クレイジースタディで記事を書くようになり早1年。
きっかけは30歳の誕生日。ベロベロに酔っぱらいながら編集長のじきるうさんにこんなメールを送った。
ブログも書いたことがない全くの素人だった僕だが、この1通のメールをきっかけにクレイジースタディで記事を書くことに。
───あれから1年半。「おもしろい記事とは何か?」という「男女の友情は成立するか?」ばりに答えがない問題に向き合ってきた。
途中、思いがけない嬉しい賞を貰ったり、狂気記事王決定戦で審査員を担当させてもらったりする中で、おもしろいの見つけ方・伝え方が徐々に言語化できてきた。
今回は僕が考える、おもしろの「見つけ方」を2つ、「伝え方」を3つ書いていく。
この記事が少しでもお役に立てば幸いです。なにとぞ!
おもしろの見つけ方
半径5メートル以内から探す
まずは見つけ方。
僕はおもしろの種は自身の半径5メートル以内にこそ眠っていると感じる。世間の流行りに歩幅を合わせる必要はない。
……いや、本当は流行り・話題のものを取り入れつつおもしろい記事を書けるのが理想だと思う。
でもそれってライバルめちゃくちゃ多くない!?
流行りものの勝負だと、けっきょくは「速さ(記事として世に出るスピード)」や「強さ(文章力)」で決まる。
となると僕は全く勝ち目がない。
そこでおすすめなのが、参加者が1人しかおらず、大会に出るだけで優勝できる競争を見つけることだ。
その競争に出場するためのおもしろの種は、普段の生活の中にこそある。
自分だけが熱狂するものや生活の中のふとした気づき……これらはおもしろいに繋がるし、書く理由(なぜこの記事を書くか)もセットで見つかることが多い。
ちなみに僕がクレスタで執筆した11個の記事のうち、9個は半径5メートル以内から見つけたもの。
みんな意外と近くにおもしろいってありますよ~!
半径5メートルから遠くまで飛ばす(世間に近づける)
半径5メートル以内でおもしろを見つけたら、どう記事になるかを考えよう。
見つけたおもしろの種が、そのまま記事になることもある。
ただ、調味料や他の具材との組み合わせで料理が美味しくなるように、ひと手間加えることでよりおもしろくなる記事もあるはずだ。
もこみちだってあれだけオリーブオイルを多用するのは、そのひと手間が美味しさを引き出すからでしょ、知らんけど。
僕は「半径5メートル以内で見つけたおもしろいをひと手間加えることで、どれだけ世間まで飛ばせるか」、つまり多くの人の琴線に触れる企画になるかを考えている。
僕のなかで飛ばし方のパターンは2種類。
飛ばしパターン①
見つけた題材がみんな知っているもの(Ex. 校歌、人をダメにするソファ)
→調べ方を工夫する(Ex. 尋常じゃない数調べる、一定期間観察する)
世間で認知されている事柄・ものの場合、その魅力をただ伝えるだけでは、なかなかおもしろいとはならない。
みんな知っているからこそ、人と違う角度で調べてみよう。
おすすめは、多くの人が「自分ではやりたくないけど結果だけは知りたい……」と思っているものに焦点を当てるのだ。
本の要約サイトが人気なように、みんな回り道や無駄なことをせず答えが知りたい。そこにチャンスがある。
それと、調査量・調査時間をバグらせるのもおすすめだ。
調査が一定の量・時間を超えると、マリオカートでいうスター状態のごとく、調べる過程まで含めておもしろがってもらえる。
こちらは僕が書いた、全国の校歌を調査した記事。
300校分、31時間調べると「こいつとんでもない時間かけてる……!」と過程をおもしろがってもらえる。
こちらは『人をダメにするソファ』を、無職でヒモの親友に渡し、1ヶ月間のソファ滞在時間を観察した記事。
定点観測は、期間が長ければ長いほどおもしろさが増すように思う。
飛ばしパターン②
見つけた題材がマイナーなもの(Ex. シェアサイクル)
→みんなが知ってる題材と掛け合わせる(Ex. 誰もが知っている駅伝との掛け合わせ)
マイナーな事柄・ものの場合、知っているものと掛け合わせることで、世間まで飛ばすことができる。
たとえばこちらの記事。
僕は、普段からよく利用するシェアサイクルにおもしろの種が眠っていそう!と思ったものの、そもそもシェアサイクルを使ったことがない・存在を知らない人も多い。
こんな時、僕はシェアサイクルの要素を分解しつつ、メジャーなものとの共通点を探す。
今回は借りた場所と別の場所に返却できるシェアサイクルの特徴が「駅伝」と似ているのでは?と感じ、記事にした。
こんな風に、マイナーなものはメジャーな何かと似た要素を探すことで、そのもの自体の説明がしやすくなるメリットもある。
おもしろの伝え方
周りを頼る
ここからは伝え方。
自分の不得意な部分は、どんどん人に甘えて頼っていいと考えている。
苦手を克服するって素敵なことのように聞こえるけど、時間は有限だ。
不得意なものを無理して頑張るより、得意を伸ばすことに時間を割いたほうが本人も楽しいし、プラスな時間の使い方だと思う。
たとえば僕は、友人のエ・ヘさん(@coolandog)に記事のイラストをお願いして描いてもらうことがある。
僕は絵が描けないので、記事に花を添えようとするとどうしても『いらすとや』に頼ってしまいがちだ。
エ・ヘさんのイラストがあることで記事が豪華になるし、読者にとってもわかりやすくなる。エ・ヘさんには足を向けて寝られない。
僕の人生のバイブル『モチベーション革命』でこんな一節がある。
「ありがとう」という言葉は、漢字で「有ることが難しい」と書きます。つまり、自分には有ることが難しいから、それをしてくれた相手に対して「有り難い」と思う。だから「ありがとう」と言うのですね。
イラストを描いてもらうことや、周りの人から記事のアドバイスをもらうこと……どれも僕には有ることが難しいので、甘えさせてもらっている。
ただ、「やってほしい」のお願いばかりでは、決して人は動いてくれない。
ライターの僕が周りから「ありがとう」を言ってもらうためには、面白い記事を書いて、記事がたくさん読まれて、関わった人に喜んでもらうことが大切。
この部分を妥協なくやり切ることが、お互いのありがとうを交換し信頼関係を生んでくれる……と思ってます。
個人的な話をする
『家、ついて行ってイイですか?』というテレビ番組を知っているだろうか?
終電を逃したいわゆる普通の人に、タクシー代を支払うかわりに家へついて行き、家の中やこれまでの人生ドラマを覗かせてもらう人気番組だ。
知らない人は、むちゃくちゃ深い話をするヨネスケみたいな番組だと思ってほしい。
おそらくグーグルマップで世界中どこでも見れる今、人々の興味は「隣に住んでいる人がどんな生活を送っているか?」にシフトしている。
日本の裏側ブラジルよりも、お隣さんが謎のベールに包まれているこの時代。
だからこそ、日常を生きている「個人の話」には、おもしろさが詰まっている。
それはおもしろ記事でも同じ。
何度も例に出して恐縮だが、僕は校歌記事で頻出ワードTOP30を発表した際、一つひとつのワードに対して当時の学校での思い出を書いた。
例えば頻出ワードランキング5位の「山」では、以下のように書いた。
僕の中学校は山の近くにあり、秋はよく熊が出ていた。熊が出ると校内アナウンスで「全校生徒は校内に避難してください」と流れ、しばらくすると「猟友会で熊を撃ちました~、もう大丈夫です。」と流れるのが毎回だった。
これは想像以上におもしろがってもらえた。僕の中では熊が学校付近に現れること、猟友会が熊を撃つことは日常のワンシーンだったが、多くの人にとっては非日常だ。
自分が当たり前だと思うことをそっと記事の中に差し込むと、本筋とは別のところで笑いが取れるようになる。
『パラサイト 半地下の家族』でアカデミー賞を取ったポン・ジュノ監督は「もっともクリエイティブな話とは、もっとも個人的な話である」と話していた。
こんなこと書いても「興味ねーよ!」って言われるかもしれない……そんなエピソードこそ、是非書いてみてほしい。
自分の文章のタイプを知る
伝え方の最後はポイントは、自分の文章のタイプを知ること。
田中泰延さんの著書『読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術』で、「随筆とは事象と心象が交わるところに生まれる文章だ」と書かれていた。
ざっくり言うと、事象とは「現実の出来事・事実」、心象とは「心の中のイメージ・妄想」。
ここで大事なのは、自分の書きたい・得意な文章が、「事象」と「心象」のどっち寄りのなのかを知ることだ。
事象寄りの文章を書く人はジャーナリストや研究者タイプ、心象寄りの文章を書く人は小説家・詩人タイプだ。
僕はおもしろ記事を書くにあたって、さまざまな発見・調査をして結論を出したい。研究者タイプだなと感じている。
おもしろ記事を何本も執筆している人も、改めて自身のタイプを見つめることで、より片方のタイプに振り切ったり、はたまたバランスを取ろうと考えなおしたりとプラスの効果があるはずだ。
これからおもしろライターになろうと考えている人は、執筆前に自身がどちらのタイプかを考えることで記事が書きやすくなりますよ~!
まずは書こう! 書くことはおもしろい世界への切符になる!
今回は5つおもしろのポイントを伝えさせてもらったが、参考にしてもらえたらうれしい。
ただ、それ以上に一番大切なのが、とにかく一つおもしろ記事を書いてみることだ。
『あしたのジョー』で丹下階平が「立て……立つんだジョーッ」と言っていたが、僕も言いたい。書け……書くんだジョーッ!
おもしろ記事を一つ執筆すると、その記事が自分自身の名刺となる。
名刺を持つことで別のおもしろサイトに執筆させてくださいと営業できたり、記事を見た方からうちのサイトで書きませんか?とスカウトされたり。
自分の記事が、おもしろい世界への切符に繋がるのだ。
実は、僕は大学時代、芸人になりたくて漫才に熱中していた。
漫才とおもしろ記事の大きな違い。それは熱量が風化するかしないかだ。
漫才の場合ネタの練習をしないとどうしても間がズレる、ネタを忘れる等、熱量を持続するには努力の継続が必要だ。
一方のおもしろ記事は、最大熱量が記事として記録され続ける。
特に半径5メートル以内のものでおもしろ記事を書いた場合、流行りと関係がないため風化しない可能性が高い。
これは芸人にはないおもしろライターの大きなメリットだ。
この記事を読んでくれたあなたも、近くにあるおもしろの熱量をガツンと伝えてほしい。
おもしろの名刺を交換できること楽しみにしてます!
(執筆:電気とデニム)
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