ヘボコン2022 当日
2022年7月31日。全国、はたまた海外から、腕に覚えのない者たちがわらわらと集まってきた。
ここからはヘボコン2022本戦の様子をお送りする。
審査員として、プログラミング教育の権威である阿部和広先生がいらっしゃっていた。しかし我々はプログラミングなどハイテクなものは当然できるはずもなく、阿部先生がどれくらいすごいのかわかりかねていた。
もう一人の審査員は、高専ロボコンの競技専門委員をされてる田中昭雄先生。ふだんはロボコンを厳しく審査しているとのとこだが、ヘボコンを厳しく審査されたら全員アウトなので心配だ。
不安をよそにヘボコンがスタート。以下からアーカイブ動画を閲覧できる。
ただ、4時間以上もある動画なので、ここからは気になった試合をいくつか抜粋して紹介する。(動画よりいくつか画像を引用させていただく)
第2試合:こやしゅん vs 仂㌠(動画0:51〜)
2回戦からいきなりヘボコン最ヘボ賞3連覇の王者・こやしゅんさんが登場。本大会でもっとも注目された試合となる。
さきに対戦相手の仂㌠のロボット『ジャンピングイカパンチハリケーン』を紹介しよう。
イカモチーフのマシンで、仂㌠本人もイカのお面をかぶっている、イカ愛にあふれたチームだ。ロボット名のとおり、ジャンプ攻撃やイカパンチ、イカハリケーン(?)で攻撃する、設定モリモリのデカいマシンだ。
一方のこやしゅんさんのロボット『ハカリズム』。
「ヘボコンは縦横50cm以内、重量1kg以内のルール規定があるが、いままで測らずに大失敗してきた。そこでロボットそのものに測るものをたくさん組み込むことで、その場で測ることができる」
なにを言ってるかわからないが、要するに"はかり"がモチーフのようだ。よく見ると、砂時計や天秤、分度器、メジャーなどのはかりがたくさんついている。さすが王者、デカくて豪華で設定を盛り込みまくっている。
なおハカリズムの動力は「後部につけられたメジャーが巻き戻る衝撃」とのこと。失敗する予感しかしない。
とてもロボットを操作するとは思えないポーズ。はからずも対戦相手と同じイカっぽくなっている。
で、実際の試合だが……
動力となるはずのメジャーがむしろロボットを引っ張ってしまい、そのまま落下。こやしゅんさんは足を強打するという大惨事となった。試合展開よりも、足のケガを心配をする声が散見された。
その後に再試合となったが、2回目も同じくうまくいかず。最終的にはロボットの一部(メトロノーム)だけを取り出し、戦わせることとなった。
しかしこれでも両者ともまともに前進せず、こやしゅんさんのロボットが場外にでて自滅。仂㌠の勝利となった。
なんだったんだこの試合は。
第5試合:ちゅうわっと vs Live and JET Die(動画1:17〜)
続いては第5試合を紹介する。あわや「国際問題」になりかねない危険な試合だった。
こちらはちゅうわっとさんのロボット『一撃必殺黒ひげタンク』。
一撃で敵をたおすキャノンを搭載しているそうだが、内容はいかに。なお、タンクの部分はとくに動かないらしく、一撃与えたあとは何もできない。
対するは、Live and JET Dieのロボット『政治の重さを感じる』。
アメリカ合衆国議会議事堂とワシントン記念塔(を模した木材)を、大胆にあしらったロボットである。
ちなみにチームメンバーのみなさんはワシントンD.C.からきた英語教師らしい。ヘボコンもずいぶんと国際的になったものだ。
というわけでもう一度見てほしいのだが、つまりアメリカ合衆国議会議事堂やワシントン記念塔を、日本の海賊が砲撃しようとしているのである。万が一、海賊が国会議事堂を破壊してしまったら、バイデンもフルスイングで殴りかかってくるだろう。
それでは試合を見てみよう。
試合開始直後、黒髭タンクから弾がとびだす。しかし、ぽこっと飛び出る程度のよわさ。よかった、日米戦争は回避できそうだ。
その後、国会議事堂がタンクにたいあたり。
ここから膠着状態となるが、なぜかタンクがブルブルうなり始める。ちゅうわっとさんは「頼む! 動いてくれーー!!」と必死な模様。あれ、一撃必殺のあとは何もできないんじゃなかったっけ……?
けっきょく動きはなく、そのまま試合終了。政治の重さの勝利となった。
試合がおわりロボットを撤収するタイミングで、何かが出てきた。
ちゅうわっとさんいわく、「一撃必殺のタンクはかざりで、タンクの中から出てくる“不意打ち号”ロボットでの奇襲が本命だった」とのこと。作戦が汚いうえに不発で負けたため、これ以上に恥ずかしいことはないだろう。
第10試合:ミッフィ軍団 vs inuro(動画1:45〜/1:57〜)
本大会でもっとも大きなハプニングが発生したのが、第10試合だろう。
こちらはミッフィ軍団のロボット『アルティメット・ミッフィ』。
本当は3人で出場する予定だったらしいが、2人がいろいろあって来れなくなってしまったため、ロボットに顔写真を搭載したらしい。その友情にまず拍手を送りたくなるほほえましいロボットだ。
しかしこのロボット、ヘボコンなのにハイテクノロジーなのだ。レゴのプログラミングソフトをiPadで動かし、遠隔でロボットを操縦。ボールを落として空気砲を発射するそうだ。われわれ大人には真似できない、たいへん高度な技術である。
対するはinuroさんのロボット『カリフォルニアズグレートアメリカ』。わざわざヘボコンのためにアメリカから帰国したらしい。ヘボコンにかける情熱がすごいが、情熱の方向性がまちがっていないか心配になる。
肝心のロボットだが、アメコミヒーローをダクトテープでぐるぐる巻きにした、禍々しい機体である。対戦相手はこどもだが、怖がらないか心配だ。
と、ここでトラブル発生。
ミッフィ軍団のロボットだが、レゴのプログラミングソフトのファームウェアアップデートが始まってしまったのだ。こうなってしまっては、更新が終わるまでロボットを動かせない。
ここでおそらくヘボコン史上初の試合延期措置がおこなわれた。天をも味方(味方?)につけたヘボさである。
ファームウェアのアップデート後、あらためて試合が行われたが、空気砲で相手をたおせるはずもなく、inuroさんのロボットに押し負ける結果となった。
アップデートに成功しても、試合に勝てるとは限らない。厳しい現実をこどもに教える試合であった。
第12試合:モーニングチルドレンあさこ vs たかたけいた(動画2:00〜)
お次は「ヘボの系譜」を引き継いだ、暴力的すぎるたたかいをご覧いただこう。
モーニングチルドレンあさこ『みかん×ミカン モーニングルーティン-MIKAN-』。
みてわかるとおり、みかんがコンセプトのロボットなのだが、ロボットにみかんを投げつけて前進するとのこと。どういうこと???
ちなみにあさこさんは最ヘボ賞3連覇のこやしゅんさんの大学の後輩らしい。ついにこやしゅん関連のひとが出てきてしまった。ヘボの系譜が引き継がれている。いつかSASUKEの山田軍団みたいな組織をつくってほしい。
対するはたかたけいたくんのロボット『ダンボー』。おそらく6歳前後と思われる。
前方についてる棒で、敵をいきおいよく倒すとのこと。動力はプラレールや車のおもちゃとなっている。
こんな純粋無垢なこどものロボットに、みかんのバケモンみたいなロボットが襲いかかるのかと、試合前からあたまをかかえる事案である。
試合開始のカウント直後、あさこさんが本気のフルスイングでロボットにみかんを投げつけはじめた。農林省がブチギレそうな絵面である。けいたくんが泣きださなくてほんとうによかった。
最後はみかんロボットが前にたおれて敗北となった。そりゃ、縦にながいロボットにみかん投げつけたらたおれるだろう。
……と、ここで思い出してほしい。
こやしゅんさんもまた、ロボットを動かすための演出が派手なのだ。まちがいなくあさこさんは、こやしゅんさんの後輩であることがわかる。
余談だが、けいたくんのロボットは持ち前の馬力により、準優勝まで勝ち進んだ。けいたくんが嬉しそうでほんとうによかった。
第14試合:PikoPiko Factory vs じきるう(動画2:14〜)
最後に、筆者が登場した試合をみていただこう。
対戦相手はPikoPiko Factoryさんのロボット『音響兵器 タイガーランボルギーニ』だ。
大きい音で相手を威嚇するロボットとなっており、メガホンのなかにマイクとスピーカーが搭載されている。試合中はその場で歌って攻撃するとのこと。歌がロボットにどう影響するかはわからないが、コンセプトが攻撃向きじゃないのはお互いさまなのでよしとしよう。
こちらは筆者。
先述したとおり、担当編集に圧をかける『原稿提出ロボ(初稿機)』なのだが、なんとPikoPiko Factoryさんの本業が編集者だったのだ。これは奇跡的なマッチングである。いますぐ原稿提出しまくって、編集作業でヒイヒイいわせたい所存である。
では、試合である。
まあ、こうなるわな。
原稿提出ロボはまえに進む力にとぼしいため、一度押されるともうどうしようもない。ぐしゃぐしゃになった原稿がどうしようもなさを感じさせる。
演出を派手にするために、キーボードをかかげてカッコよく執筆ポーズをキメたが、こうなっては後の祭りである。
とうぜんの敗北となった。
最も技術力の低い人賞(最ヘボ賞)は誰の手に……?
そのほかの試合も、手にぬるい汗握る、だらだらぼてぼてのどうしようもないたたかいがおこなわれた。
2時間後には全試合が終了。ここからは最も技術力の低い人(最ヘボ賞)を決める投票タイムとなった。最ヘボ賞は会場およびYouTubeライブ閲覧者からの投票できまる。果たして最ヘボの頂は誰の手に……?
そして結果は……!
第10試合にてプログラミングソフトのファームウェアアップデートにより試合が延期となるトラブルに見舞われた、ミッフィー軍団の名前がよばれた!!
投票のため最ヘボ賞にえらばれた理由はわからないが、やはり奇跡的なタイミングにきたアップデートが観覧者のこころに響いたのだろう。われわれ大人も、Windowsアップデートなどに日々悩まされている。
ミッフィー軍団さんからは「すぐ負けたのに賞をもらえて嬉しい」とのコメントがあった。たしかに負けて賞をもらえるのはヘボコンくらいだ。
……さて、記事前半で述べた「最ヘボ賞をとるための3つのポイント」を覚えているだろうか。
- デカい
- 演出が派手
- 設定を盛りまくっている
ここに、「予期せぬトラブルに巻き込まれる」をくわえて、4つとしたい。
狙って最ヘボ賞をとるのは不可能なのだ。“ヘボの神さま”に愛されたロボットが、最ヘボとなるのだ。……自分で言っておいてなんだが、それってほぼ疫病神だなと腑に落ちた。
なお審査員のお二人からは、「戦後教育の敗北」「国辱にならないか心配」「大人にはもう期待できないので子供たちに未来を託したい」との厳しいお言葉をいただいた。ド正論である。
こうしてヘボコン2022は幕をとじた。
こう、ずらっとロボットを並べると、小学校の児童発明くふう展にも見える。実際は9割くらいが大人がつくったものであり、小学生のほうがもうすこしマシなものをつくれるだろう。
やはり未来はこどもたちに託すべきだ。
【おまけ】
最後まで読んでくれたみなさまに、原稿提出ロボ(初稿機)で実際に使われた原稿をプレゼント! ダウンロードはこちらから。
※誤字・脱字・衍字・引用だらけのひどい原稿です。ブラックジョークとしてあえて低品質に仕上げています。苦情はいっさい受け付けません。
※「この原稿を参考にライターをはじめました!」などはぜったいにおやめください。担当編集や読者に怒られます。
【後日談】
なぜか日経新聞にカッコいいポーズの筆者が載ってしまいました。辱め?
(執筆:じきるう)
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