「あなたは小学5年生より賢いの?」
……先日、そんな煽りクイズ番組があると聞いた。
「小5wwwナメてんのかwww」と、さすがの僕も声を上げて笑ってしまったのだが、番組が進んでいくにつれて、その軽蔑は焦りへと変わっていった。
そう、小学校で習ったはずの問題が、とても難しいのだ。
いま僕は高校受験をひかえた身なのだが、このままでは中学受験すら怪しい。一体どうすれば……。
悩みに悩んだ末、僕は、
実験キットを買った。
敵に勝つには、まず敵のことを知らなければならない。
つまり、小学5年生を超えるには、まず彼らが扱っているものをマスターしなければならないのだ。
今回買った実験キットは、リサイクルショップで100円で買ったもの。見ての通り小学5年生向けである。
これを使いこなせれば、小学5年生たちも僕の手際の良さに感動し、潔く負けを認めるに違いない。
さっそく取り掛かろう。
実験1日目
中身を確認する
このキットでは、「結晶を発生させる実験」ができるらしい。
結晶と聞くとキラキラして綺麗なイメージが浮かぶが、本当にそれを作り出せるならモチベーションも上がる。俄然やる気が出てきた。
開けてみると、いくつかの材料が入っていた。右の白い粉は非合法なものではない。
とりあえず説明書を見てみよう。
あの粉は「洗濯のり」と「尿素」らしい。
尿素は、肝臓でアンモニアから作り出させる物質であると、授業で習った。小学5年生は知らない知識だろう。
だが、洗濯のりとはいったい……? 調べてみると、洗濯のりからはスライムが作れるらしい。あの雑魚キャラの代名詞、もともとは洗濯のりだったのか。
そして残る材料は、「皿」と「厚紙」。本当にこれしか入っていない。100円なのも頷ける。
材料の確認も終わり、いよいよメインコンテンツのお出ましだ。家でひとり黙々と実験をし、僕の興奮はどんどん高まっていく。
型を作る
実験は手順を間違えると取り返しがつかなくなる。説明書通りに進んでいこう。
まずは「かたち」というものを選ぶらしい。この形に結晶ができるのだろうか。
見る限り、デフォルトで入っている「かたち」は2種類。レパートリーは今後の課題だ。
僕は「ゆきだるま」のかたちを選んだ。結晶が雪を連想させたからだ。
ゆきだるまが完成した。一仕事終えた達成感がある。
水溶液を作る
結晶を作るためには「尿素の水溶液」が必要になるらしい。
水溶液の作り方は、まとめるとこうだ。
- 水を4杯入れる
- 尿素を1杯入れる
- 洗濯のりをひとつまみ入れる
- 混ぜる
水を4杯入れて、
尿素を1杯入れる。
洗濯のりも忘れずに。
ผสม!!!(混ぜる!!!)
水溶液ができた。尿素が全然溶けなかったので水を追加したが、たぶん大丈夫だろう。
型を水溶液に沈める
ついに実験もラストスパート。
- 水溶液を皿に移す
- 厚紙の型をセットする
水溶液を皿に流し込み、
厚紙の型をセットする。
良い感じ。
ふぅ、ここまででだいぶ疲れた。結晶はいつできるのだろうか。
1日かかるのか。長いな。
本当に結晶はできるのだろうか……急に不安になってきた。
確かめるには、明日を待つしかない。僕はもう寝る。おやすみなさい。君たちも寝なさい。ねんねんおこr
実験2日目
結晶を確認する
午前9時……
「朝だ」
寝坊した。トレードマークのサングラスをつけていないので、アイコンで顔を隠している。てか、なんでカメラがあるんだ?
……そうだ、結晶!!
僕は大事なことを忘れていた。結晶ができているか見なければならないのだった。
確か、ここに置いたような……
うわっ……!
できては、いる……?
でもなんというか、
ショボいし、ボロッボロ……。
なんか、思ってたのと違う。
こんなのをイメージしてたのだが。
しかし今、僕の目の前にあるのはこれ。
なぜだ、何が間違っていたというのだ? 尿素を溶かすために水を追加したのがマズかったのか……?
もう、こうなったら、
結晶を作りまくるしかない!!
数撃ちゃ当たる。いくつもの結晶を作れば、そのどれかは成功するはずだ。頭が悪そうだが、背に腹は代えられない。
というわけで、いくつか作ったものを見てもらおう。
結晶ダイジェスト
「除毛クリームの説明書」と結晶
道尾秀介の本ばっかりなのが気になるが、主役は中央のビリビリに破れた紙である。
これは「除毛クリームの説明書」だ。いらないので結晶の餌食になってもらった。
横から見ると、重くなった体を棚が支えているのが分かる。
動かしたら結晶だけ棚に残ってしまった。虫が卵を産み付けたような光景に鳥肌が立つ。
きもい。くさい。いや、くさくはない。「尿素」という名前で勘違いされがちだが、尿素はくさくない。そもそも匂いがない。ここは小学5年生の勘違いしやすいポイントだ。僕は中学3年生なので分かる。どうだ、まいったか。
「注意書き」と結晶
「○○たら死ぬぞ!」
肝心なところが結晶で隠れている。絶対に生かす気がない。
多分「寝たら死ぬぞ!」だと思うが、「ノコノコのこうらが当たったら死ぬぞ!」である可能性も否めない。結晶が僕らの命を弄んでくる。
「マッチョな人」と結晶
【結晶ができる前】
どこからどう見てもマッチョな人である。ちなみに僕が描いた。
ここに結晶ができると一体どうなるのだろうか。
【結晶ができた後】
どうしたの!?
彼に何が起きたというのだ。
ビートたけしにクリーム砲を撃たれたのだろうか。そう考えると結晶だがおいしそうに見えてくる。今日のおやつが決まった。
「僕の顔(40%)」と結晶
【悲報】結晶、現れず。
コピー用紙に印刷したのだが、うまく水溶液が染みこんでくれなかった。初歩的なミスだ。
まあ、僕の顔に結晶なんてものは似合わないからね。今はニキビという相棒がいるのだから満足さ。ニキビ、中学生らしいだろう。
全員集合
なにこれ。
結果、小学5年生より賢くなれたのか
以上で実験は終了となる。
果たして僕は、小学5年生より賢くなれたのだろうか。
Q. 水に溶けた尿素は、なぜ結晶となって出てくるのでしょうか?
「はは、なんて簡単な問題なんだ!」
A. 水が蒸発することで尿素の濃度が上がり、水に溶けきれなくなったから。
「たったこれだけのことさ!!!」
「うひゃひゃ! 小学5年生め、ナメんじゃねえぞオラァ!」
うひゃhy……取り乱してしまい申し訳ない。しかし、結晶の問題を解けたことは褒めてほしい。
つまりだ。これはもう、小学5年生に勝ったといえるんじゃないか?
およそ3日にわたって、僕は結晶の実験を行ってきた。
実験手順も完璧に覚え、自分の好きなものに結晶を発生させることもできた。大勝利だ。
私は小学5年生より賢いです!
中学3年生の僕が勝つべき相手は、小学5年生ではなく、同学年の受験生たちだ。
完全に戦う相手を間違えてしまった。
(執筆:キリメン)