Twitterのプロフィールでは、単語を"/"(スラッシュ)や" | "(縦棒)区切りで列挙している人をよく見る。
先人にならって、筆者もプロフィールを充実させたい。
しかし、区切り文字は「スラッシュ」と「縦棒」、どちらを選べばいいのか?
区切り文字の傾向を知るため、既存のアカウントを調べることにした。100万人ぐらいは集めたい。
そして、結果をもとに自らプロフィールを更新しよう!
Twitterアカウントを100万人分集めよう
まず、Twitterアカウントをできるだけ多く収集する。
今回は、明確な目的意識をもって運用しているアカウントを中心に集めたい。
そこで私は、フリーランスの人々に注目した。
「フリーランスは人脈が大事」と言われているから、Twitterを積極活用している人が多いはずだ。
参考書籍として『フリーランスの進路相談室』(2021年 KADOKAWA発行)を用意した。
フリーランスの先輩方が多く登場するが、ほとんどの方がTwitterアカウントを持っている。
これらのアカウントを、収集の第一段階としよう。
次に、フリーランスの先輩方がフォローしている人を、プログラミングによって集める。
そういう人にフォローされているということは、Twitterを有効活用している人が多いと考えた。
そして、フォローしている人がさらにフォローしている人を……と、たどっていく。
これを繰り返し、最終的に116万7386人分のプロフィールが集まった。
【補足】
プロフィール収集は2021年5月中旬~下旬にかけて行った。本記事のデータは収集した時点のプロフィールを元にしている。
いろいろ比較しよう
区切り文字で集計
さっそく、「スラッシュ区切り」「縦棒区切り」を使っているアカウントの数を見てみよう。
【補足】
・スラッシュが1回出てくる程度だと「単に日付が書かれているだけ」の場合もある。よって「その記号が4回以上使われている」場合に区切り文字だと判断した。
・プロフィールにURLを入れている人も多いが、URLに含まれるスラッシュは除外してカウントした。
・半角と全角は区別せず集計した。
スラッシュ区切りが7.2%、縦棒区切りが1.4%。総数としてはスラッシュ派が多勢である。
しかし縦棒にしても、自由に書けるプロフィール欄において1%以上を占めているのだから、ある程度は浸透した表記法と言えるだろう。
ちなみに、日本人全体における「鈴木さん」の割合が1.4%である。(参考:苗字由来net)
皆さんが今までに「鈴木さん」に出会った回数を思い出してほしい。それぐらいの頻度で縦棒の使い手がいるのだ。
なお、本記事では「スラッシュ」と「縦棒」を主眼に置くが、それ以外の区切り文字もいくつか紹介しておこう。
- 四角区切り(1788人)
- 星区切り(1288人)
ここからは、区切り文字によって「フォロワー数」「Twitter開始時期」「都道府県」に違いはあるのかを見ていく。
フォロワー数の分布
やはりTwitterで気になるのはこれだろう。
まずは収集した116万人全体について、フォロワー数の分布を見ておきたい。
しかし116万人の中には、300万フォロワー近い人もいれば、フォロワーが一桁の人もいる。
それらをひとつのグラフに収めると……
こうなってしまう。
フォロワー1人~5万人の範囲に99%が属するいびつな分布図だ。格差社会を見せつけられてストロングゼロをあおりたくなる。
そこで、グラフの横軸を工夫した。
このように、ひと目盛りごとにフォロワー数が10倍になっていくようにする。
この横軸で描き直した分布図がこちらだ。
……なんだこれ? 見やすくはなったけど。
フォロワー100人~200人、1000人~2000人など、桁が上がった直後にアカウントが集中している。
グラフの作りの問題もあるが、フォロワーを増やそうと頑張る人は「1000人」といったキリのいいタイミングでひと息ついてしまうのかもしれない。
さて、区切り文字を限定すると分布はどうなるか。まずはスラッシュ区切りの人たち。
「1000人~2000人」のピークが若干大きいが、全体の分布はほぼ変わっていない。フォロワーの規模を問わず愛されている区切り文字だといえる。
次に縦棒区切り。
なんと、「1000人~2000人」のピークがさらに大きくなった。ひょっとしてフォロワー数は、縦棒区切りが有利か?
試しに、フォロワー数の中央値をとってみた。
やはり、縦棒区切りピープルはフォロワーが多い!
「人数では1.4%しかいない」とあなどってはいけないのだ。
Twitter開始時期の分布
Twitterのプロフィール欄には「○年○月からTwitterを利用しています」と書かれている。その開始時期はどのようにバラついているのだろうか?
まずは全体の分布がこちら。
2009年後半~2010年前半に登録した人が最も多い。日本でTwitterの認知度が急上昇した時期であり、Twitter活用法の書籍も多く出版されている。
続いて、スラッシュ区切りを使っているアカウントが登録した時期がこちら。
全体の分布とほぼ同じグラフになった。スラッシュは古参、新参を問わず使われているようだ。
では、縦棒区切りの人々はいつ登録したのか。
2009年~2010年にもピークはあるものの、2019年~2020年に開始した人からの人気が高い。
これまた興味深い現象だ。どのインフルエンサーが流行らせたんだ?
しかも先ほどわかった通り、縦棒区切りの方がフォロワーが多い。つまり縦棒区切りは、Twitter歴が浅い人が多いのにフォロワー数で勝っているのだ。
ベンチャー企業のごとき成長速度に、いよいよもって魔力のようなものを感じる。
都道府県の分布
今度は都道府県別の分布を見てみよう。
Twitterプロフィールには「場所」の欄がある。
このように、書こうと思えば何でも書けるのだが、まっとうに都道府県を書いているアカウントは41万3496人(全体の35.4%)存在する。
【補足】
「名古屋」や「神戸」と書いている人も多いため、都道府県名だけでなく政令指定都市の名前も集計対象とした。
各都道府県ごとに人数を集計し、地図上に描くと以下のようになった。
東京、愛知、大阪など、人口が多い県ほどアカウントも多い。納得のいく結果だ。
では、区切り文字を多く使っている県はどこか?
県ごとに総数で大きな差があるので、パーセンテージで見てみよう。
まずはスラッシュ区切りの使用率をマップにした。
やや日本海側の県でよく使われている。トップ2は秋田県と島根県だ。
二つの県の共通点をがんばって探したが、「美肌県グランプリ2018で上位に入っている」ぐらいしか見つからなかった。
そんなグランプリがあるのか。スラッシュとの関連はわからない。
次に、縦棒区切りの使用率。
スラッシュと比べて、分布がかたよっているように見える。
東北、北陸の日本海側で赤い県が目立つ。そして四国での使用率が軒並み高い。
「なぜ?」と問われれば「なんでですかね?」と返すしかないのだが、これらの県にお住まいの方は参考にして頂きたい。
全体的な傾向
ここまでの比較により、縦棒にはスラッシュと比べて以下の傾向があるとわかった。
- フォロワー数が多い
- Twitter歴が浅い
- 特定の地域で使用者が集中している
しかし、全体の使用者はスラッシュの方が多いのだ。
歌手にたとえると、スラッシュは幅広く支持される定番アーティスト、縦棒は局所的に人気上昇中の新人アーティスト、といったところだろう。
それにしても、スラッシュの方が多く使われているのはなぜなのか。
日常生活で見る区切り文字
私たちの日常生活でも、区切り文字を見かけることは多い。
たとえばこれは、執筆中に飲んでいたモンスターエナジー。
底のあたりに"炭酸飲料 / エナジードリンク"とある。この飲料は炭酸であり、エナジードリンクでもあるわけだ。
また、原材料を見てみると、
表記の途中で "ガラナ種子エキス/クエン酸" と、スラッシュが入っている。
これは食品表示法により、原材料と添加物を明確に分けて書くことが義務づけられているためだ。
戸棚にあったパイの実、たけのこの里、かっぱえびせんを確認したが、いずれもスラッシュが入っていた。
他にも日付や分数の表記など、文章のごく基本的な段階でスラッシュは出番が多い。
そして、忘れてはならないのがURLだ。
URLはインターネットの根幹を成す要素。それがスラッシュ区切りとなれば、もうトドメを刺されたようなものである。
逆に、縦棒区切りの文字は日常であまり見かけない。縦棒で区切る人はどういう理由なのか?
いや、待てよ。
URLがスラッシュ区切りということは、プロフィールにURLを入れる人は縦棒区切りを使うのでは?
URLを散りばめたプロフィール文を考えてみた。
縦棒区切りの方が、整形されていて見やすい気がする。
よし、プロフィールに入れているURL数との関連を調べてみよう。
まずこれが、アカウントを「プロフィールに入れているURLの数」で分類したグラフ。最大で8個入れている人がいた。
これに、スラッシュの使用率、縦棒の使用率を重ねてみよう。
私の仮説が正しければ、URLが多くなるほど縦棒の使用率が高くなるはず……
そうでもなかった。
URL6個で使用率が逆転するものの、5個までだったらスラッシュが優勢。そして7個以上の人は「文字」ではなくスペースで区切っていた。
縦棒がいいと思うんだけどなぁ。
Webライターが使う区切り文字
さて、私はWebで記事を書く人間だ。より分野が近い人のプロフィールを参考にしたい。
よってここからは、Webライターのプロフィールを分析してみよう。
116万7386人から、名前もしくはプロフィールに "Webライター" が含まれる人を抽出した。合計は1589人である。
【補足】
"ライター"で検索すると"シナリオライター"や"コピーライター"の人もヒットしてしまい、ふるい分けが難しいため"Webライター"に限定した。
Webライターに絞って、スラッシュおよび縦棒の使用率を出した結果が以下の通りだ。
Webライター縛りを入れると、スラッシュ、縦棒ともに使用率がハネ上がる。界隈で推奨されている書き方なんだろうか?
人数がさほど多くないので、スラッシュ区切りと縦棒区切り、合わせて640人のプロフィールを全て読んでみた。(スラッシュと縦棒を併用している人もいる)
具体的に「何を区切っているのか」で分類しよう。
PR
まず目立つのが、「収入」「検索サイトの順位」「PV」など、WebライターとしてのPRである。
ライタースクールの受講歴などもこれに分類した。
記事のジャンル
PRの一種とも言えるが、書ける記事のジャンルを列挙している人も多い。仕事を依頼する人の立場に立った表記だ。
好きなもの
シンプルに好きなものや趣味を区切っている人もいる。
同じ趣味の人とつながりたいのかもしれない。というか #つながりたい と表明してたりもする。
だが、ここで疑問なのが次の書き方だ。
記事のジャンル?好きなもの?
単語を区切ってはいるものの、「書けるジャンル」なのか「好きなもの」なのか判別不能。こういう人は「ジャンル」にも「好きなもの」にもカウントしないことにした。
しかし意図が不明だ。この人に「サッカーの記事をお願いします」と依頼したら書いてくれるんだろうか。
Webライター以外の活動
本業のかたわらWebライターをしていたり、動画配信などもやっていたり。
Webライター以外の活動を列挙する人は多い。
「ファイナンシャルプランナー」や「アロマテラピー検定」など、Webライターと必ずしも直結しない資格もここに分類した。
経歴
Webライター以前に就いていた職業などを書いている人。"→"(矢印)でつなげている場合が多い。
そしてこの人のように、経歴からPRへと自然な流れを見せる例もしばしばである。
家族構成
家族構成もよく見かける要素。ちなみに「一人暮らしです」とわざわざ書いてる人は皆無に近く、ほとんどが配偶者と子どもの情報を書いていた。
子どもの情報にしても「2人の親」だったり「5歳と1歳の親」だったり、人によって詳しさが異なるのもおもしろい。
Webライターのプロフィールまとめ
以上、「PR」「ジャンル」「好きなもの」「他の活動」「経歴」「家族構成」の6分類が、プロフィールの主な構成要素である。
そして多くの人が、複数の要素をスラッシュ、または縦棒でつなげている。
プロフィールに入れている要素と、使っている区切り文字でクロス集計してみた。
全体的に縦棒の方がパーセンテージが高い。つまり「縦棒区切りの人は、プロフィールにいろんな要素を詰め込みがち」だとわかる。
特に「PR」の登場率がスラッシュを大きく上回っており、仕事を獲りに行く意欲をヒシヒシと感じる。
念のため、フォロワー数の中央値も、Webライターに限定して算出してみた。
やはり縦棒は強い。謎の安定感である。
自分のプロフィールを変えよう
さあ、ようやくこの記事の目的である。調査結果をもとにして、筆者のプロフィールを更新しよう!
まず、区切り文字は縦棒を使うことにする。
スラッシュに比べて利用者が少ないのにフォロワー数が多い事実。そこから得体の知れないパワーを感じたからだ。
では、縦棒で何を区切るのか?
先ほど分類したWebライター6要素のうち、縦棒区切りのアカウントが載せているトップ3の「他の活動」「PR」「経歴」を採用しよう。
それぞれ、自分の場合はどう書くかを考えてみる。
- 他の活動
今も載せている通り「プログラマー」である。
プログラミングを活用して記事を書くこともあるし、この記事がまさにそれだし、引き続き載せることにしよう。- PR
こうして記事を書いている筆者だが、執筆依頼の募集は特にしていない。
生活費を執筆業に頼っているわけじゃないので、収入の目標などもない。「Webライター」と名乗っていいものか微妙ですらある。
どちらかというと「お金を稼ぎたい」よりも「記事を残したい」動機が強い。
だから、私がPRできるのは「これだけお金やPVを稼げます」ではなく「こういう記事を書きました」の実績しかないのだ。
よし、「書いた記事の概要」をいくつか列挙することにしよう。- 経歴
ひとことで言ってしまうと「大学院卒→会社員」。
うーん、わざわざ書く必要あるんだろうか。話の広がりをあまり感じないんだが。
まあ、多くのWebライターが載せているのはわかったわけだし、ここは素直にマネをさせてもらおう。
ただし「大学院卒→会社員」だけだと空虚なので、少しばかり肉付けするのは許してほしい。
以上の検討により、「プログラマーであること&今までに書いた記事の概要&経歴を、縦棒区切りで書く」方針となった。
いま、プロフィールの「変更」ボタンがタップされた。
無味乾燥な自己紹介が、どんな変貌をとげたのか?
それは、君の目で確かめてくれ!
【補足】
本記事で調査対象としたTwitterアカウントの一覧は、こちらからダウンロードできます。(ファイルサイズ:6MB)
(執筆:フクイチ)