去年、富士そばの「タピオカ漬け丼」がSNSを騒然とさせたのは覚えているだろうか。
「ネタメニューだ」「笑いに走った」といった多数の軽んじた思いに反して、なかなか美味しいぞというレポートが次々とあがってきた。
タピオカのしょうゆ漬けが世間に認められた瞬間である。
そうか、タピオカにはほぼ味がないから素材同士がぶつからず、しっかり漬かるんだな。
え、それならほかの “漬け” でも美味しくなるんじゃないの?
こんにちは、高下(こうげ)です。
室内なのに右から風が吹いてそうな寝ぐせで失礼します。
タピオカのしょうゆ漬けが最高なら、もしかしたらしょうゆ以外でも漬け込んだら味の産業革命がおこるんじゃないだろうか。
念のためクックパッドでタピオカのレシピを検索したところ、ほとんどが料理に混ぜ込んで食感を楽しむものばかりで、漬け込むレシピはなかった。
こ、これはブルーオーシャンだ…!
去年はどこにいってもタピオカは在庫切れだったが、今や人々の関心はマスクに移り、タピオカミルクティー屋さんはマスク屋さんへと変貌を遂げた。
立ち上がる時は今だ!
タピオカブームは終わらせないぞ!
漬け込むラインナップ
タピオカ、余裕で買えた。
750g(タピオカミルクティーおよそ37杯分)で1,000円。爆安の極じゃん。
そして漬け込むラインナップはこちら。
料理のさしすせそである「砂糖」「塩」「酢」「しょうゆ」「味噌」。
漬けるといえばの「ぬか漬け」「浅漬け」「塩糀」。
ちょっとだけ余っていた「赤ワイン」。
それとうっかり並べ忘れた「めんつゆ」「各種スパイス」。
以上の漬け込み十一天王による、タピオカをオレ色に染める選手権である。
天王にしちゃ多いな。
茹であがったタピオカを少しずつ小袋に移し、調味料などを加えていくゴールデンウィークを過ごすとは思わなかった。
袋をしばって味が染み込むまで寝かせる。
スパイス漬けは香りがビニール袋を貫通して漏れ出たので、さらに厳重に包んだ。
ひと仕事終えた達成感からチャーハンにトンカツを乗せて食べた。
これぞゴールデンウィークである。
いざ食べ比べ
お皿に盛り付けると、なかなかそれっぽく見えるのではないか。
“それ” がどれかはわからないけど。
いざ実食!
【1品目】めんつゆ漬け
おお、ちゃんと美味しい。
まぁしょうゆがいけるなら、めんつゆがダメな道理がない。
まためんつゆの万能性を世間に知らしめてしまった。
1枚紛失してしまっても大丈夫なように予備で入っている白いトランプくらいオールマイティである。
【めんつゆ漬け】
■美味しさ
★★★★☆■タピオカっぽさ
★★★☆☆■見た目のみたらしだんごっぽさ
★★★★★
【2品目】味噌漬け
硬い! 味噌が水分を吸ってしまったのだろうか。
タピオカ本来の食感はなく、開封して半年置いたハリボのグミくらい硬い。
そして濃い。まるで美味しいかどうかの判断がつかない。
ただ、成功か失敗かを問われれば失敗だと答えるだろう。問われればね。
大至急、水が必要。
【味噌漬け】
■美味しさ
★☆☆☆☆■タピオカっぽさ
☆☆☆☆☆■水を飲まなきゃやってられない度
★★★★★
【3品目】赤ワイン漬け
梅干しみたいな見た目。食べずして酸っぱさが伝わってくる。
しかし待ってくれ。これは赤ワインだ。
口に入れてみると……味がない……食感もよくわからない……。
乱世の食べ物?
これならタピオカ赤ワインにして、ふっといストローで吸ったほうが世は乱れないのでは。まっこと無の味わいぜよ。おっと、心の坂本龍馬が出てしまった。
【赤ワイン漬け】
■美味しさ
☆☆☆☆☆■タピオカっぽさ
☆☆☆☆☆■無度
★★★★★
【4品目】砂糖漬け
砂糖がすっかり水分を吸ってしまった。
しかしタピオカとはねじれの位置にあるが、これはこれでいける。
おばあちゃんちによくある、寒天に砂糖をまぶしたようなお菓子みたいだ。
検索したらパート・ド・フリュイというらしい。なにそのオシャレなネーミング。おばあちゃんちにある寒天に砂糖をまぶしたやつだぞ。
【砂糖漬け】
■美味しさ
★★★★☆■タピオカっぽさ
★☆☆☆☆■パート・ド・フリュイっぽさ
★★★★★
【5品目】塩糀漬け
見た目が完全にアウトになってしまった。
糀の力でタピオカが溶けてしまったのだ。
えっ、発酵?
もはや一体化してしまい、ただ塩糀を食べている気分だ。
もしかして、犯人が凶器を塩糀の中に隠したら完全犯罪になるのでは?
なお、かろうじて残っていたかけらを食べたら3日くらいかみ続けたガムの食感だった。
【塩糀漬け】
■美味しさ
★☆☆☆☆■タピオカっぽさ
☆☆☆☆☆■元ガムっぽさ
★★★★★
このへんで気分転換にフリー素材のネギをご覧ください。
それでは後半戦いってみよう!
【6品目】酢漬け
見た目はいい感じに漬かっていて、小料理屋の小鉢で出てきそう。
いい塩梅のすっぱさで、まるでピクルスである。
らっきょの代わりにカレーに添えてもいけるレベルだ。
ただ、タピオカとしてのアイデンティティはない。
【酢漬け】
■美味しさ
★★★☆☆■タピオカっぽさ
☆☆☆☆☆■カレーに合う度
★★★★☆
【7品目】塩漬け
砂糖同様、塩が水分を吸っている。
塩っ辛いが、アテがない時に塩をなめながらお酒を飲む人ならば十分合格ラインである。
塩を洗い流してから食べればよかった。
【塩漬け】
■美味しさ
★★☆☆☆■タピオカっぽさ
☆☆☆☆☆■日本酒飲みたさ
★★★☆☆
【8品目】しょうゆ漬け
今回の発起人……いや、発起オカであり、大本命のしょうゆ漬け。
見た目はちょっと粒あんっぽいが、問答無用で間違いなく美味しい。優勝。今すぐごはんに乗せて食べたい。
ただ、漬けすぎたのか、歯ごたえがぶよっとなってしまったのが残念だった。
【しょうゆ漬け】
■美味しさ
★★★★★■タピオカっぽさ
★★☆☆☆■ごはん食べたさ
★★★★★
【9品目】スパイス漬け
他を圧倒するスパイスの香り。
キン肉マンならカレクックの立ち位置である。インド代表のタピオカだ。
食べてみると、とにかく辛い。食感とか全然わからない。
カレー粉を食べているみたいだ。口の中でスパイスカレー専門店が開店した。
水では全然追いつかないのでピルクルを1リットル飲みたい。
【スパイス漬け】
■美味しさ
☆☆☆☆☆■タピオカっぽさ
★☆☆☆☆■罰ゲーム度
★★★★★
【10品目】浅漬け
ありそうなルックスだ。
このまま日替わり定食に付いていても違和感がない。
食感もかなりタピオカで、味もちゃんと浅漬けになっている。
カープからFAでジャイアンツに行った丸佳浩の走攻守くらいバランスのとれた出来じゃないか。
MVPも狙える美味しさである。
【浅漬け】
■美味しさ
★★★★★■タピオカっぽさ
★★★★☆
■ちゃんとお漬物度
★★★★☆
【11品目】ぬか漬け
おお、しっかり漬かっている!
ひそかにぬか漬けがいちばん美味しいんじゃないかと思っていたが、いい浸かりっぷりである。
タピオカというか、だいたいのものを漬け込んでくれるぬか床の仕事っぷりがすごい。
ご近所におすそわけしても恥ずかしくないレベルである。
なお、ぬか床には引き続ききゅうりやなすが漬けられ、わが家の食卓に一品を添えてくれた。
【ぬか漬け】
■美味しさ
★★★★☆■タピオカっぽさ
★★★☆☆■ぬか床すごい
★★★★★
まとめ
想像以上にタピオカのポテンシャルを発揮できたのではないだろうか。
「で、結局どれがおすすめなの?」と問われれば、胸を張って「うちの漬けタピオカは全部おすすめですよ」と答えよう。
…いや待て、そういえばひどいのがあったぞ。全部はおすすめできない。
アリかナシの2択でまとめてみた。
3分の2でいけるやん〜!!!
なお言い忘れていたが、当初すべてを一晩漬け込んで実食しようと思っていたところ、翌日に急な用事が入ってしまった。
さらにその翌日も多忙を極めており、最終的に3日間漬け込んだため総じて味が濃く、タピオカの食感もおおいに失われる結果となった。
もちろん美味しくいただけるものもあったが、漬け込み時間を少なくすることでタピオカのポテンシャルをもっと発揮できたんじゃないかと思うと遺憾である。
ということは、ちゃんと漬ければ、ほぼ美味しいってことじゃない?
ご覧の皆さまにおかれましては漬け込みすぎに注意して、よい漬けタピオカライフをお送りください。
私はまだ口の中がスパイスカレー専門店ですので、カルピスの原液を飲んで5万回歯みがきして寝ます。
おやすみなさい。
(執筆:高下龍司)