はじめまして、もぐおと申します。
みなさんは不妊症について考えたことはありますか?
私はある出来事が起こるまでは真剣に考えたことはありませんでした。
え? なんで考えたことがなかったって? そんなもんパートナーがいないからに決まっているだろこのバカチンが~~~~(長い髪を掻き上げながら)
それでもこの一件は色々と考えさせられました。
パートナーがいないくせに子作りのことを考えてしまう出来事とはなんなのか。そしてもぐおの身に何が起きてしまったのか。
「もぐおのタマわずらい物語(精索静脈瘤治療体験記)」スタートです。
ある日突然襲い掛かった “下腹部の違和感”
夏の日のことだった。この年の夏はとくに暑く、いままでの夏で一番アイスを食べていた気がする。
暑いと当然のように寝つきが悪くなる。私も例外なく寝苦しい夜を過ごしていたが、朝起きたら暑さとは違うダルさを察知した。
「このダルさの原因はどこからだろう」
そう自分の胸に手を当てて体を研ぎ澄ませていたら、次第に両手が下腹部のほうに移動していた。誰に見られているわけでもないのに、咄嗟に股間だけ隠した人みたいになっていた。
なぜそうなったのかと言うと、下腹部に違和感があったからである。しかも ”タマ” から来るタイプの体の火照りとダルさだったのである。
「あなたの違和感はどこから?」
「私はタマから……」
「それならピンクのVideo!」
「あなたーの性癖(クセ)に狙いをきーめて♪(以下略
というくだらない事を考える余裕はまだあった。
しかし次第に違和感だけではなく、痛みも感じるようになったのだ。
クソみたいな替え歌を歌った数十分前の自分に金的をしたくなった。
そうなると、流石に病院へ行ったほうがいいと思った私。
単刀直入に上司へ
「タマが痛むので本日お休みします」
と言うのは厳しさ満載なので、
「腹痛が酷いので休みます」
っていう、いかにも仮病っぽいメールを送った。下腹部の痛みは実質腹痛なのでセーフ。
違和感の謎を解消するために、家の近くにある泌尿器科を検索した。
意外と家の近くにも泌尿器科を専門としているクリニックがあったので、そこへ足を運んだ。
このとき履いていたパンツはトランクスだ。極力タマへの負担を減らすように工夫が必要だと思い、ボクサーパンツから履き替えた。タマが痛むと男の直感が冴え渡るのである。
泌尿器科に到着したらまずは問診票を渡された。受付のお姉さんに
「タ、タマに違和感があって身体が火照ってダルいんですぅ///」
と口頭で伝えなくて済むことに安堵した。
「先生が見る前に私が確認してもいいですか……///」
的な展開はマジでいらない。本当にいらない。もう冗談を行っている余裕はないのだ。そういう展開はピンクなVideoの中で勝手にやらせておけばいいのだ。早く診察してくれ。
久々にトランクスを履いてタマの解放感を味わいながら問診票を記入し、受付のお姉さんに渡した。
解放感があるとはいえ下腹部が痛むので、スッキリしない気分のままテレビで放送していた『スッキリ』を見ていたら名前を呼ばれ、診察室に通された。
先生はもちろん男性なので安心して診察を受けられる。自分のタマの症状を伝えた後にパンツをおろされ、触診された。
先生の手がかなり冷えていたのでタマヒュンした。
何で私がタマを通して、先生の手に熱を与え続けているのだろう……。
なんてくだらないことを考えていたら、何やらヒンヤリとした液体をタマに塗られた。
ペロ……これはペペローションか…?!
というコナンばりの推理をしたと思ったのだが、当たり前のようにぺぺローションではなかった。超音波検査を行うための専用ローションだった。私は名探偵にはなれなかった。
妊婦さんが胎児の様子を見るときのように、タマに機器を当てられて検査が始まった。
すると何やら異変に気が付いた先生は神妙な面持ちで私にこう告げたのだった。
「これは ”精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)” っていう先天性の病気だね」
「えっ、何なのその病気???」
神妙な面持ちの割にはさらっと病名を告げた先生、咄嗟にタメ口になる私。そしてヌルヌルな下腹部。
自分のタマが先天性の病気であることを知った私はショックというよりは、「なんーだ、ちゃんと病気だったのか」という妙に納得してしまい、安堵感が強かった。
精索静脈瘤ってなに?
ここで精索静脈瘤という病気について簡単に説明したいと思う。
(ちょっと難しい話なので、興味のない人はザーッと下までスクロールしてください)
精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)とは、精巣のすぐ上の心臓に戻る静脈である蔓状静脈叢(つるじょうじょうみゃくそう)の血液が逆流し、精巣の周りに静脈のこぶができてしまう状態を指す。
精索静脈瘤は、一般成人男性の約15%にみられ、世間的にはマイナーな病気だというイメージだがけっこう患っている人は多いのだ。静脈瘤ができることで静脈内の血流が逆流してしまい、血流の悪化や血液温度の上昇が起こり、精巣が影響を受ける。そういった症状がみられると「男性不妊」の原因となってしまうのだ。
これはヒンヤリとした思いをした超音波検査によって、症状が出ているか簡単にわかるらしい。
なぜ静脈内で血液が逆流するのかというと、静脈内には血液が心臓に向かって一方向に流れるよう、逆流を防ぐ「弁」が存在している。この弁の機能が低下しているために血液の逆流が起こるのだ。どうやら私の弁はしょぼかったようだ。
また余談だが、精索静脈瘤は解剖学的な理由から左側のタマに発生しやすいらしい。左内精索静脈が合流する左腎静脈は、大動脈と上腸間膜動脈という血管に挟まれており、血液が逆流しやすいとのこと。例えるなら大きい道路がはちゃめちゃに交わっている場所みたいな。それだけ道路が交差していたら道を間違える事だってある。そうだろ??
そんな血管事情から私も左側のタマで症状が出ていた。私の御子息(男性器)は左曲りなのだがそれは全く関係ないらしい。
(参考:Medical Note)
……とまあ、簡単にいうと左側のタマのなかに「こぶ」ができてしまい、それが血管を圧迫して熱をもったり血流の循環を悪くしたりしている、ということらしい。
しかもそれが原因で、男性不妊になってしまう可能性もあるとか。なんてこったい。
ちなみにタマは熱を持つと冷やそうとするために垂れ下がり、逆に寒いときは縮むのだが(タマの所有者ならわかると思う)、私のタマは20歳くらいのときからなぜか常に垂れ下がっていた。
そうなのだ、私のタマは病気により常に熱をもっていたために垂れ下がっていたのだ。
この病気は手術をする以外に治す方法がなく、私も手術をすることを勧められた。
「手術しないとタマがメルトダウンしちゃうよ? それでもいいの?」
と、先生に脅されたら治さないといけないじゃないか。そして将来結婚したときの子作りで上手くいかなかったら自分自身を責めなければならない。それは悲しいので手術することを決意した。
初めて行った “義務感のあるご自愛”
手術ができる大学病院を紹介してもらう前に「ちゃんと精子が機能しているか、精液検査をしてみましょう」という打診があった。
たしかに、すでに私の子種が手遅れの可能性だってある。将来の子作りのためにも、今のうちに確認しておきたい。
精液検査というと泌尿器科にある個室に通されて、個室の中でご自愛(自慰行為)をするという想像をしていた。しかし私が通っていた泌尿器科では自宅で採取する方法も選択できた。
私はご自愛において ”いつもの環境” が大切だと考えたため、自宅採取を選択した。男性諸君は精液検査をする際にどのような選択をするか問いたい。
自室といういつも通りの場所で、いつも通りのオカズを選ぶことで、元気な精子が出てくるのではないかと思った。
決して科学的根拠はない。泌尿器科で事前に渡された紙コップとスポイト、プラスチック製の大きめの試験管を渡された。
これを用いてご自愛をした。
いつもはティッシュペーパーを3枚重ねにして出しているのだが、今回は紙コップに向けて出さなければならない。
そう考えるとそもそもどこで検査しようが平常時ではないことに気が付いてしまった。
しかしそんなことは関係ないのでオカズを探してご自愛を開始した。
すると何ということでしょう。
フルトランス状態にならない、半トランス状態にしかならないのだ。
これは確実にピンチだ、ご自愛でピンチになることなんて母親に見られた時ぐらいだ。
これだけ義務感の強いご自愛は初体験だ。誰にも見られていないのに、誰かに見られているような気がした。
公開ご自愛をしている気分だった。
このままだと元気のない子種が出てしまうが仕方ない、しっかり狙いを定めて紙コップに射精した。
そもそも狙いを定めた射精ってなんだよ。本来の子作りの目的から逸脱しているじゃないか。
出てきたものはカルピスウォーターをさらに薄めたようなケチ臭いものだった。
とてつもなく不安になった、病気うんぬんの問題じゃない気がしてきた。
悔いても仕方がない。自分のコンディションの悪さも自分の実力だと思い、試験管に移して泌尿器科に持っていった。
───後日、検査結果が出た。
結果はなんと異状なし。
私のコンディションとは関係なく、タマはしっかり仕事していたので私の不安は解消された。
ただ精液に問題がないとはいえ「手術しないとタマがメルトダウンしちゃうよ? それでもいいの?」という先生の言葉は変わらなかったので大学病院の紹介状を書いてもらい、1ヶ月後に大学病院にて受診したのだった。
あと精子の活動は、精液の濃さや量は関係ないと実感した瞬間でもあった。
やはり子作りが目的ではないセックスをするときは避妊必須だわ。
「先っぽだけだから」
とか
「挿入してもそのまま出さなきゃ大丈夫」
ってマジで通用しないぞ。みんなも気を付けような。
手術までの段取り ―どんな手術を行うの?―
大学病院では精索静脈瘤の手術のエキスパートである先生に診察してもらった。
その先生が勤務している場所は東京都板橋区にある帝京大学医学部付属病院であった。
比較的家からも職場からも近いので、診察を受けることに対しては何の不自由もなかった。
初めて大学病院の泌尿器科で受診した際にも超音波検査を行った。
今度は冷え性ではなかった。先生の手はほんのりあたたかかった。恋が芽生える5秒前。
ヒンヤリしたローションを塗られるのは慣れない。
診察中、再度手術を勧められたので日取りを決めた。大学病院で診察を受けたのは8月中頃だったのだが、手術は10月1日に行う事になった。
約1ヶ月間、タマわずらいと向き合いながら生きていかなければならないが、精索静脈瘤治療の権威である先生なので手術日程がけっこう埋まっており、これでも早い方だとのこと。
いよいよ手術の日取りも決まり、私も完全体になる日が近づいてきた。
私が受ける手術は「低位結紮術(ていいけっさつじゅつ)」というものだった。なんだその必殺技みたいな名前は。
【「低位結紮術(ていいけっさつじゅつ)」とは?】
鼠径部(そけいぶ・足の付け根のあたり)を局所麻酔したのちに切開し、顕微鏡下で細かい静脈を縛って固定し行う手術のようだ。切開の場所は足の付け根あたりから少し上の場所を2.5㎝程なので、術後に傷は陰毛に隠れて目立たなくなるという。術後にフルパイパンにしたことが無いのでわかりかねるが、パイパンにしたら恐らく傷が把握できると思う。
この方法だと体の負担が少なく、後遺症も少ないとされている。入院も1泊2日と、拘束時間も短い。ただし手術は健康保険対象外で、だいたい初診から退院するまでで22万円程度かかるとのことだった。
(参考:帝京大学医学部泌尿器科アンドロロジー診療)
初めての入院生活
2017年10月1日、私は物心ついてからは初めての入院をした。
入院の日はけっこう朝が早く、前日は草野球の試合を行っていたうえ、いつもより多い荷物を持って通勤電車に乗ったため、かなりしんどかった。
病院に到着すると病室に移動しベッドに通された。
可愛い看護師さんが担当ということでテンションがあがったが、翌日には闘いが待っている御子息は大人しかった。(当たり前だ)
入院中の食事は病院食だった。意外と美味しかったことを覚えている。ただ量が少なかったので売店でグミとスナック菓子を買って食べていた。
入院病棟にはシャワーもついており、清潔感を保つことが出来た。
何人かお見舞いに行こうかと言ってくれた人もいたが、月初で死ぬほど忙しいからやっぱり無理だ!!!と言われた。気持ちだけでもありがたい気持ちにあふれていた。
病院のベッドは寝やすく、消灯時間には寝付くことができた。
手術前日は驚くほど緊張していなかった。
入院するのも新鮮で、仕事も休めてネットも迷惑かけない程度であれば使用できた。読書するために本も持参し、まるで丁寧な暮らしをしているようだった。
これが1週間以上の入院だとしたら確実に飽きていたし、仕事のメールが溜まってタマが治っても地獄だったかもしれない。溜まるのはストレスではなく性欲ぐらいで良い。
手術当日
手術当日の朝は早かった。朝6時ぐらいに起床した。
基本的に病院の朝は早いことを再認識した。
起床後、体温と血圧を測って何事もないような体調であることを確認した。
そして痛み止めの鎮痛剤を飲んだ。口から飲むタイプとお尻から飲むタイプがあった。
お尻から飲むタイプは自力で入れることが不可能だったので、可愛い看護師に入れてもらった。看護師との最初で最後の共同作業は楽しかった。
その後は手術室に移動した。道中、多くの患者が移動式ベッドの上に乗って移動していたのを見かけた。
朝からこんなにも手術を受ける人が多いのかと感心したと同時に、タマの手術をしているのはおそらく私だけだと思うと誇らしくなった。
嘘です緊張でベッドの上で震えていましたごめんなさい。
手術台まで移動した後は股間の毛をバリカンで処理されてから局部麻酔を打った。人生初パイパンがこんな形になるとは思わなかった。
そして股間だけ感覚がなくなっていくのも非常にシュールである。鎮痛剤や安定剤、麻酔のフルコンボで感覚がなくなったところで手術が始まった。
それでも手術している箇所が引っ張られている感覚があった。
しかしそんな感覚も次第に薄れてきた。人間ってどんな状況でも慣れるのだ。
そしてだんだん心が穏やかになってきた私は眠くなったので手術中寝ていたのである。
局部麻酔なのにコスパのいい身体をしているのだ、羨ましいだろ?
私は能天気にも程があるので、なんの不安も感じずに寝ていた。
すると私の身体では授業中に寝てしまっている時の感覚だったのか、
「ビクッッ!!」
手術なのにも関わらず、寝ピクしてしまったのだ。
さすがにこの手術に関して百戦錬磨の先生にも
「ちょっと勘弁してくれよw」
と言われました。
ちょうど血管を結んでいる作業をしている最中だったらしく、静脈瘤どころか血管が破れるところだった。みんなも手術中の寝ピクには気を付けような。
手術後
手術後は昼飯を食べてから退院した。傷が小さいとはいえさすがに痛んだのでタクシーに乗って帰宅した。
そしてタクシーに乗っている間に、私のタマが劇的に変わっていることに気が付いた。
なんと、タマが垂れずにしっかりと戻っているのだ!!!!
元の位置に収まっている感覚を、手術した後すぐに体感することが出来たのだ。
これには医学の力に感動を覚えずにはいられない。
───昔、大学時代の部活の友人と風呂に入っているとき、友人は私のご子息を見てこう呼んだのだ。
「タマ裏サイバイマン」と。
部活の後のように熱を持った状態だと、タマがさらにデカくなりサイバイマンを栽培している状態になっていたのだ。もうそんなことも言われなくてもいいのだ。
また、野球でバットを振る際に振り子のようにタマが動いて内ももに触れる “リアル振り子打法” にもならなくていいのだ。リアル振り子打法なんてデメリットしかない。そんなことより自分のナイススティックで夜のホームラン王になりたい。痛みが消えればいずれそんな日もやってくる……! そう思うと涙がこぼれてきた。
その後も検診を行ったがしっかりと精索静脈瘤の症状が治ったことも確認され、傷口も問題なく塞がったのだ。
一件落着といったところだ。病院関係者のみなさん、本当にありがとう。
そして病気について心配してくれた友人がタダでソープランドに連れて行ってくれた。
正しくはソープに行きたいからもぐおオススメのお店に連れて行ってくれと言われたのだった。
完全体のタマを手に入れた私は自慢のナイススティックで無双して夜のホームラン王になれたのだった。夢はすぐに叶ったのだ。万全の状態で遊ぶのは最高だね。その後友人は風俗にハマっちゃうし。
おわりに
初めて入院して手術した病気がタマだったというのは、なかなかネタが尽きない男だなと自分でも思った。
でもこの話をわざわざこの場を借りて書きたかった理由はただひとつ。
不妊症は女性だけの問題ではない。
ナイススティックで夜のホームラン王になったとかいう下らない言葉を言いたかったわけでもないし、タダで風俗に行けた自慢をしたかったわけでもない。
子供を作るということは男女がセックスをしなければできないことは周知の事実である。しかしなぜ不妊治療を相談するのは女性が中心なのだろうか。
子作りは女性と男性、双方がいないと成り立たない。男性にも不妊の原因がある可能性も考えられるのだ。
私は精索静脈瘤という病気だった。自分が当事者にならなければ気がつかなかったと言えばそれまでかもしれないが、いまはインターネットを通じて誰もが容易に発信できる。
この体験談が誰かのもとに届いてほしいと本気で思った。パートナーと子供ができなくて悩んでいる人たちは、ぜひとも夫婦で病院に行ってほしい。一人では気づけないこともあるし、夫婦の悩みは夫婦で共有してほしい。
また病気について詳しく聞きたいと思った方は、何かしらの方法で私に聞いてほしい。可能な限りで答えていきたいと思っている。
長い文章を読んで頂きありがとうございました。
もぐおでした。
(執筆:もぐお)