「芋煮」という料理を知っているだろうか。おもに東北地方で食べられる、里芋が入った汁物料理だと私は認識している。
東北地方のほうでは、友人同士で河原などに集まり、みんなで芋煮を作って食べる「芋煮会」という文化もあるらしい。
芋煮……それほど美味しいのだろうか?
私は九州生まれ九州育ち。山形県に行ったこともなければ、芋煮の作り方も知らないけど、試しに作ってみよう!
九州の民が勘で考えた「芋煮」
材料がなければ「芋煮」は作れない。スーパーに走り、思いつくままに「芋煮」の材料になりそうなものを買ってきた。
材料は(なんとなく)揃った。次は味付けだ。
醤油と本みりんでどうだろうか。あ、肉の臭みを消してくれそうな生姜も入れよう。温まるし。
では、材料を切っていこう。
アクのつよいごぼう、固いにんじん、味がしみにくそうな里芋は下ゆでして……
調味料とだし(カツオと煮干しを7:3で混ぜたもの)を入れて煮る。
味をしみこませるため、30分ほど煮込んでみた。
ついに芋煮(?)が完成した。
やや塩味は強いが、白いごはんが食べられる煮物が出来上がった。おいしい!
できあがった「芋煮」は、“正解”なのか
しかしこれからが本題だ。
想像だけで作った「芋煮」は、“正解”なのか……?
これは九州生まれ九州育ちの私が、想像だけで作ったものである。“正解”を知る人物に確認しなければ。
そこで、本場の芋煮を知る仙台在住の友人に協力してもらった。
「想像だけで芋煮を作ってみました。チェックしてもらえますか?」
「仙台風の芋煮だと、肉が豚肉で、マジで豚汁そのものって感じなんですよね。
しのむさんの場合は牛肉、醤油、みりんですが、これはたぶん山形風に近い感じですね。仙台風の芋煮とはそもそもが違う料理って印象です」
「仙台風は豚肉で、味噌味なのですね! 具材は合ってます?」
「仙台風の芋煮だとすれば、肉以外は全部OKだと思います! ごぼう、ニンジン、油揚げとか、豚汁の具的なものなので……」
「芋煮」は料理名ではない!?
「実際は、芋煮って河原でやることが多いんです。仙台市民は秋に、芋煮をバーベキューみたいな感覚でやってます。
人気の河原の近くのコンビニではこの時期、薪が売ってますし、スーパーで芋煮用のデカイ鍋を貸してくれたりもします」
「おお……! 芋煮はバーベキューだったのか。仙台の河原近くのコンビニ、見てみたい」
「仙台では芋煮って、料理というかアクティビティなんです。里芋が入ってる、豚汁的なものを集まって作るアクティビティですね。究極、芋が入ってなくてもOKです」
「芋煮は、料理名では、ない……!? 里芋も、入れなくて、いい……? ウソだろ……」
「ちなみに味付けの話でいうと、味噌は“仙台味噌”という、白〜茶色系の味噌を使うのが普通だと思います。
でも実際、芋煮というアクティビティの場をみんなで楽しむことが目的なので、味噌がなんであっても文句言う人は多くないと思います」
「芋煮、そこまで自由だったのか……。もっとカッチリ様式が決まってるものだと思ってました」
広辞苑にも「芋煮」は載ってない
仙台在住の友人の話を踏まえると、九州生まれ九州育ちの私が想像でつくったアレは、「芋煮」とも言えるし、「芋煮」とは言えない何かであることが分かった。(いや、何も分かってない?)
芋煮はアクティビティであり、料理名とはちょっと違う。うーむ。
念のため、辞書でも調べてみよう! 広辞苑第七版、登場!
ペラペラとめくっていくと……。
「いもなろ」
この次あたりかしら……。
「いもにかい」
??????
「芋煮」が、ない……!? あ、でも「芋煮会」ならある……!
いもにかい【芋煮会】
主に東北地方で、里芋を主とし、野菜・肉を加え、野外で煮て食べる集り。(引用:広辞苑第七版)
「芋煮会」の項目にも、“料理”としての記述ではなく、あくまで“野外で煮て食べる集り”として載っている。
広辞苑に「芋煮」の項目がないことからも、芋煮という料理よりも、そのアクティビティ性が重視されているのだろう。なるほど……。
「芋煮会」の修行をしておこう
「芋煮(会)」は料理名ではなく、アクティビティ、楽しみ方、娯楽として捉えられるものらしい。
芋煮(会)は、鍋のなかにとどまらない存在なのだろう。
COVID-19の影響が去り、大勢の人たちが集まっても安全な状況を迎えられた暁には、「芋煮会」を開催して祝おう。
そのために、これからはちょくちょく、里芋とその他具材を煮たものを作ろう。家で「芋煮会」の練習を積んでおこうと、心に誓った。
(執筆:しのむ)
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