幅広い年代に人気のお惣菜といえば、ポテトサラダであろう。
白色でぽってりとしたその姿には安心感がある。
大皿でドンと出されても、お弁当にちょこんと添えられていても、喜びを提供してくれる。そんな汎用性までも兼ね備える愛されメニューだ。
しかし、定番で安心の人気料理なのだが、いまいち地味とも言えよう。
ポテトサラダに派手さを求める必要もないのだが、サラダとは程遠いハイカロリーを棚上げしてサラダを自称する図々しさがあるのだから、もう少し見た目にパンチがあってもよいのではないだろうか。
たとえば同じ「ポテト」でも、安納芋や紫芋を使ったら、ポテトサラダのイメチェンを容易く実現できるのではないだろうか。派手なポテトサラダを見てみたい。
先に結論を言うと、ギョッとする見た目のものもできた。
ただし同時に、芋本来の問題にも気づくこととなった。
材料が狂暴である
というわけで、さっそく紫芋と安納芋を手に入れようとしたのだが、実に困難であった。
近所のスーパーを3件くらいのぞいてみたが扱っていないし、通販サイトでもお届け日が未定とのこと。
材料調達の段階でこの企画は暗礁に乗り上げているのだが、PCにかじりついてアレコレ調べていると、味付けのされていないペーストが販売されていると判明した。
そんなわけで、手に入れたのがこれ。
迫力がある。
各1kg、計2kgの芋のペーストが届いた。しばらく食事に困らなさそうで、心強い。
ちなみに、この写真を撮影している時、ビニールの表面から芋の汁が染み出てきた。
半日くらい部屋の中が甘ったるい芋のにおいに包まれたので、新聞紙か何かを敷くと良い。
文庫本と比べるとこのようなサイズ感である。
一人暮らし用の冷蔵庫の冷凍スペースは芋でパンパンとなった。どうしよう。
派手芋の比較用として、普通のサツマイモとジャガイモも用意してみた。安心感のある見た目だ。
それぞれの芋でポテトサラダをつくる
通常のポテトサラダと同様に、芋を茹でてつぶしていく。
具材はシンプルに玉ねぎと人参のみにし、味付けはマヨネーズとコショウにした。
久々にポテトサラダを調理するので、まずは普通のジャガイモで試してみた。
マヨネーズとコショウを入れたあたりで「あ~、コレコレ」という香りがして、安堵した。
紫芋のペーストがまとまらない
というわけで、次に紫芋のポテトサラダを作っていく。
まず、解凍した紫芋のペーストを開封して皿に盛ったのだが……。
ボッソボソである。
水分が限りなく0に近い。これは予想外であった。
どうしようもならないので、「どうにかなってくれ~」と念じながらマヨネーズや野菜を加えていく。ポテトサラダを作りながら祈ったことがあっただろうか。
あと、派手なのが良いですね。ニンジンのオレンジが映えて、非常に怪しい。
祈りが通じて、どうにかまとまってくれた。透明だった玉ねぎが紫色に染まってしまった。
一方、安納芋ペーストはべちょべちょ
続いて、安納芋ペーストでポテトサラダを作っていく。
紫芋ペーストのようにボソボソなのかと思いきや……
べっちょべちょである。
芋によって特性があるのだろうか。
焼く前のホットケーキの液体のようなのだが、具材とは絡めやすい。
どうにか完成した。
開封時点の安納芋ペーストは、甘い香りが非常に強かった。
コショウやマヨネーズを加えてどのような味わいになったのか、楽しみである。
それぞれの芋のポテトサラダを食べる
サツマイモのポテトサラダを加えて、食べ比べてみた。
左上から時計回りに、ジャガイモ、サツマイモ、安納芋、紫芋、である。
ジャガイモ
ジャガイモのポテトサラダは、荒めにつぶした芋で作成した。
全体的に具材がゴロゴロしている料理となったが、特に変わった点はない。おいしい。
通常のポテトサラダと比べながら、残り3種を食べていく。
- 美味さ:★★★★☆
- 派手さ:★☆☆☆☆
サツマイモ
黄色いサツマイモのポテトサラダは、ほんのり甘い。
コショウの辛味が甘みとマッチしていて、ちょうどよかった。
濃い目の味付けに作ると、お酒とも合いそうである。
さらに、ジャガイモよりも食感がモサモサしていたため、食べ応えが抜群であった。
派手さはそこまでない。全体的に黄色ではあるのだが、淡い黄色であり毒々しさはない。
濃さがないため、コショウの粒まではっきりと見える。
また、具材の人参を目立たないものとしてしまい、ベターっと黄色を絵の具で塗ったようだ。
- 美味さ:★★★★☆
- 派手さ:★★☆☆☆
安納芋
一番おいしかった。
サツマイモのスイーツで使われる定番の食材ということもあって、甘みが非常に強い。
これは、サラダではなくデザートである。
「野菜が入っている健康なデザート」という位置づけが良さそう。
なお他のポテトサラダの倍くらいコショウを後追いで投入したが、甘みに飲み込まれてしまいまったく辛くない。負けました。
問題はその見た目。予想よりオレンジ色にはならず、黄色に落ち着いてしまった。
派手さがちょっと足らない。そしてべちょべちょ。
- 美味さ:★★★★★
- 派手さ:★★★☆☆
紫芋
今回検証した中では、一番調味料に染まりやすい素材であった。
見た目の改造という点では一番成功したといえよう。期待通りの紫である。
そして、見かけが凶悪なのに、ほかの具材に影響されやすいところがちょっと可愛い。
確実に食卓をにぎやかにするけれども、芋自体の味は薄いように感じた。
もったりとして弾力があり、案外クセがなく食べられる。
おとなしい子が、入学後にイメチェンを図って、髪やファッションを派手にする感じだろうか。
- 美味さ:★★★☆☆
- 派手さ:★★★★★
まとめ
ポテトサラダの見かけを改造することには、紫芋については成功したと言えそうである。
ギョッとする外見になった。
しかし、調理後に気づいたのだが、芋という食材の安心感を度外視していた。
見た目は派手にできたが、優しく包み込むような味わいからは逃れられない。
どうしても、アンバランスさが発生してしまう。
とはいえ、紫や黄色のポテトサラダを作ってみるのは発見が多くて面白い。
食材によって食感や味わいが大きく分かれるので、この秋は好みの芋を探求してみるのはいかがであろうか。
(執筆:千鳥あゆむ)