松屋の朝限定メニュー「ソーセージエッグ定食」(税込420円)が好きな人生をかれこれ10年以上歩んでいる。
- ソーセージ
- 目玉焼き
- サラダ
- 味噌汁
- 漬物
- 海苔
- 選べる小皿(ミニ牛皿すら選べる)
これらがついてくるソーセージエッグ定食は、それ以上もう何もいりません!と言いたくなるようなおかず力、ボリューム具合で僕の心と胃をつかんで放さない。しかもワンコイン以下のお値段で食べれてしまうこのコスパの良さ。完全食とはまさにこのご飯のためにあるのではなかろうかと思う。
けれども僕は今、松屋に行くためには片道20分、ドアtoドアなら30分はかけないと最寄りの松屋に行けないという松屋ディストピアに住んでいる。ネットでどれだけ世界が狭くなっても、松屋との距離は縮まらない。
ソーセージエッグ定食が食べたい。毎日でも食べたい。けれどもこのような時期に松屋のソーセージエッグ定食を食べるためだけに電車に乗って移動することは「100%OKです!」とは言えないだろう。
そうなると、僕の心の中のマリーアントワネットがこう囁く。
「食べに行けないのだったら、自分で作ればいいじゃない?」
というわけで、自分でソーセージエッグ定食を作ることにしました。どうせなら「ぼくのかんがえたさいきょうのソーセージエッグ定食」。これを目指しましょう。
【前提】最強=高級食材ではない
ここで “最強” とは何かと考えた時に
「じゃあミニ牛皿は松坂牛で、卵は烏骨鶏、ウィンナーはフランクフルト直輸入。味噌汁は富士の湧き水を備長炭で沸かしたものザマスね……」
と考えるセレブ脳では、きっと最強のソーセージエッグ定食は作れない。
例えばあなたの考える最強の野球選手は、音速の球を放つためにバズーカを構えているだろうか? あなたの考える最強の格闘家は、あらゆるものを粉砕するためにバズーカを構えているだろうか?
そう、最強を目指すからと言って、超えてはいけない枠(=バズーカ)がある。
「最強」だからってなんでも高級食材にすればいいわけでもないのだ。
【最強のソーセージエッグ定食①】
家にあった材料で作る「ソーセージエッグ定食 重装ver.」
自分で好きなようにソーセージエッグ定食を作れると決めたらもうたまらない。一刻も早くソーセージエッグ定食が作りたい。一刻も早くソーセージエッグ定食が食べたい。この気持ち、抑えきれない……!
恋が人を盲目にするように、ソーセージエッグ定食もまた人を盲目にしてしまうのだ。
そんなつもりで冷蔵庫のドアを開け、ソーセージエッグ定食の具材になりそうなものを探す。出てきたのがこちら。
なるほど、自宅にあるものでもソーセージエッグ定食がつくれそうですね。業務スーパーで買った「こだわり生フランク ハーブ入り」がエースとなりそうです。
さっそく取り掛かりましょう。
これをこうして……
こうして……
どーーーん!!
【ソーセージエッグ定食 重装ver.】
- ソーセージ
こだわり生フランク ハーブ入り。業務スーパーの誇る最強のアイテム。常備したい- 目玉焼き
ふつうの卵。価格の優等生。擬人化したら万人に愛される有村架純さんタイプ- サラダ
業務スーパーのマカロニサラダ。1kgあるけどつい買っちゃう。そして三日でなくなる- 味噌汁
アマノフーズの三つ葉入り赤だし。愛知県民じゃないけど赤だしが一番好きなんです- 漬物
たくあん。美味しそうだったので買っている- 海苔
海苔。普段は余らせがち。なぜなら他のおかずの攻撃力が高すぎるから- 選べる小皿
納豆。妻がよく買っている
生フランクのボリューム感が見た目にも派手な、ソーセージエッグ定食 重装ver.の完成である。
「男の子って……こういうの好きだよね」と、遠い昔にクラスメイトの女子が言った声がよみがえってきそうなボリューム感!
実際に食べる……いや、その前に何か忘れちゃいませんか、と。
そう! これ!
ビール!(発泡酒だけど)
松屋のソーセージエッグ定食は基本的に朝メニューなので、夜には売っていない。そのため、松屋のソーセージエッグ定食とビールを組み合わせるという禁忌は家でソーセージエッグ定食を作ったものだけが味わえる必殺技なのである!!(もちろん朝から松屋で飲むという選択肢もあるけどちょっと難しい)
最強のお供を手に、いざ実食!
ソーセージ、卵、ビール。
幸せはこんな近くに会ったんだねと言いたくなる組み合わせ。
そして、多少お行儀が悪いと分かっていてもついついしちゃうのがこれ、目玉焼き丼。
ご飯と醤油という組み合わせに、マヨネーズをオンすることで、もう永遠にご飯が進んでしまう。
そもそもソーセージエッグ定食は元祖ソーセージエッグ定食でも、
- ソーセージ = ご飯二膳
- 卵 = ご飯一膳
- 味噌汁 = ご飯一膳
- サラダと漬物と海苔 = ご飯一膳
と、一皿でご飯五膳は行けちゃうモンスターおかずなのに、今回はソーセージも目玉焼きもダブルにして、さらにボリュームのある生フランクを使ったものだから、ご飯十膳は軽くいけちゃうメガモンスター級の一皿になってしまった。
ご飯をお替りし、ビールをぐびぐびと飲んで完食。もう文句なしに星三つの出来栄えである。
ちなみに業務スーパーのこだわり生フランク。ここまで書いた今、ホームページで商品画像を探したら検索に引っかからなかったんだけど、まさか……販売中止??
だとしたらいきなり幻のソーセージエッグ定食になってしまった。罪なものを紹介してしまって申し訳ない。
【最強のソーセージエッグ定食②】
これぞ王道にして最強。「ソーセージエッグ定食 ジョンソンver.」
家の中にあるものでソーセージエッグ定食を作り上げた僕は、今度は食材を求めて外に繰り出した。
「最強のをソーセージエッグ定食を作る」という目標を掲げている今、目に映る食材全てがソーセージエッグ定食の材料にみえてしまう。
「ほぅ、このお漬物……ソーセージエッグ定食に合うかもしれない」「ポテトサラダ……定食にあるかもしれない」
選択肢は無限である。
とはいえ、頭の中にコアとなるアイディアは一つ持っていた。
最強という言葉を掲げてしまった以上、やはりこのソーセージを使ってソーセージエッグ定食を作らなくてはならないだろう。
それがこちら。
ジョンソンヴィル!
圧倒的なスモーキー感に、「生きててよかった」と思わせるおいしさ、ボリューム感。
お値段がややすることもあって日頃は自分へのご褒美という名目でしか買えないこのソーセージこそ、僕の考える最強のソーセージエッグ定食にふさわしい。
しかし! このままではジョンソンヴィルが最強だと言うだけで、このソーセージエッグ定食を最強と呼ぶには無理がある。
筋肉だけマシマシにしただけではセルに勝てなかったトランクスのように、ソーセージさえ美味しければ最強のソーセージエッグ定食になれるわけではないのだ。
そこで用意したのがこちら。
牛すじ肉!(興奮してちょっとぶれちゃった)
これをコトコト煮込み……
玉ねぎや生姜を合わせて、醤油や酒とともに煮込めば、牛すじ皿の完成である。
ジョンソンヴィルの持つ破壊力に着いてこれる心強い相棒として、ミニ牛皿よりもさらに味のこってりした牛すじ煮込み皿をメンバーに加える。これによって、定食内にかつてない調和が生まれるのである。翼君だけじゃない! 岬君もいるんだぞ! という安心感!
そして完成! ソーセージエッグ定食 ジョンソンver.!
【ソーセージエッグ定食 ジョンソンver.】
- ソーセージ
ジョンソンヴィル。この時点で勝利は確定している。ソーセージ界のエクスカリバー- 目玉焼き
ダブル。焼いた後少しフタをして蒸らして余熱で火を通すと綺麗に焼けます- サラダ
カットサラダにドレッシングわーってかけて、シナっとしたの食べるのが好き- 味噌汁
今回もフリーズドライ。けど馬鹿にできないというか、安定さで言えば自作より上- 漬物
恥ずかしい食べ方ですが、これにフレンチドレッシングかけるのも美味しいんですよ……- 海苔
いなくてもいいけど、いないと確実にその不在がばれる、DFにいると厄介なタイプ- 選べる小皿
牛すじ皿。この中で一番調理するのに時間がかかりました
ジョンソンヴィルが二本もある! けれどエッグもダブルにし、ミニ牛すじ皿も付け加えていることで、「ふふ、結局このチームはジョンソンだのみのチームだね……」とライバル校(すき家、吉野家)に言わせないバランスの良さがここにはある!
そして実食。当たり前だけどうまーーーい!
ジョンソンヴィルのスモーキーな味が、卵のマイルドに合わさって、これはご飯が進みまくる! そして攻撃的な味のジョンソンヴィルに、柔らかい味の牛すじ皿が着いてくることによって、食卓の味の緩急もつき、これはご飯がますます止まらない!
ご飯が止まらないということは、当然これ!
ビ――――ル!(発泡酒はクリアアサヒ派)
ご飯2杯お替りして、ビールも2杯お替りしちゃいました。てへ。
【最強のソーセージエッグ定食③】
土鍋で作る「ソーセージエッグ定食 一汁一菜ver.」
さて、ここまで二種類のソーセージエッグ定食を作ってきて、自作したからこその一つの悩みも出てきた。それは「片付けがめんどくさい」ということである。
松屋でソーセージエッグ定食を頼むときは、食べた後は「ごちそうさまでした」と手を合わせれば、後は店員さんが片付けてくれて、食器も何もかもきれいに洗ってくれる。けれど自作だとそうはいかない。
ソーセージエッグを作った後のフライパンにはじまり、ご飯、味噌汁、小鉢の皿複数、メインのソーセージエッグをのせた皿……洗い物がざっと一人当たり6~7種類はある。めんどくさい。洗い物がめんどくさいぞソーセージエッグ定食。けれどこれをさぼるともっと怖いことになる(妻によるキャラメルクラッチの練習台)ぞ、俺。
しかし、その時、私の心に語り掛ける人がいた。
「……ええんや」
この声、マリーアントワネットではない!
「……でええんや」
まさか!
「一汁一菜でええんや。」
土井善晴先生!!
土井善晴先生は、日本を代表する料理研究家であり、数々の著作やテレビ出演で、料理の楽しさ、すばらしさを我々に伝えてくれている方。
この方が提唱する「一汁一菜でよい」というアイディアの中に「具だくさんの味噌汁つくったらそれで充分ですやん」というものがある。(かなり簡潔にまとめておりますので、気になる方は読んでみてください)
実際の所、土井先生の本の中には野菜やベーコンをたくさん入れた味噌汁が出てくるし、卵だって入っている。
つまり。ソーセージエッグ定食を一汁一菜にまとめられたら、片付けものの量はかなり減るのでは?
今までは割と「派手さ」「ボリューム」に目を向けて作り上げてきた最強のソーセージエッグ定食だけれど「作りやすさ」「片付けやすさ」「SDGs」に目を向けたソーセージエッグ定食も作ってみようと思ったわけです。
で。材料はこちら。
味噌、卵、ソーセージ、カットサラダ、海苔、豆腐(選べる小鉢で選べるので)、漬物。
まぁ、材料は同じですよね。ソーセージエッグ定食ですし。
まずは土鍋に出汁を入れます。
ここで土鍋にしたのは、普通のお鍋で作ってお椀に入れるよりも、土鍋だったらそのままサーブできるので、さらに洗い物が一個減るからですね! あったまいい!
沸騰してきたらまず味噌を溶きます。
多分ここで「具材を入れてから味噌入れるべし!」とか「沸騰させたら味噌の風味が!」と流派が色々別れるとは思うのですが「おいしいものできたらええですやん……」と僕の心の中の善晴が囁いてくれているのでセーフ。
そしてここにウィンナー、卵、割った豆腐を入れます。豆腐は手で割りいれると、包丁とまな板を一切使わずに済むのでお勧めです。
そして煮立ったらカット野菜と海苔を投入。
ご飯と漬物をべつによそって置いたら完成!
【ソーセージエッグ定食 一汁一菜ver.】
- ソーセージ
今回は一袋200円くらいのソーセージを使用。通常バージョンとちがい、茹でてあるので歯ごたえ◎- 目玉焼き
焼いていないけれども、味噌汁の中にある卵って数ある卵料理でも上位な気がしませんか- サラダ
しゃぶしゃぶチェーンなんかで「意外に美味いな」って思わせるカット野菜しゃぶしゃぶの味がご自宅で- 味噌汁
鍋一杯の味噌汁。けどその包容力の高さにびっくり- 漬物
この定食における唯一の「菜」。ちょっとした清涼感をくれます- 海苔
まさかこいつがひたひたになるなんて……- 選べる小皿
豆腐。味噌汁に合わせるなら豆腐でしょってことで豆腐を選択。ボリュームを追求したいあなたは牛肉を入れよう!
すごい。洗い物が極端に少なくなったぞこのソーセージエッグ定食!
参考として「ソーセージエッグ定食 重装ver.」と比べてみよう。これだと7個以上の洗い物が発生するのに、一汁一菜verだと箸とスプーンを入れても5個しか洗い物がないのだ。
そして、味の方はというと……
以外にカラフルな見た目が食欲をそそり……
ラーメンに海苔が入ってるのが好きな人は、まず間違いなく病みつきになる味噌汁プラス海苔の美味さよ。
そして見るものを黙らせること必須のこのトロットロの卵!
土鍋一杯の味噌汁っていうのは案外腹に溜まるのね! ということでボリュームとしても満点。
一汁一菜と言う言葉の持つ清楚さのおかげか、食べた後にすがすがしさすら漂う、そんなソーセージエッグ定食が完成してしまったのである。
そして洗い物も超楽!!
……これ、本当に商品化してもいい気がするんですけど、どうですか! 松屋さん!
まとめ
- 手軽さアンドボリューミーの「重装ver.」
- 至高の素材によって完成する「ジョンソンver.」
- 環境にも優しい「一汁一菜ver.」
なんと3つもソーセージエッグ定食が作れてしまった。さらに言えばどれもこれも最強で、甲乙つけがたいものがある。
最強の名を冠するものが3人。それはつまり、真の「最強」という名を冠するためにはまだまだ研究の余地があるということなのではなかろうか。
「僕の考えた最強のソーセージエッグ定食」はゴールがない。故に進化し続ける。日々カスタマイズを考えながら、自分だけの最強のソーセージエッグ定食を作る。これは今後の新しい趣味になってもいい気がする。
そして僕らは時には原点に返るために松屋のソーセージエッグ定食を食べる必要があるだろう。松屋の場合には頼んだらお店の人が作ってくれるのである。何も準備せず、ただ待っているだけで目の前には豪勢な食事が用意され、そして「ごちそうさま」と言ったら文句も言わずに片付け、洗ってくれる。
それがワンコイン以下で提供されているのだ。
このおいしさとコストパフォーマンスの完璧なバランス。そういう意味では、松屋のソーセージエッグ定食が、本当は一番最強なのかもしれない。
僕の挑戦は続くのであった。
(執筆:三戸満平)