってそうで技術力を感じます。
ちなみに上記が今回発表された全37作品の傾向を表したグラフです(本記事で掲載できなかった9作品を含む)。
ソフトウェアのみのプログラム作品がやや優勢なものの、そんなに大きな偏りはなく、さまざまなプログラム作品が発表されていました。強いて言うなら、音楽系の作品がやや目立ったことでしょうか……?
以上より、ABProに出る人の傾向をまとめると以下の通りです。
- 用語説明にはweblioを使いがち
- プレゼンの最初に何らかの音を発しがち
- ソフト・ハードに大きな差はない(若干音楽系が多い)
来年のABPro参加を検討している方はぜひご参考くださいませ。なんの参考になるか知らんけど。
……というわけで、ABPro 2018のイベントレポートでした!まとめるのめちゃめちゃ大変だった……!!
珍スポやサブカル、変なもの好きの人ならプログラマーでなくても楽しめるイベントです!普通じゃない、変なプログラムに全精力をかけるプレゼンターたちの情熱。その熱狂は(笑い)涙なしでは語れません。
毎年9月ごろに開催しているようなので、興味ある人はぜひ来年参加してみてください!ツッコミどころ、笑いどころ満載の楽しいプログラムイベントですよ!
(おわり)
<明治大学・宮下研究室をはじめ、記事制作にご協力いただいた皆さま、本当にありがとうございました!>
読了おめでとう!次はこちらの記事をどうぞ!
[…] ABPro2018で発表した「ABPropose」が記事に掲載されました. デイリーポータルZCRAZY STUDY […]