こんにちは、三戸満平です!
奈良県に住みはじめて10年目くらいになる、駆け出し奈良県民です。
そんな奈良に住んでいるとしょっちゅう出会う、「ある言葉」があります。
この言葉、奈良県民も自虐的に使ったりします。
(使用例)
県外民「奈良って何が美味しいの? 何食べたらいい?」
奈良県民「いやー、奈良にうまいものなしだからねー」
いやいや、奈良、いいところなんですよ?
かわいい鹿はいるし、
大仏はあるし(いる、なのか?)、竜田川の桜は奇麗だし、
日本で最初に開通した営業用ケーブルカーもあります(生駒市にあります)。ケーブルカーの先にはレトロな遊園地も。
でも!
この言葉が強すぎて、例えば東京の人が関西に旅行に来た時に
「昼は奈良でお寺とか見るけど、夜は京都(または大阪)に移動して、美味しいもん食べてホテルに泊まろう!」
となるため、観光地に人は来るけど、そのまま奈良に泊まってくれる人がいない(=お金が奈良に落ちない!)という悩みを聞くことがあります。
果たして本当に「奈良にうまいものなし」なのでしょうか?
いや、そうじゃないんです。奈良にも美味しいものはあるんですよ……!
目次
なぜ「奈良にうまいものなし」と言われてしまうのか?
そもそもこの「奈良に美味いものなし」という言葉。ルーツをたどってみると、自身も奈良に住んでいた文豪・志賀直哉が「奈良」という随筆の中で書いた
「食いものはうまい物のない所だ」
(出典:『志賀直哉随筆集』高橋英雄編、岩波書店、1995年)
という言葉が源流にあるようです。
しかしその直後の文章で、志賀直哉は「お菓子(特にわらび餅)や、豆腐、がんもどきとかは美味しいし人に贈ると喜ばれる」とも書いています。
志賀直哉もまさか自分の一部の言葉がパワーアップして、後々の奈良県民に影響を与えているとは思わないでしょう。いつの世も情報の切り抜きは悪影響を与えるのだな……!
私は奈良県に住み始めて10年近く。もちろん、不味いものばかり食ってるわけではありません。「うわ、これ美味しい!」と言うものもきちんとあるのです。
推測するに、奈良県はまず内陸県であるがゆえに海産物が弱いこと。そして、福岡県の「もつ鍋!博多ラーメン!」、大阪の「たこ焼き!お好み焼き!」のような、すぐに思い浮かぶ必殺グルメがない(もしくは定着していない)のが原因なのではと思います。
どっちかというと「奈良に美味いものなし」なのではなく「奈良の美味いものに知名度なし」なのかもしれません。
ならば! 今回はそんな奈良の美味しいものを紹介して、名誉挽回を図りたいと思います! 奈良よ、俺が一肌脱いでやるからな!!
奈良のうまいもの① 大和肉鶏
美味しいもので派閥を二分するのは、「肉」か「魚」でしょう。「豊後牛」や「下関のフグ」など、それ自体が旅の目的になるようなブランド肉魚がある県は強いですし。そう考えると「松坂牛」「伊勢エビ」をもつ三重県って最強だな。
しかし、奈良にも美味しいお肉はあるんですよ!
と言って「あ、鹿肉? ジビエかぁ~! ワインに合うよね!」と思った丸の内オシャレOLは今すぐ猛省してください。
奈良県民にとって鹿は「神の使い」。まさか食べようなんて思えるはずがない!(県境を越えた瞬間、害獣扱いされることもありますが)
奈良の美味しいお肉はこれ!
奈良県の地鶏である大和肉鶏。県内では一般流通もしている他、飲食店でも大和肉鶏の使用にこだわっているところも多く、観光時に食べることももちろん可能です。
肝心の味なのですが、多くの地鶏って「歯ごたえがある! むしろちょっと硬い! でもその歯ごたえの合間からくるお味が濃くて素敵!」というのが売りになっていると思います。
けれど大和肉鶏はそういう「硬さこそパワー!」という地鶏と少し違い、しなやかな肉質の中に味がしっかり詰まってる感じです。よくある地鶏が「北斗神拳」ならば、大和肉鶏は「南斗水鳥拳」という感じでしょうか。伝わってください。
というわけで買ってきました大和肉鶏。
例えばこれをですね、奈良の地酒で酒蒸しにしてみましょう。
今回はドラマ『ワカコ酒』でも紹介された、上田酒造さんの料理酒を使いましょう。
奈良県は、実は「清酒発祥の地」を謳っている県。そりゃ、昔から元祖パリピである貴族がいた場所なんですから、毎晩のパーティーとともに、酒造りも進歩しますよね。(清酒発祥の地は、他にも伊丹市など諸説あります)
味はもちろん、うまいもの×うまいものなんだからそりゃ美味いわ!と言わざるを得ない味。
酒蒸しにすることで大和肉鶏が適度な柔らかさになるのと同時に、お酒が濃い出汁となって鶏肉と融合しています。酒もご飯も進む味ですね!
ご家庭でもこんなに美味しく仕上がるんですから、プロの料理人が作る味は推して知るべしってやつですよ。
そして鶏肉と言えば、「竜田揚げ」も忘れちゃなりません。
から揚げと違い、下味をつけた鶏肉を片栗粉をつけてあげる竜田揚げ。サクッとした食感と揚げた鶏のパワフルな味に大興奮する人も多いと思います。
そしてこの竜田揚げの名前の由来は、揚げた鶏が奈良の竜田川の水面にうかぶ紅葉や光の様子と似ていることからきているそうな。風靡!
そのこともあって、竜田川が流れる奈良県生駒市では「たつた揚げプロジェクト」と名づけて竜田揚げを全面的に推しており、市内の各所で美味しい竜田揚げが食べられます。揚げた鶏大好き人間の私には何ともありがたい街です。
ということはマクドナルドが時たま思い出したように復刻するチキンタツタ、あれも広義で言えば奈良グルメなんですね! ありがとうマクドナルド。チキンタツタのCMにはぜひ宮崎あおいさんを起用してください。
というわけで奈良には美味い肉がある! みなさま是非覚えておいてください。
奈良のうまいもの② 大和野菜
食の指向は多種多彩。お肉はちょっとなーという人もいるでしょう。
その点ももちろん奈良はカバーしております。なんたって仏教が、すなわち精進料理が発達した都ですからね!
そんな人にはこちら! 大和野菜!
奈良県の伝統野菜である大和野菜。伝統野菜だと「京野菜」なんかがイメージされますが、奈良にもあるんですよね。
カブの「片平あかね」や水菜の「千筋水菜」など、季節によってさまざまな大和野菜が楽しめます!
奈良のうまいもの③ 高山かきもち/レインボーラムネ
肉と野菜。これでもう美味しいもの覇権はとったも同然なのですが、まだまだ推していきましょう。
お次はお菓子部門。これは多分、奈良住民でないとなかなか出会えない気がする一品。
生駒市の高山製菓と言うお店が作っている「高山かきもち」は、奈良県民のどのご家庭にもその入れ物の缶があると言われています。
その後引く中毒性の高さと言ったら、ぼりぼりと食べてる時ふと我に返って「あ、本当にこのままだとダメ人間になるかも……」と思ってしまうくらいです。こたつで寝転がって食べてる時に、そう思いました。
適度なしょっぱさ(しょっぱすぎないところがいい)と、ザクザクの食感。そしてかきもちならではのお米の味がぷーんと口の中に広がって、「あぁ、これって日本の味だよな」としみじみと思わさせてくれます。そしてどんどんと後を引くんです。
ちなみにこの記事のために二袋買ったのですが、二晩のうちにあっという間になくなっていました。ビールに合うんですよこれがまた……。
しょっぱいものだけじゃなく、甘いものもご紹介しましょう。
レインボーラムネ!
幻のラムネと言われるレインボーラムネ。時たまテレビでも取り上げられるのですが、買うためには抽選に当たる必要があり、その抽選倍率は40倍という話も。
でも奈良県のアンテナショップや、雑貨屋さんで小分けにされて売ってることもあります(ない時の方が多いですが)。ちなみにこれをふるさと納税の返礼品に出したら税収がめちゃめちゃ上がったそうです。ラムネ恐るべし。
一粒は結構大きめなのですが、口に入れるとシュワシュワとほどけていき、あっという間になくなってしまいます。
四色ほどあるのですが、実は全てがピーチ味。
生粋の奈良県民いわく、「通は少しシケたのを食べる」そうです。おためしあれ。
奈良のうまいもの④ 元祖・日本のうまいもの
最後にご紹介するのは、奈良の元祖うまいものにして、日本の元祖うまいものと言ってもいいかもしれません。
これが市販されているのはあまり見たことがないので、作ってみましょう。
まず、フライパンに牛乳を入れます。そしてひたすら煮詰めます。
そうです! 蘇(そ)です!!(奈良貴族爆笑ジョーク)
日本初期の乳製品でもある「蘇」。コロナの影響で牛乳が売れず余りまくったときに、ちょっとしたブームになりましたよね。
蘇は飛鳥時代から平安時代にかけて作られていたとも言われています。当時の都があった奈良の貴族たちのあいだで、大ブームの食品だったはず。つまりは奈良グルメの親玉みたいなものなのです。かつては宮仕え帰りに蘇を食べてその美味しさを歌を詠むのが、貴族のブームだったかもしれません。タピオカ飲んでインスタにアップする現代人とつながるものがありますね。
今回は何も味付けせずに作ってみたのですが、煮詰めただけの牛乳なのにとても濃厚な味になっています。ホットミルクの味を百倍濃くしたようなかんじです。
たくさんの味覚に満ちている今の私たちからみても「これは不思議……」となるような味なので、当時の人たちがもてはやしたのもわかります。(そもそも当時は「乳」が手に入りにくかったのも理由だとは思いますが)
奈良のうまいものを全部あわせて「奈良バーガー」を作る
肉に野菜にお菓子、そして乳製品まで、「奈良には山ほどうまいものがある」ことをお伝えできたのではないかと思います。
でも、ここで私は考えたのです。
奈良のうまいもの、全部まとめて食べたら最強のうまいものになるんじゃね……?
そんなときに出会ったのがこれ。
ハンバーガー……これだ!
バーガーの中に奈良の美味いものを閉じ込める。そしてできあがったバーガー、つまり「奈良バーガー」は、佐世保バーガー的なご当地バーガーとして君臨できるのではないか! よーし、いっちょ作るぞ! 奈良バーガー!!
メインとなるのは先ほど紹介した「大和肉鶏の酒蒸し」と「大和肉鶏の竜田揚げ」。二種類のバーガーを作ろうって魂胆です。
メインを彩る具材として、奈良の伝統野菜である赤かぶ「片平あかね」を用意し、
これを短冊形にカット。
さらに、先ほど紹介した「高山かきもち」をすり鉢でつぶします。
この荒く砕いたかきもちを、片平あかねの衣にして揚げてしまおうってことです。日本料理なんかでも時たま使われている技法のようなので、とっぴな料理というわけでもないみたい。
下味をつけた大和肉鶏に片栗粉をまぶし、片平あかねには高山かきもちの衣をつけ、フライパンで揚げていきます。
両方ともいい感じの色になったら、「竜田揚げ」と「大和野菜のおかき揚げ」の完成です!
おかき揚げは、今回は赤かぶを使いましたが、季節によって他の野菜にしても美味しそうです。レンコンとか美味しそう。
次はソース! 用意するのは奈良と言えばのこちら「奈良漬け」。
これを細かく刻みます。ビッグマックのピクルスと同じサイズをイメージしましょう。
これをボウルに入れ、火を通した卵と、マヨネーズを加えて混ぜます。
これで、奈良バーガーにこそふさわしいソース、「奈良漬けのタルタルソース」が完成です。
味見をしてみると、奈良漬けのちょっと癖のある味が卵とマヨネーズで和らいでおり、味に奥行きのあるソースに。軽い気持ちで作ったけれどこれ、もっと研究したら馬鹿ウマソースに変貌するぞ……!
そして「蘇」! バーガーのコクを出す役割であるチーズの代わりに、蘇を入れたいと思います。
蘇をラップに包んで成形すると、なんとなくチーズっぽい形に。
メイン・サブ・ソース・チーズと、具材は揃いました。いよいよ組み立てていきます。
まずはバンズ! けど奈良県のスーパーにハンバーガーバンズなんて売ってない!(地域差もありますけど)
仕方がないので今回は朝マックに習って「マフィン」を使うことにします。これにマヨネーズを少々塗って……
奈良の伝統野菜の一つ、「千筋水菜」を載せます。
普通の水菜よりも茎が太く、葉っぱも豪快についている千筋水菜。食感のシャキシャキ感がバーガーのアクセントになるでしょう。
ここに片平あかねのおかき揚げをのせ、
メインとなる「大和肉鶏の竜田揚げ」「大和肉鶏の酒蒸し」をそれぞれに載せます。
「大和肉鶏の竜田揚げ」には奈良漬けのタルタルソースを、「大和肉鶏の酒蒸し」には蘇をかけて……
マフィンで挟んで完成!!
これが奈良のグルメを集結させたバーガー、名付けて「N(奈良)Y(よいとこ)バーガー」!
結構見た目もボリューミーで、これはなかなかいいものが出来たのでは??
実食! N.Y.バーガー!!
さて、いよいよ実食です。まずはN.Y.竜田揚げバーガー!
結構大きく口を開けなきゃいけないので平安貴族には食べるの難しいかもしれませんが、「こんなんどうやって食べるんだ?」って大きさのほうが昨今のグルメバーガーっぽいですよね。
というわけでバクリ。
これは……作ってる時から何となく気づいていたけど、案の定うまい!!
食感面では水菜のシャキシャキに、カブのコリコリ。そして竜田揚げのサクッとしなやかな食感。歯に楽しい。食感の雅楽や!
そして下味をまとった大和肉鶏の味の強さが、ちょっとだけほろ苦さを持った奈良漬けタルタルソースによく合うのです。竜田揚げに載せた蘇も、「なるほど乳製品!」と言うようなコクをバーガーに加えていて、これはまさに味の正倉院や!
続いてN.Y.酒蒸し照り焼きバーガー。
さっきの竜田揚げが、下味やタルタルソースや蘇に「負けない」強さだとしたら、こっちの酒蒸し照り焼きバーガーはタルタルソースや照り焼きに使った醤油を上手に「従えてる」感じです。鶏肉自身の味を楽しむならこちらがおすすめかも。
もちろん食感の楽しさはこちらでも健在なので、ここでも正倉院の財宝眺めつつの雅楽鑑賞してるような、味の饗宴を楽しめます。
揚げても蒸しても味を損なわない、何よりも調理の素人があれやこれやしても美味しくなる大和肉鶏……本当すごいな!
というわけで大満足で完食。毒見係にひっぱり出された妻も「あら美味しい!」と高評価。
えー、ひょっとして私、奈良に奈良グルメの究極系生み出しちゃった……?
もしこれが一般商品化されたら、使われている食材とともに奈良ブランドを一気に外に発信できます。「奈良、美味いものあるじゃん!」となるのでは? 原宿の若者たちが奈良バーガー片手に竹下通りを闊歩する日も近いのかもしれない……!
奈良のうまいものはまだまだあるぞ! みんな奈良にカモン!
奈良のうまいものを集結させたN.Y.バーガー。これを食べれば「奈良にうまいものなし!」と言っていた県外の人も、自虐的にそう話していた奈良県民の人たちも「奈良はうまい! うまいぞお!」となるのは間違いありません。
奈良に美味いものはある! 今回私は声を大にしてそうお伝えしたいと思います。
今回ご紹介した食べ物のほかにも、奈良県には
- 揖保●糸を買うと奈良県民ににらまれる? 三輪市のめちゃうま素麺「三輪素麺」
- あまおうより美味しい!(福岡の筆者母談) 奈良の生んだ美味しいイチゴ「古都華」
- どの店で買うかで奈良県民は一悶着ある「柿の葉寿司」(どこも同じじゃない!けどどこもうまい!)
など、美味しいものが盛りだくさんなのです。
大阪や京都ばかりに目がいくい気持ちも大いにわかりますが、時には奈良に立ち止まってグルメを満喫すると、びっくりするような美味しい出会いがあるかもしれませんよ!
みなさん是非、奈良においでませ!
(執筆:三戸満平)
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