こんにちは、Webメディア編集者のじきるうです。
ボクは『クレイジースタディ』という、おもしろ系ライターのあつまったWebサイトを2年半くらい運営しています。
その代表として、これまで100以上のおもしろ記事を編集してきました。
そこでふと思いました。
「おもしろ記事の編集って、あまり知られてなくない?」
おもしろメディアは世の中にたくさんありますが、その編集者たちがどういった方針で記事を編集してるかは、あんまり共有されていません。
なので今回は、たいへん恐縮ながら、ボクのなかにある「おもしろ記事の編集方針」を、ここですこしだけ書いていきます。
(※ あらかじめ申し上げておくと、この記事で紹介する編集方法は、ボクがすべての記事でやってきたわけではありません。最近、ようやく言語化できてきたことです。なので過去の記事に関しては、あまり突っ込まないでいただけると嬉しいです。あくまでクレイジースタディでの方針なのであしからず)
方針1. タイトルはパッと見て理解できるものにする
先日、老舗おもしろメディア『デイリーポータルZ』の林さんが、「具体例から学ぶ、バズる企画コケる企画」のセミナーに登壇されたときのこと。
そこで林さんは、以下のように仰っていました。
「読む前からおもしろい記事は伸びる」
これ、圧倒的真理なんですよね。
記事を読むかどうかの判断材料って、ほとんどの場合「タイトル」と「アイキャッチ」だけ。
そこで読者の興味を引けなかったら、その記事は読まれません。
そして「アイキャッチ」は記事の内容に依存しますが、「タイトル」は魅せ方次第で無限に案を考えられます。
タイトル付けは超重要かつ、記事制作でもっとも難しい工程です。
「じゃあタイトルってどうやってつけたらいいの?」
その答えのひとつに、パッと見て理解できるタイトルにする、というのがあります。
“読む前から面白い記事は伸びる” が正しいなら、読む前から内容が理解できるタイトルであることは不可欠です。
たとえば以下の3つのタイトルがあったら、あなたはどれを一番クリックしたくなりますか?
- 日本の元号 ルック・バック
- これまでの元号を振り返ってみた
- これまでの元号250個ぜんぶ振り返ってみた
おそらく、③のタイトルが一番クリックされるでしょう。
「①日本の元号 ルック・バック」は、パッと見でなんのことか分かりません。
“ルック・バック = 振り返る” という意味なので、すこし考えれば「日本の年号を振り返るんだな」と分かるかもですが……そんなことを考える間もなく、読者の目線はほかの話題に移ってしまいます。
「②これまでの元号を振り返ってみた」は、まだ理解できるかもしれません。
しかしやや簡素で、どの程度振り返ったのか、具体性に欠けます。
記事の内容を想像しにくいため、これもクリック率は低いでしょう。
「③これまでの元号250個ぜんぶ振り返ってみた」は、内容がかなり具体的です。
また数を明記することで、「そんな大量に振り返ったの!? 元号全部!?」といった驚きも与えられます。
方針2. リード文(導入文)は300字くらいにおさえる
記事全体の概要を最初にサッとつたえる存在、リード文(導入文)。
ここで記事の前提のはなしを、丁寧に書いてくれるライターさんは多いです。
しかし残念ながら、前提をくわしく知りたいと思っている読者は多くありません。
読者は早く本文と結論を読みたいのです。
ボクの場合、リード文はだいたい300字くらいに抑えるよう編集しています。
これくらいであれば、ストレスなくリード文を読んでもらえるかな〜と。
ちなみに「300字だと説明できない!」って記事は、そもそも企画自体に問題があるかもしれません。
だれにでも理解できる企画は、ひとことで説明できるものです。
ちなみにニュースや情報系メディアでは、「記事の内容を3行でまとめる」スタイルもよく見かけます。
記事全体の概要をつたえるには良い方法ですが、おもしろ記事ではあまり見ないかな……?
もしあったら教えてください。
方針3. 登場人物のプロフィールは最小限におさえる
おもしろ記事では、筆者のプロフィールや、記事に登場する人物のプロフィールを書くことがよくあります。
それ自体は問題ないですし、使い方次第では記事をおもしろくする効果もあるのですが……。
登場人物のことは、詳しく書きすぎないほうがいいです。
なぜなら多くの読者は、登場人物にはあまり興味がないから。
読者が興味あるのは、あくまでおもしろコンテンツです。
そこにだれが登場するかは、読者にとって重要ではありません。
なのでボクは、なるべく登場人物のプロフィールを短めに抑えるように編集しています。
あ、誤解のないように言っておくと、ライターさんや登場人物に価値がないってことではありません。
プロフィールは、一点突破でいい。
登場人物がどういう人か、ひとことで説明するほうがわかりやすいし、その人のキャラも立ちます。
ただし例外もあります。
「インタビュー記事」や「登場人物の存在がコンテンツの面白さに大きく関わる記事」は、プロフィールを丁寧に書いたほうが良いです。
方針4. ビジュアルの変化を意識する
「それ言っちゃうの!?」と思われるかもですが……
そもそも今の時代、おもしろ記事ってあんまり読まれません。
おもしろを求めている多くの人は、YouTubeとかの動画メディアに流れています。
じゃあ、なぜ動画なのか。
それは動画のほうが疲れないからです。
一部の「本好き」「記事コンテンツ好き」以外の人にとって、文章を読むのは苦痛なことです。
文章読むのって、超ダルい。
ほら、この記事も読むのダルいでしょう? ごめんね!!!
でも動画は再生ボタンさえ押せば、あとは勝手にコンテンツが流れてくるので、あまり頭を使わずたのしく閲覧できます。
動画をみるのって、超ラク。
YouTubeなら2〜3時間は余裕でみてられます。
まじめで有益な記事なら疲れてでも読んでもらえる可能性がありますが、おもしろ記事で疲れたい人は多くありません。
(もちろん有益な記事も読みやすいほうがいいけど)
「じゃあおもしろ記事はオワコンなの?!」ってなるかもしれないが、そういうことではありません。
大事なのは、いかにストレスなく記事を閲覧できるか。
文字ばかりつらつら続くと読み疲れてしまうので、たとえば写真やイラストを適度にはさむのは良い方法です。
太字や色字、ボックスタグ、箇条書き、GIF動画を挿入するのも良い。
会話形式にするのもおすすめです。
適度にビジュアルの変化があるほうが、読み疲れない記事をつくれます。
ただし、過剰にビジュアル変化を入れすぎるのも避けたほうがいいです。
それはそれで、脳が混乱するから。何事も「ほどほど」が肝心です。
ただし、文章そのものでしっかり読ませられるなら話は別です。
上記はボクが敬愛するpatoさんの記事。
なんと読了時間目安45分とのこと。
(ボクは読むのが遅いので1時間半かかりました)
とんでもなく長く、またビジュアル変化もそこまで多くない記事ですが、最後まで飽きずに読めました。
こんな記事、つくってみたいなあ……!
方針5. 身内ネタを削る
おもしろ記事は、読者をクスッとさせるためのコンテンツを揃えています。
つまり、読者をクスッとさせられない部分は削るべきです。
ただ、それが「編集者がクスッとしない部分」なのか、「多くの人がクスッとしない部分なのか」は、判断が難しいところ。
なので編集者は、なるべく素人の目線をもつことも大切です。
いちばん気をつけたいのが、身内ネタ。
ライターさんの身内にしか伝わらないネタは、一般の読者にとってはあまりおもしろくない場合があります。
編集者がライターさんと親しい場合、この身内ネタを見逃してしまうことがよくあるんです。
記事を編集するときは、ライターさんのことを「まったくの他人」だと思いながら編集したいですね。
方針6. 理由を説明できるところだけ編集する
ここまで書いてきましたが、「有益でまじめな記事」と「おもしろ記事」の編集方針は、じつはそんなに変わりません。
けっきょく、ある程度の編集方針は、どんな記事でも普遍です。
「読者にとって読みやすいかどうか」
これがすべて。
ただその「読者にとっての読みやすさ」は、正しく言語化する必要があります。
「なんとなくこっちのほうが良いかな?」は、ライターさんに対しても失礼かなと。
「なぜそれを編集するのか」
その理由を説明できる部分だけ、編集したいと考えています。
できれば編集したくない
この記事では「おもしろ記事の編集方針」をつらつらと書いてきましたが、できることならボクは記事を編集したくありません。
おもしろ記事はライターさんの個性を存分に出してほしいので、なるべく手を加えずにリリースしたいです。
ただ、そうもいかないのが現実。
論理展開がわかりにくかったり、文字が多すぎて読み疲れてしまったり、読者にとってはあまりおもしろくない情報がのっていたり……(ウゥッ、言ってて辛い)。
ライターさんの個性は残しつつ、読者にとっておもしろい記事を、最小限の編集で。
そういった編集ができれば、ライターさんにとっても、読者にとっても、Win-Winなおもしろ記事が出せるんじゃないかな。
(執筆:じきるう)
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