うどんの発祥はどこか?
香川県民はそろって「香川やろ」と言うだろうが、実はうどんの発祥はよく分かっていない。
遣唐使によって唐から持ち込まれたワンタンが変化した説、空海が唐からうどんの原型を持ち込んだ説、聖一国師が中国から製粉技術を持ち帰り日本で独自進化させた説など……。いずれにせよ、中国にルーツをもつ説が主流のようだ。
しかし我々取材班は、カンボジアがうどん発祥の地である説を発見した。
1603年の正月、徳川家康が当時のカンボジア王に朱印船制度創設に関する書簡を出し、カンボジアからも国書が送られてきました。それ以来、日本商船の渡航が頻繁にーー(中略)ーー当時、カンボジアにやってきた日本人が、ウドン周辺で見たカンボジアの麺料理を日本に持ち込み、定着させたことから、その麺は地名をとって「うどん」と名付けられたといいます。
(AB-ROADより引用)
カンボジアの古都・ウドン。名前からして完全にうどんである。
こんなのもう、行くしかないじゃないか。
どうも、じきるうです。調子乗ったポーズで失礼します。
というわけで来ました、カンボジア。
今回はカンボジアの古都・ウドンで、うどんのルーツっぽい麺料理を探していきたいと思います。
カンボジアの古都・ウドンへ向かう
ウドンは、カンボジアの首都・プノンペンからおよそ42.9km。だいたいフルマラソンと同じくらいある。
さすがに自分の足でいくのは辛いので、ここは素直にタクシーを使おう。ちなみにタクシーは『Grab』か『PassApp』という配車アプリがおすすめだ。東南アジア版のUberみたいなやつ。
タクシーを呼び、ウドンへ向かう。乗ったタクシーは田舎のお婆ちゃん家のような香りが漂っていた。
タクシーの運ちゃんは常に小声でささやくように歌をうたう。運ちゃんの名前はソーマンというらしい。
カンボジアのゆるい空気が巡る。
プノンペンから国道5号線を4,50分ほど北上すると、遠くのほうに小高い丘が見えてきた。あそこにウドンはある。
カンボジアの大地はほとんど平野なため、そんなに大きくない丘でも遠くから確認できる。
ちなみにウドンの丘は、現地の人にとっては信仰対象になっているそうだ。人間、高めの山は崇めたくなる。
さらに10分ほど走ると、ウドンの街に入った。
古都とはいえ、現在のウドンはそんなに大きな街じゃない。どちらかというと郊外のちょっとした街といったイメージ。東京で例えるなら日野市。
カンボジアの古都・ウドンを観光する
ウドンで麺料理を食べる前に、まずは素直にウドンを観光しよう。
ウドンは1618〜1866年の約250年の間、カンボジアの首都が置かれており、その時に100を超える仏塔や寺院が建設されたという。ウドンの丘には今も数多くの仏塔が残されており、週末になると多くのカンボジア人が観光にやってくるそうだ。ボクたちもウドンの丘を観光したい。
ちなみに外国人観光客は少なめなうえ、外国人はウドンの丘の手前で1ドルとられる(カンボジア人は無料)。
ウドンの丘の入り口にたどり着いた。ここからは徒歩で丘を登る。
なおボクは友人と2人で行きたかったのだが、タクシー運ちゃんのソーマンが「俺が案内してやるよ」と言ってきかなかったため、3人で丘を登ることにした。
お前、普通に観光したいだけじゃないのか?
ウドンの丘はそんなに高くないため、10分も登ればすぐに頂上にたどり着いた。
真っ白で、なんかすごそうな建物が眼前にあらわれた。
ソーマンに「これは何?」と聞いたが、ソーマンは肩をすくめて朗らかな笑顔を返してくれただけだった。案内してくれるんじゃなかったのか。
せっかくなので記念写真を撮った。
当たり前のようにソーマンがセンターである。
なお白い床の部分から「帽子および土足禁止」のマークっぽいものがあったが、
ソーマンは当然のごとく土足であった。いいのかこれ。
他の観光客もなぜかみんな土足だったため、ボクたちも恐る恐る靴のまま足を踏み入れる。赤信号、みんなで渡れば怖くない。
ウドンの丘頂上からは、カンボジアの大地が遠くまで見渡せる。
本っっっ当に平たい。何も視界を遮るものがない。日本でこんな地平線を見ることができるだろうか。
これを目の当たりにしたときは、目頭が少しだけ熱くなった。
ウドンの丘頂上にある建物は、中に入ることができる。
建物の中ではカチャカチャとした宗教チックな音楽が、古びたラジカセから流れていた。
建物の中には謎のおじいちゃんがおり、少額のお金(確か1ドルくらい)を支払うとお経を唱えてもらえる。
意味はまったく分からないが、なんとなくありがたい感じがした。
お経の最後に赤い紐を手首に巻かれ、そこに息を二回吹きかけられて終了。
意味はまったく分からないが、なんとなくありがたい感じがした。
カンボジアの古都・ウドンで麺料理を食べる
ウドンの丘も堪能したことだし、そろそろメインディッシュといこう。ウドンの地で、うどんのルーツとなった麺料理を食べるのだ。
ソーマンに「日本のうどんのルーツとなった麺料理を知らないか?」と聞いてみたが、肩をすくめて朗らかな笑顔を返してくれただけだった。仕方ない、自分で探そう。
現地の人に聞き込みをしてみたら、「麺料理を多く扱っているレストランが近くある」とのことだったので行ってみた。
ウドンにあるちょっと良いレストラン。店員が気を利かせてエアコンの前の席に誘導してくれたが、エアコンの風が最大出力で直に当たるためとんでもなく寒かった。地獄への道は善意で舗装されている。
渡されたメニューには、確かにたくさんの麺料理が載っていた。
なるほど。
うん。
うどんっぽい麺料理はないね。
店の人に、日本のうどんの写真を見せながら「これに似たやつはないか?」と聞いてみたが、肩をすくめて朗らかな笑顔を返してくれただけだった。お前もそれやるのか。
仕方がないので、シンプルに美味しそうな「ビーフ・フライド・ヌードル」とやらを注文してみた。
牛肉、野菜、麺を、特製のソースで和えた麺料理のようだ。
ソースの濃厚な香りが食欲をそそる。
肝心の麺は、見た目は焼きそば用の麺とほぼ一緒。
しかし食べるまで分からないのが現地飯の醍醐味。うどんっぽい味がする可能性はまだ残されている。
さっそく食べてみよう。
……なるほど。
麺のコシはやや弱め。たぶんかんすいが使われてる。
汁ダクの麺料理といった感覚で、甘じょっぱいタレと牛肉&野菜がよくマッチしていて美味い。
強いて言うなら、あんかけ焼きそ……焼きうどん。とても日本人好みの味だ。
うん。うん。
そもそも仮に、ウドンから日本にうどんが伝わったとしても、400年くらい前の話だしね。
当時のうどんの原型となる麺料理が、現在も残っているとは限らないよね。
うん。うん。
ちなみに帰国後に知ったことだが、カンボジアは「ノムバンチョク」や「クイティウ」といった米麺の麺料理が主流のようだ。ボクは亜流を食べてしまっていた。
一方ソーマンは、カエルの唐揚げを注文していた。カエルって、こんなナチュラルに注文するものなのか。
「ひとつくれ」と言おうと思ったが、自分の麺料理のボリュームが存外に多かったため遠慮しておいた。腹具合的に、カエルを入れるスペースはない。
ちなみに当たり前のように支払いはボク持ちになっていた。
うどん発祥の地でうどんを茹でる
このままでは終われないので、日本から持参した日本製うどんをカンボジアの地で食べようと思う。
なるべく現地感を出したかったためカンボジアっぽいスープを探したのだが、あいにく近くのコンビニには売っておらず。
仕方がないので、カンボジア人に大人気だというトムヤムクンヌードルで代用する。大人気なら、これも広義のカンボジア料理だ。ちなみに情報源はソーマンだ。
まずは麺を食す。日清の麺はどこの国でも美味い。
続いてお湯を沸かす。
ホテルの部屋にIHコンロと鍋があって良かった。これはそういう部屋を意図的に選んだわけでなく、完全なる偶然である。ウドンの神仏がボクに「うどんを作れ」と微笑んでいる。
うどんを茹でる。
なお残念ながら箸がなかったため、フォークでうどんを混ぜることになった。大した問題ではないが、ものすごい違和感があった。
麺をスープに入れる。
フォークでうどんを掴むのが難しく、鍋からスープへの移行作業にやや時間がかかってしまった。柔らかめな仕上がりになったかもしれない。
最後にコショウをふりかけたら完成だ!
なお、コショウはカンボジアの名産品だ。またひとつ、カンボジア感が増してしまったな。カンボジア料理度は93%だ。
それではいざ、実食!!
えっ……。
マジで美味いぞこれ。
麺はもっちり、程よいコシ。これぞ日本のうどんだ。
そしてトムヤムクンヌードルのスープは、うどんと非常によくマッチする。うどんの甘みに、スープの辛味と酸味、そしてコショウのパンチが追加され、絶妙なハーモニーを奏で上げる。
普通にこういう麺料理あって良いのでは? もうこれをカンボジアのうどんに認定しようぜ!!(傲慢)
まとめ
カンボジアの古都・ウドンではうどんっぽい麺料理は食べられなかったが、現地でオリジナルのうどんを開発できたので良しとしたい。
この「トムヤムクンうどん」が日本に逆輸入され、正式に「ウドン発祥のうどん」となればいいな。
ちなみに友人のソウ君に「食べる?」と聞いてみたが、肩をすくめて朗らかな笑顔を返してくれただけだった。
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